増谷栄一のアメリカ経済情勢ファイル
【お知らせ】「増谷栄一のアメリカ経済情勢ファイル」は6月30日で終了いたしました 。
いつも「増谷栄一のアメリカ経済情勢ファイル」をご愛読いただきまして誠にありがとうございます。当ブログは2007年5月より連載してまいりましたが、2011年6月30日(木)をもって終了いたしました。4年間にわたる皆様のご愛顧に感謝し、御礼申し上げます。

米4月住宅着工、大幅増=建築許可は急減で不安残す

【2010年5月19日(水)】 - 4月の米住宅着工件数が2カ月連続の増加となり、新築住宅市場も安定化の兆しが見えてきた。しかし、同時に発表された住宅建築の先行指標である建築許可件数が大幅に減少、政府の住宅取得減税がなくなる5月以降も堅調さが続くかは微妙な情勢だ。

 前日(18日)、米商務省が発表した4月の住宅着工件数(季節調整値)は、前月比5.8%増(前年比40.9%増)の年率換算67万2000戸と、市場予想のコンセンサス65万5000戸を上回り、2008年10月以来1年6カ月ぶりの高水準となった。

 また、前月(3月)の着工件数も前回発表時の前月比1.6%増の62万6000戸から、同5.0%増の63万5000戸へと、約1.4%上方改定された。この結果、過去4カ月のトレンドで見ると、4月までの月平均は63万1000戸となり、3月までの4カ月間の同60万7000戸を4%上回り、回復傾向を示している。

 着工件数が大幅に増加したのは、3月とは反対に主力の一戸建ての着工件数が前月比10.2%増(前年比53.6%増)の59万3000戸と、2008年8月以来1年8カ月ぶりの大幅増加となったためだ。これは1月以来4カ月連続の増加だ。

 その一方で、5世帯以上の集合住宅は同23.6%減(前年比15%減)の6万8000戸と、3月の同43.5%増から減少に転じた。これは昨年9月の7万戸以来7カ月ぶりの低水準となっている。

 また、地域的には西部だけが前月比13.3%減と、減少を示したが、それ以外の地域では軒並み増加しており、3月に比べ住宅市場の回復に地域的な広がりが見られる。北東部は同23.9%増、中西部は同16.7%増、南部は同7%増だった。

■着工件数、ピーク時を依然70%下回る

 前年比では、4月の着工件数は40.9%増となったが、2006年1月のピーク時からはまだ約70%も下回っている。また、人口増加に追いつくために必要な長期的な着工件数の水準を約30%下回っていることには変わりはない。

 これは、住宅業界は、売れ残り住宅在庫が高水準のため、住宅着工を抑制しているためだ。4月の着工統計でも、建設中の住宅件数は前月比2%減(前年比29.1%減)の48万2000戸と、1970年の同統計開始以来、過去最低の水準にまで落ち込んでいる。

 ただ、明るい兆しも見え始めている。昨年11月から2月まで4カ月連続して減少していた新築住宅販売もようやく歯止めがかかった。米商務省が4月23日発表した3月の新築住宅販売件数は前月比26.9%増の年率換算41万1000戸となり、1963年4月以来47年ぶりの大幅上昇となっている

 この結果、新築住宅の売れ残り住宅在庫(着工前や建築中の住宅も含む)は、前月比2.1%減の22万8000戸と、2月の同0.4%増から減少(改善)に転じた。前年比では27.2%減と依然、前年水準を下回っている。

 3月の販売ペースで計算した在庫水準も6.7カ月分相当と、前月の8.6カ月分相当から大幅に低下。最悪だった昨年1月の12.4カ月分(34万戸)のほぼ半分で、住宅建築業界が容認可能な水準6カ月分相当以下に近づきつつある。

■4月の建築許可件数、11.5%減=6カ月ぶり低水準

 今回の着工統計では、一戸建ての住宅着工件数が大幅に増加したが、建築業界でも、新規住宅取得者に対する税額控除が4月末で期限切れとなることから、新築住宅の駆け込み需要が起こると期待していた。

 IRS(米内国歳入庁)によると、住宅取得減税はこれまでに220万世帯が利用、減税額も160億ドル(約1兆4700億円)に達している。

 しかし、今回の着工件数と同時に発表された、建築業界の先行きのマインドを示す4月の建築許可件数(季節調整値)は、前月比11.5%減の年率換算60万6000戸と、市場予想の68万戸を大幅に下回り、2009年10月以来6カ月ぶりの低水準となった。3月の同5.4%増の68万5000戸から一転して減少した。

 特に、主力の一戸建ての建築許可件数は前月比10.7%減の48万4000戸と、3カ月ぶりに減少に転じた。また、アパートの建築許可件数も、2-4世帯が同13.6%減の1万9000戸、5世帯以上も同14.9%減の10万3000戸と、いずれも減少している。

