増谷栄一のアメリカ経済情勢ファイル
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米5月中古住宅販売、3カ月ぶり減少=減税効果期待外れ

―銀行ローン審査遅れが影響=差押物件処理に追われ―

【2010年6月23日(水)】 NAR(全米不動産業協会)が22日発表した5月の米中古住宅販売件数は、住宅取得減税の効果がまだ持続すると期待されたが、前月比2.2%減の年率換算566万戸と、市場予想の前月比5.7%増の610万戸を大幅に下回った。

 中古住宅の販売件数(一戸建てや分譲住宅、集合住宅など、季節調整値)は3月の536万戸(前月比7%増)、4月の579万戸(同8%増)と、2カ月連続して増加したあと、3カ月ぶりに減少に転じたことになる。

 住宅取得減税は4月末までに購入契約し、6月末までに購入した物件の引き渡しが完了すれば減税が適用されるため、5月と6月の販売件数を下支えすると見られていた。これは同統計が物件の引き渡し完了時点で集計しているからだが、その思惑がやや外れた格好だ。

 しかし、NARや他のエコノミストは、5月の販売件数は水準的には過去半年間の平均値539万戸を上回っており、依然、高い水準を維持していると見ている。NARは高水準にとどまっている要因として、住宅減税の効果や住宅ローンの金利水準がかなり低いこと、住宅価格の下落が止まっていることなどを挙げている。

 住宅ローン金利はフレディマック(米連邦住宅貸付抵当公社)によると、30年固定金利で5月は4.89%と、4月の5.10%から低下しており、また、1年前の4.86%とほぼ変わらず、依然、過去最低に近い低水準が続いている。

 また、4月の販売件数も、前回発表時の同7.6%増の577万戸から、今回は同8.0%増の579万戸に上方改定されたのも明るい材料だ。

■住宅減税利用は46%に低下=4月は49%

 5月の統計結果について、NARのエコノミスト、ローレンス・ヤン氏は、住宅減税の効果は依然持続しており、6月の結果にもその効果が現れる、と見ている。しかし、6月の見通しについては契約書に捺印した時点での販売件数を示す中古住宅販売保留件数がかなり減少することが予想されるなど懸念材料が少なくない、と指摘する。

 NARによると、住宅減税は4月末の購入契約期限を満たしても6月末までに物件の引き渡しが完了しない住宅購入者数は最大で18万人に達すると推定している。これは、住宅減税の適用資格者の3分の1に相当するという。

 これは、金融機関がショートセールズ(フォークロージャー手続きに進む前の早い段階で債務者と債権者が協議して住宅を任意売却)に追われ、申請を受けた住宅ローンの処理が遅れているのが最大の理由だ。

 また、ヤン氏は、特に、ルイジアナ州とフロリダ州は、英石油大手BPが米メキシコ湾で大量の原油流出事故を引き起こした影響を受けている上に、相当数の住宅がNational Flood Insurance Programの洪水保険の適用を申請する見通しで、中古住宅の販売ペースが鈍るだろうと指摘している。

 しかし、住宅減税(住宅取得控除制度)が再々延長される可能性が強まってきているのは業界にとっては明るい材料だ。

 上院銀行住宅都市委員会のクリストファー・ドッド委員長(民主党、コネチカット州)とハリー・リード上院院内総務(民主党、ネバダ州)、ジョニー・アイザックソン上院議員(共和党、ジョージア州)は11日、税法改正により、住宅減税を9月末まで3カ月間延長する措置を導入する方針を明らかにし、先週、上院で延長案が可決された。ただ、まだ下院で議論が続いており、議会成立までにはまだ時間がかかりそうな情勢だ。

 住宅取得控除制度は新規取得者という限定条件も外され、居住年数が5年以上であれば、新しい住宅に買い換えると、最大8000ドル(約73万円)の取得控除が認められる。NARによると、5月の新規住宅取得者は販売戸数全体の46%を占め、4月の49%から低下している。

■銀行差押件数、1%増の9万3777戸=過去最高を記録

 また、ヤン氏は住宅市場の下期の見通しについては、現在は住宅価格の動向は落ち着いているが、 "もう一つの住宅在庫"といわれるフォークロージャー(住宅不動産の差し押さえ=競売)物件の中古市場への流入と雇用市場の改善が価格の安定と販売の先行きのカギを握るという。

