増谷栄一のアメリカ経済情勢ファイル
【お知らせ】「増谷栄一のアメリカ経済情勢ファイル」は6月30日で終了いたしました 。
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米6月住宅着工、2カ月連続で減少=2番底懸念広がる

新築住宅販売不振と高水準のフォークロージャーで

【2010年7月21日(水)】 - 6月の米住宅着工件数は、政府の住宅取得減税が4月末に終了したことを受けて、前月比5%減と、前月(5月)の同15%減に続いて2カ月連続の減少となった。また、5月の減少幅も前回発表時の同10%減から同15%減へと、大幅に下方改定されており、住宅着工は第2四半期(4-6月)に急ブレーキがかかった。

 住宅取得減税については、景気対策の観点から3カ月間延長する法案が6月29日に下院、翌30日には上院でも可決して成立したが、今度の延長法案ではすでに購入契約を結んでいる世帯だけが対象になっているため、今後の住宅着工への影響はほとんどないと見られている。

 これまでの住宅取得減税は4月末までに購入契約し、6月末までに購入した物件の引き渡しが完了しなければならなかったが、今度の延長法案ではすでに9月末までに引き渡しが完了すれば良いことになった。

■住宅市場、2番底の恐れ

 また、着工件数と同時に発表された住宅建築の先行指標である建築許可件数は前月比2.1%増と、3月以来3カ月ぶりに増加したものの、その伸びは緩やかなものにとどまっている。

 政府の住宅減税の延長効果が期待できないことや、引き続き、フォークロージャー(住宅不動産の差し押さえ=競売)物件やショートセールズ(フォークロージャー手続きに進む前の早い段階で債務者と債権者が協議して住宅を任意売却)物件が高水準にあるためだ。

 エコノミストは、住宅ローン金利は依然、過去最低水準にあるものの、雇用市場の改善が早期に進まなければ、住宅市場は2番底に陥る可能性があると悲観的な見方は少なくない。

■一戸建て、0.7%減=13カ月ぶり低水準に

 前日(20日)、商務省が発表した6月の住宅着工件数(季節調整値)は、前月比5.0%減の年率換算54万9000戸と、市場予想のコンセンサス57万5000戸を下回り、昨年10月以来8カ月ぶりの低水準となった。

 着工件数が急減したのは、住宅減税の効果が見られた昨年12月から今年4月までの着工件数が14.4%も急増した反動ともいえる。

 過去3カ月(4‐6月)の長期トレンドで見ると、月平均は60万2000戸となり、5月までの3カ月間の同63万戸を4.4%も下回り、回復ペースにブレーキがかかっている。

 また、5月の着工件数も前回発表時の前月比10.0%減の59万3000戸から、同14.9%減の57万8000戸へと、約5%ポイントも下方改定されている。

 内訳は、主力の一戸建ての着工件数が同0.7%減(前年比4.6%減)の45万4000戸と、13カ月ぶりの低水準になり、全体の着工件数を押し下げた。これは2カ月連続の減少だ。

 また、毎月の変動が激しい2世帯以上の集合住宅も同21.5%減の9万5000戸、また、5世帯以上でも同19.3%減(前年比8.3%減)の8万8000戸となっている。地域的には、全国的に減少し、北東部の同11%減をトップに、中西部の同7%減、西部の同6%減、南部の同2.4%減と、軒並み減少している。

■着工件数、ピーク時を76%下回る=新築販売の急落で

 6月の着工件数は、前年比でも5.8%減と、前年を下回った。ただ、2009年4月の底からは約15%回復している。しかし、2006年1月のピーク時に比べると、まだ、約76%も下回っており、人口増加に追いつくために必要な長期的な着工件数の水準と比べても約30%以上も下回っていることには変わりはない。

 住宅建築業界は売れ残り住宅在庫を減らすため、着工を抑制しているのが実態だ。商務省が先月23日発表した5月の新築住宅販売統計では、在庫は前月比0.5%減の21万3000戸と、1971年以来39年ぶりの低水準にまで減少し、前年比では27%減になっている。

 しかし、それ以上に住宅販売の不振が深刻で、着工意欲を削いでいるのが実態だ。5月の新築住宅の販売件数は、住宅取得減税の終了で、前月比33%減の年率換算30万戸と、1963年の統計開始以来の過去最低となり、市場予想の同20%減の40万5000戸も大幅に下回った。

 この結果、5月の販売ペースで計算した在庫水準は、前月(4月)の5.8カ月分相当から、一気に8.5カ月相当にまで大幅上昇している。販売不振で在庫水準は依然高いままという悪循環が続いており、着工は抑制せざるを得ない状況にある。

 実際、それを裏付けるように、今回の6月の着工統計でも、建設中の住宅件数は前月比5.5%減(前年比28.2%減)の45万戸と、5月(同2.3%減)に続いて49カ月連続で減少。1970年の同統計開始以来、過去最低の水準が続いている。

■6月の建築許可件数、2.1%増=アパート、堅調で

 一方、6月の建築許可件数(季節調整値)は、前月比2.1%増の年率換算58万6000戸と、市場予想の57万2000戸をやや上回り、3月(同5.4%増の68万5000戸)以来3カ月ぶりに増加した。

 しかし、主力の一戸建ての建築許可件数は、同3.4%減の42万1000戸と、3カ月連続で減少し、昨年4月以来14カ月ぶりの低水準となっている。建築許可件数が増えたのは、2-4世帯のアパートが同11.1%増の2000戸、5世帯以上のアパートも同20.8%増の14万5000戸と、いずれも3カ月連続の増加となったためだ。