 この結果について、エコノミストは今後、住宅建築は抑制されることを示していると見ている。政府の住宅取得控除は4月末までに購入契約し、住宅の受け渡しが6月末までに完了することが適用条件となっている。このため、建築業者は着工を増やすことに慎重になっていると見られている。

■5月業況判断指数、22に上昇

 また、この着工統計の前日(17日)に発表された、住宅業界の業況判断を示す5月初旬のNAHB(全米住宅建設業者協会)住宅建設業者指数は、前月(4月)の19から22へと、2007年8月以来2年9カ月ぶりの高水準にまで上昇した。

 ただ、水準的には2009年1月の過去最低の8からは改善傾向にあるものの、依然、好不況の分かれ目となる50を49カ月連続で下回り続けている。同指数は50を下回ると、大半が業況の悪化を感じていることを示すが、同指数のピークは2005年6月の72で、2008年4月以降、20を割っている状況だ。

 NAHBの主任エコノミストデービッド・クロウ氏は、住宅取得減税が4月末に期限が来るものの、今後半年先の見通しを示す期待指数も上昇しており、売れ残り住宅在庫も低水準になって住宅市場が回復し始めていることから安心感が広がってきていると指摘する。

 また、NAHBのボブ・ジョーンズ会長は、こうした背景について、業界では住宅取得減税が4月以降も延長されるという期待感もあるという。

 サブ指数のうち、向こう半年先の販売見通しを示す期待指数は前月の25から28に上昇、6カ月ぶりの高水準となった。足元の業況感を示す現況指数も前月の20から23に上昇、2007年7月以来2年10カ月ぶりの高水準となり、住宅訪問者指数も前月の14から16に上昇した。

■フォークロージャー件数、頭打ちか=高水準は今後も続く

 また、住宅着工を抑制するリスク要因となるのがフォークロージャー件数(デフォルト通知や競売通知、銀行差し押さえ件数の合計)の動向だ。

 しかし、米不動産調査会社リアルティトラックが13日発表した、4月のフォークロージャー件数は前月比9%減(前年比2%減)の33万3837戸となった。前年比で減少したのは2005年以来5年ぶり。これは、387戸につき1戸の割合でフォークロージャーが発生していることを意味する。

 内訳は、デフォルト通知件数が同12%減(同27%減)、銀行差し押さえ件数は同1%増(同24%増)だ。この結果について、同社のジェームズ・サカシオCEO(最高経営責任者)は、フォークロージャー件数の増加は天井を打ったと分析しているが、今後はしばらく高水準のままで推移すると慎重な見方だ。

 格安のフォークロージャー物件の増加は、住宅市場の供給過剰を引き起こし、売れ残り住宅在庫が増加、在庫を減らすため、住宅着工を抑制する。

 このため、オバマ政権は3月下旬、住宅市場の低迷脱却を目指して2年前に導入したフォークロージャー対策を一段と強化するため、総額140億ドル(約兆3000億円)のテコ入れ策を明らかにしている

 これはフォークロージャー拡大に歯止めをかけるため、失業中の世帯主の借入金の元本を減額する対策。毎月支払っている住宅ローン(2009年1月1日以降分で72万9750ドル以下のローン)の第2順位抵当も含む合計返済額が収入(失業保険給付額)の31%を超えている場合、3-6カ月間の期限で、約31%以下に元本を引き下げようというものだ。

 政府は1000万世帯の救済は無理だが、300万-400万世帯の救済が達成できれば、住宅市場の回復には十分な効果があるとしている。(了)

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02月04日更新

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増谷栄一(ますたに・えいいち)

増谷栄一(ますたに・えいいち)

経済ジャーナリスト。北海道生まれ。早稲田政経学部卒。
1988年ジャパンタイムズ入社、編集局記者として世界100カ国の特集記事を制作。
1992年日経国際ニュースセンター編集室総合編集部次長を経て、1996年~2000年まで
米国経済通信社ブリッジ・ニュース東京特派員として日米の政治、経済、マーケットを取材。
1998年から2年間、ニューヨーク、ワシントン支局でアメリカのマーケット、重要経済統計、米政府、
財務省、米議会などをシニア・エディターとして取材。G7財務相・中央銀行総裁会議を3度取材。
その後、米国通信社ダウ・ジョーンズ通信社のコピー・エディターを経て、2001年1月から2004年9月まで
AFX通信社(AFP通信の経済ニュース部門)東京特派員。
2004年4月から2007年3月末までライブドア・ニュース外報部チーフ。
2007年11月まで英米金融情報サービス、トムソン・ファイナンシャルの起債担当記者。
2009年2月から経済ニュースサイト「NNAヨーロッパ」の編集長としてロンドンに駐在中。

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