 米不動産調査会社リアルティトラックが10日発表した、5月のフォークロージャー件数(デフォルト通知や競売通知、銀行差し押さえ件数の合計)は前月比3%減(前年比1%増)の32万2920戸となった。

 内訳は、デフォルト通知件数が同7%減(同22%減)となった一方で、銀行差し押さえ件数は同1%増(同44%増)の9万3777戸と、過去最高を記録し、2カ月連続の増加となっている。

 この結果について、同社のジェームズ・サカシオCEO(最高経営責任者)は、フォークロージャー件数の増加は天井を打ったとの見方は4月以降変わっていないとしているが、銀行は過去20カ月間に累積した差し押さえ物件の処理に追われおり、今後はしばらく高水準のままで推移すると慎重な見方だ。

 同氏によると、実際、デフォルト通知や競売通知件数は、2008年は前年比28%増、2009年も同32%増と大幅に増加したため、最近はフォークロージャー件数の増加ペースが鈍化しているものの、銀行は対応に追われ四苦八苦の状況にある。

■住宅在庫、8.3カ月分に低下でも依然高水準

 住宅価格の先行きに大きな影響を与える、中古住宅市場の供給過剰感を示す売れ残り住宅在庫は、前月比3.4%減の389万戸となった。また、5月の販売ペースで換算した在庫水準も8.3カ月分となり、4月の8.4カ月分を下回ったものの、ヤン氏は、依然、在庫水準は高いと見ており、懸念材料には変わりはない。

 昨年11月の6.5か月分を除けば、依然として、過去25年間の平均値である7.1カ月分を大幅に上回っており、また、適正水準とされる6-7カ月分(住宅ブームのピークだった2005年は4.5カ月分)も上回っている。

 ヤン氏は、在庫水準は10カ月分を超えれば、かなりの住宅価格の下落圧力になると指摘しており、その意味では、今回の在庫水準はやや低下したものの、住宅価格が急激に下落することはないと見ている。

■住宅価格、3カ月連続で上昇

 一方、販売の内訳は、主力の一戸建てが前月比1.6%減(4月は同7.7%増)の年率換算498万戸と、3カ月ぶりの減少となり、前年比も17.5%増となっている。

 分譲住宅と集合住宅の合計も、前月比6.8%減(4月は10.6%増)の68万戸となり、4カ月ぶりに減少。前年比は32.6%増となっている。

 また、中古住宅の販売価格の中央値(季節調整前)は前年比2.75%上昇の17万9600ドルと、4月の同3.48%上昇に続いて3カ月連続の上昇となった。これは低価格のフォークロージャー物件の販売比率が31%と、4月の33%から低下したため。5月は2009年平均の17万2500ドルを依然上回っているが、2008年の19万8100ドルは下回っている。

 このうち、一戸建て住宅の中央値は前年比2.7%上昇の17万9400ドル。分譲住宅は同3.4%上昇の18万1300ドルだった。(了)

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02月04日更新

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増谷栄一(ますたに・えいいち)

増谷栄一(ますたに・えいいち)

経済ジャーナリスト。北海道生まれ。早稲田政経学部卒。
1988年ジャパンタイムズ入社、編集局記者として世界100カ国の特集記事を制作。
1992年日経国際ニュースセンター編集室総合編集部次長を経て、1996年~2000年まで
米国経済通信社ブリッジ・ニュース東京特派員として日米の政治、経済、マーケットを取材。
1998年から2年間、ニューヨーク、ワシントン支局でアメリカのマーケット、重要経済統計、米政府、
財務省、米議会などをシニア・エディターとして取材。G7財務相・中央銀行総裁会議を3度取材。
その後、米国通信社ダウ・ジョーンズ通信社のコピー・エディターを経て、2001年1月から2004年9月まで
AFX通信社(AFP通信の経済ニュース部門)東京特派員。
2004年4月から2007年3月末までライブドア・ニュース外報部チーフ。
2007年11月まで英米金融情報サービス、トムソン・ファイナンシャルの起債担当記者。
2009年2月から経済ニュースサイト「NNAヨーロッパ」の編集長としてロンドンに駐在中。

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