増谷栄一のアメリカ経済情勢ファイル
【お知らせ】「増谷栄一のアメリカ経済情勢ファイル」は6月30日で終了いたしました 。
いつも「増谷栄一のアメリカ経済情勢ファイル」をご愛読いただきまして誠にありがとうございます。当ブログは2007年5月より連載してまいりましたが、2011年6月30日(木)をもって終了いたしました。4年間にわたる皆様のご愛顧に感謝し、御礼申し上げます。

米4月雇用者数、4年ぶり大幅増=景気回復の持続示す

-11月利上げ観測、やや強まる-

【2010年5月8日(土)】 - 前日(7日)発表された4月の新規雇用者数は前月に続いて2カ月連続の大幅増となった。しかし、その半面、半年以上の長期失業者数が過去最高を更新しており、エコノミストは雇用の先行き見通しには依然慎重な見方を崩していない。

 米労働省が発表した4月の新規雇用者数(非農業部門で軍人除く、季節調整済み)は、前月比29万人の純増と、2006年3月以来4年ぶりの大幅増となった。1月の同1万4000人増以来4カ月連続の増加となる。また、増加幅としては3月の同23万人増に続いて2カ月連続で20万人を上回る大幅増だ。

 大幅増となったのは、3月と同様、国勢調査が実施され、政府部門で一時的に新規雇用が増加したためだ。実際、国勢調査関連の雇用者数6万6000人を除いた新規雇用者数は同22万4000人増にとどまる。

■失業率は9.9%に上昇=就職意欲高まる中

 半面、失業率は前月の9.7%から9.9%に上昇した。失業率の計算で分母にあたる労働力人口が前月比80万5000人(0.5%)増と、過去最高の増加となったものの、失業者数も1526万人と、前月比25万5000人(1.7%)増となり、失業者数の増加ペースが上回ったためだ。

 ただ、失業率が上昇したとはいえ、労働力人口比率が全体の65.2%と、前月の64.9%から0.3%ポイント上昇した。これは、これまで景気低迷で就職探しをあきらめていた労働者が雇用市場に戻ってきており、景気回復がしっかりしてきたことを示すものといえる。

 しかし、エコノミストは現実問題として、何とか就職できたとしてもリセッション(景気失速)以前の高い給与水準までに戻るのは難しいため、個人消費が急激に回復することは期待できないと見ている。

■株価は下落=強い雇用統計結果でも

 ニューヨーク株式市場では、4月の新規雇用者数が市場予想の前月比18万7000人増を大幅に上回ったことから、企業は雇用を増やしてきているとし、景気回復が持続安定してきたとの見方が強まった。

 しかし、7日の株式市場は、ギリシャ危機が欧州全体のデフォルト(債務不履行)に発展するという懸念で急落した前日から値を戻し、一時、ダウ工業株30種平均もプラス圏に回復したものの、結局、雇用統計の強い結果にはあまり反応せず、前日比139.89ドル(1.3%)安の1万0380.43ドルで引けた。

 一方、金利の先行きを占う、米国の銀行間で取引される無担保コール翌日物金利に相当するFF(フェデラル・ファンド)レートの金利先物市場では、FRB(米連邦準備制度理事会)による早期利上げ観測が急速に強まった。

 CBOT(シカゴ商品取引所)のFF金利先物11月物は売られ、価格と反対方向に動く金利は上昇した。11月2-3日に開かれるFOMC会合で、政策金利であるFF(フェデラル・ファンド)金利の誘導目標が0.5%に引き上げられる確率は前日の34%から42%まで織り込まれた格好だ。

 しかし、それとは対照的に、米CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)のユーロドル金利先物は、2010年6月に期日が到来する期近物が買われ、価格と反対方向に動く金利は低下した。

 これは、ギリシャに対する金融支援でも他の欧州諸国への危機拡大を防げないという否定的な見方が依然強く、FRB(米連邦準備制度理事会)も欧州危機が去るまでは金利を据え置くという観測、さらには、ECB(欧州中央銀行)も近く、域内の銀行救済に向けた融資制度を新設するとの観測が広がったことが背景にある。