 また、過去3カ月の長期トレンドで見ると、6月までの許可件数の月平均は59万戸で、5月までの3カ月間の同62万3000戸を5.3%も下回り、急ブレーキがかかっている。一般に建築許可件数の動向が実際の住宅着工の数字に反映されるのは3カ月後といわれる。

 新築住宅だけでなく、中古住宅市場も供給過剰感(5月の売れ残り住宅在庫は8.3カ月分と依然高水準)が続いており、失業率も高水準(現在、9.5%)であることを考えると、今後、住宅着工が抑制されることを示しているといえる。

■7月業況判断指数、14に急低下=15か月ぶり低水準

 また、この着工統計の前日(19日)に発表された、住宅業界の業況判断を示す7月初旬のNAHB(全米住宅建設業者協会)住宅建設業者指数も悪化が続いている。この背景には、住宅取得減税の4月末での終了と雇用市場の低迷がある。

 同指数は前月(6月)の16から14へと、昨年4月以来15カ月ぶりの低水準となった。市場予想の16も下回った。

 水準的には2009年1月の過去最低の8からは改善傾向にあるものの、依然、好不況の分かれ目となる50を51カ月連続で下回り続けている。同指数は50を下回ると、大半が業況の悪化を感じていることを示すが、同指数のピークは2005年6月の72。

 NAHBのボブ・ジョーンズ会長は、景気と雇用市場の先行き不透明感で、消費者は住宅の買い控えの傾向がある、と指摘している。

 また、エコノミストは住宅ローンの借り入れが困難になってきていることや、中古市場にフォークロージャー物件やショートセールズ物件で新築が押されていることなどが住宅建設業界のマインドを悪化させていると見ている。

 サブ指数のうち、向こう半年先の販売見通しを示す期待指数は前月の22から21へ、また、足元の業況感を示す現況指数も前月の17から15へ、住宅訪問者指数も前月の13から10へ、といずれも低下している。

■6月フォークロージャー件数、16カ月連続で30万戸超え

 また、住宅着工を抑制する最大のリスク要因はフォークロージャー件数(デフォルト通知や競売通知、銀行差し押さえ件数の合計)の拡大だ。

 米不動産調査会社リアルティトラックが15日発表した6月のフォークロージャー件数は31万4000戸と、前月比2.8%減、また、前年比7%減となったものの、16カ月連続で30万戸の大台を超えている。

 また、1-6月期で見ると、フォークロージャー件数は165万戸で、前年水準を8.3%も上回っている。これは、78戸につき1戸の割合でフォークロージャーが発生していることを意味し、依然、高水準が続いている。

 同社のジェームズ・サカシオCEO(最高経営責任者)は、「このペースだと、今年末までにデフォルト通知のフォークロージャー件数は300万戸を超え、銀行差し押さえ件数も100万戸を突破する」と指摘しているほどだ。

 ただ、第2四半期(4-6月)は89万5500戸と、第1四半期(1-3月)に比べ4%減少しており、伸びが鈍化している。これは銀行などが住宅ローンの貸し出しに慎重になっているためだが、その一方で、銀行は差し押さえ物件の処理を急いでいる。

■フォークロージャー物件、今後も約200万戸が市場に

 今年3月下旬に、オバマ政権は住宅市場の低迷脱却を目指して、2年前に導入されたフォークロージャー対策を一段と強化した総額140億ドル(1兆2200億円)のテコ入れ策を明らかにしているが、それでも焼け石に水の状況だ。

 これは「Home Affordable Modification Program」(HAMP)と呼ばれる借り換え支援制度で、ネガティブ・エクイティ(住宅の市場価格が購入時の簿価を下回りマイナスの純資産額になっている状況)で、フォークロージャー予備軍となっている300万-400万世帯の救済を目指し、住宅ローン(一戸建て当たり72万9750ドルまでが対象)の元本を減額した上で、FHA(連邦住宅管理公団)が借り換えローンの債務保証を行っている。

 財務省は20日、同制度を利用した130万世帯のうち、全体の40%超が住宅を手放さないで済むための恒久的な返済額の減額に至ったことを明らかにした。しかし、エコノミストは、今後1年から1年半にかけて、約200万戸がフォークロージャー物件か、あるいは、ショートセールズ物件として、市場に出てくる、と先行きには悲観的だ。(了)

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02月04日更新

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増谷栄一(ますたに・えいいち)

増谷栄一(ますたに・えいいち)

経済ジャーナリスト。北海道生まれ。早稲田政経学部卒。
1988年ジャパンタイムズ入社、編集局記者として世界100カ国の特集記事を制作。
1992年日経国際ニュースセンター編集室総合編集部次長を経て、1996年~2000年まで
米国経済通信社ブリッジ・ニュース東京特派員として日米の政治、経済、マーケットを取材。
1998年から2年間、ニューヨーク、ワシントン支局でアメリカのマーケット、重要経済統計、米政府、
財務省、米議会などをシニア・エディターとして取材。G7財務相・中央銀行総裁会議を3度取材。
その後、米国通信社ダウ・ジョーンズ通信社のコピー・エディターを経て、2001年1月から2004年9月まで
AFX通信社(AFP通信の経済ニュース部門)東京特派員。
2004年4月から2007年3月末までライブドア・ニュース外報部チーフ。
2007年11月まで英米金融情報サービス、トムソン・ファイナンシャルの起債担当記者。
2009年2月から経済ニュースサイト「NNAヨーロッパ」の編集長としてロンドンに駐在中。

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