■2-3月の雇用者数、12万1000人も上方改定

 4月の雇用統計も前月同様、良い面と悪い面の両方が見られた。このため、エコノミストは、今後も雇用の大幅改善が持続するかどうかについては慎重な見方だ。

 良い面は、4月の新規雇用者数が4カ月連続で増加したことだ。家計統計ベースで見ると、同月の雇用者数は前月比で55万人増の1億3950万人、また、労働力人口も80万5000人増と、着実に増加傾向を示している。

 もう一つの良い面は、前回発表時、2月の新規雇用者数は同1万4000人減だったが、今回の発表では同3万9000人増へと、実に5万3000人も上方改定されたことだ。2月は2度にわたり寒波が米東部を中心に襲ったが、それでも強い結果だったことが分かる。

 3月も前回発表時の同16万2000人増から今回は同23万人増と、6万8000人も上方改定され、2月と3月の2カ月で、計12万1000人も上方改定されている。

 昨年の新規雇用者数は1月の前月比77万9000人減をピークに、3月まで70万人台の大幅減少が続いたが、4月以降は急速に減少幅が縮小した。8-10月は月21万‐22万人台にまで縮小、11月には6万4000人増の回復となり、12月は再び10万9000人減と減少したが、その後は増加に転じている。人材派遣大手アデコでは、今年年央には月20万‐30万人規模の増加となると見ている。

 ちなみに、人口の自然増を吸収して失業率の上昇を食い止めるために必要な新規雇用者数の月平均の増加数は12万5000人で、3月と4月はこのレベルを超えた。しかし、今後、失業率を低下させるためには月平均で20万-30万人の雇用者数の増加が必要だ。

 ただ、一部では、3月と4月が強い伸びとなったことから、今後の新規雇用者数は月20万-25万人増のトレンドが始まる可能性があるとの見方がある。しかし、失業率が2013年末までに6%の水準に戻るには月平均40万人増が必要なため、雇用が本格回復するには、まだ先は長いというのが実態だ。

■長期失業者数、672万人に急増=依然過去最悪

 他方、悪い面は、今回の雇用統計で注目された半年(27週間)以上就職できない長期失業者数が671万6000人と、3月の654万7000人から、16万9000人増加し、依然過去最悪となっていることだ。失業者全体(1526万人)の10人中5人近く(45.9%)と、依然高水準にある。

 失業率は1月に昨年12月の10.0%から9.7%と、昨年8月以来5カ月ぶりの低水準となったあと、3月まで9.7%が続いた。今回は9.9%に上昇したが、市場ではまだ失業率は天井を打ったとは見ていない。最近の経営者調査でも、失業率は年末まで9%台が続くと見ている。

 4月の労働力人口は80万5000人増加したが、そのうち、就職できたのは55万人で、25万5000人が就職できなかった。これは今後、就職に意欲を見せて労働力人口が増えると見られるものの、就職できない人数も増えるため、失業率は上昇していく可能性がある。

 また、狭義の失業者数に仕事を探すことをあきらめた労働者数とパート労働に変わった労働者数を加えた広義の失業率は3月の16.9%から17.1%に上昇した。昨年12月の17.3%を下回っているものの、1月の16.5%から2月は16.8%に上昇、3月はさらに16.9%と悪化が続いている。

 また、やむを得ずパート労働者になった数は3月の905万人から915万人に増え、昨年12月の920万人から1月は830万人に減少していたが、2月に880万人に増加、これで3カ月連続の増加となり、正規雇用が困難な状況が続いている。

 2007年12月のリセッション入り以来、雇用者数は約820万人も減少していることには変わりはなく、この820万人の失業者数を元に戻すためには4年以上かかるといわれている。

■製造業、4万4000人増=うち自動車は4400人増に

 4月の雇用統計の内訳を見ると、建設業が2カ月連続の増加となった一方で、製造業も引き続き増加。小売りも増加した。

 製造業は同4万4000人増となり、1月の前月比2万2000人増、2月の同1万6000人増、3月の1万9000人増に続いて、4カ月連続の改善で、この4カ月間で10万1000人も増加した計算だ。

 製造業は、昨年12月は1万8000人減だったが、2009年上期(1-6月)の月平均17万1000人減、同年下期の月平均4万1000人減から急速に回復してきている。

 このうち、自動車・自動車部品製造は3月の同3000人増に続いて、同4400人増と引き続き改善、自動車・自動車部品を含めた耐久財セクターも同3万人増と、全体的に好調となった。非耐久財も同1万4000人増と改善している。

 他方、建設業は住宅市場の回復ペースが鈍化する中で、建設業が前月比1万4000人増と、3月の2万6000人増に続いて2カ月連続の増加となった。4月までの過去1年間は月平均4万6000人減だったが、ここにきてようやく改善の兆しが見えている。

 建設業の主な増加要因は、土木エンジニアリングが同9200人増となったほか、非居住用建物も同9200人増となったことが大きい。居住用建物は同4000人減だった。

■小売業、改善続く=自動車販売も増加

 また、サービス産業は前月比16万6000人増と、4カ月連続の増加。このうち、小売業も同1万2000人増と、3月の同1万5000人増に続いて4カ月連続で増加した。小売りのうち、百貨店は同300人増、建材・園芸店も同1700人増、衣料品店も同8600人増と、増加している。

 小売業のうち、自動車・自動車部品販売は同3700人増(うち、自動車ディーラーは同1700人増)に改善が続いている。

 また、これまでサービス産業を下支えしてきている専門・ビジネスサービス業も3月の1万3000人増から同8万人増と、急増した。

 特に、このうち、将来の雇用の先行指標となる人材派遣業が同2万6000人増となり、3月の3万2000人増から引き続き増加しており、雇用市場の回復の可能性を示している。

 一方、金融サービス業(不動産販売も含む)は同300人の微増となった。このうち、クレジット仲介業は同400人減と、依然減少が続いている。

 また、雇用者数の増減を民間部門と政府部門に分けると、これまで民間部門の膨大な失業者数を抑制する効果を示してきた政府部門は同5万9000人増と、3月の同5万6000人増に引き続き増加している。

 連邦政府部門は2010年国勢調査の実施で前月比6万5000人増となったが、それ以外の州政府や地方自治体は合計で同6000人減となった。この結果、4月の民間部門だけの増加幅は同23万1000人となったことになる。

■労働賃金、ほぼ横ばい=消費を抑制

 週平均労働時間(1月から全従業員のデータが導入)は前月比0.3%(0.1時間)増の34.1時間となった一方で、1時間当たり平均賃金(全従業員のデータ)は、前月比0.05%(1セント)上昇の22.47ドルと、所得が伸びず消費の抑制要因となっている。(了)

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02月04日更新

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増谷栄一(ますたに・えいいち)

増谷栄一(ますたに・えいいち)

経済ジャーナリスト。北海道生まれ。早稲田政経学部卒。
1988年ジャパンタイムズ入社、編集局記者として世界100カ国の特集記事を制作。
1992年日経国際ニュースセンター編集室総合編集部次長を経て、1996年~2000年まで
米国経済通信社ブリッジ・ニュース東京特派員として日米の政治、経済、マーケットを取材。
1998年から2年間、ニューヨーク、ワシントン支局でアメリカのマーケット、重要経済統計、米政府、
財務省、米議会などをシニア・エディターとして取材。G7財務相・中央銀行総裁会議を3度取材。
その後、米国通信社ダウ・ジョーンズ通信社のコピー・エディターを経て、2001年1月から2004年9月まで
AFX通信社(AFP通信の経済ニュース部門)東京特派員。
2004年4月から2007年3月末までライブドア・ニュース外報部チーフ。
2007年11月まで英米金融情報サービス、トムソン・ファイナンシャルの起債担当記者。
2009年2月から経済ニュースサイト「NNAヨーロッパ」の編集長としてロンドンに駐在中。

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