増谷栄一のアメリカ経済情勢ファイル

米フレディマック、政府に1兆円の金融支援要請

【2010年5月6日(木)】 - 政府系住宅金融大手フレディマック(米連邦住宅貸付抵当公社)が5日、財務省に対し106億ドル(約1兆円)の金融支援を要請した。

 これは、同社が同日発表した今年第1四半期(1-3月)決算が79億8000万ドル(約7500億円)の純損失を計上したため、政府に金融支援を要請したものだ。第1四半期の最終赤字は、前期(昨年10-12月期)からやや拡大したが、前年同期の104億ドル(約9800億円)からは大幅に縮小している。

 フレディマックは、2008年のクレジット市場危機で財務内容が急激に悪化したため、ファニーメイ(米連邦住宅抵当金庫)とともに、同年9月7日に政府のコンサーベイターシップ(財産管理)下に置かれている。

 こうした金融支援の要請は四半期ごとに行われており、最近ではファニーメイが今年2月に発表した昨年第4四半期(10-12月)決算で、163億ドル(約1兆5000億円)の最終損失を計上したため、153億ドル(約1兆4000億円)の金融支援を財務省に要請している。

 当時、フレディマックも第4四半期決算で78億ドル(約7300億円)の最終損失となったものの、金融支援は要請していなかった。

 ファニーメイは7日に、今年第1四半期決算を発表するが、フレディマックと同様、財務省に金融支援を要請すると見られている。

 フレディマックとファニーメイの2社は、政府の管理下に入ってからこれまでに、それぞれ、507億ドル(約4兆8000億円)と762億ドル(約7兆2000億円)の税金投入を受けている。

■共和党、2社の分割民営化を主張

 オバマ政権は2社が住宅市場の回復に果たす役割を重視して、昨年12月24日にそれぞれに対する与信枠2000億ドル(2社計で4000億ドル)を2012年末までの3年間、無制限に拡大する措置を講じている。

 しかし、議会では2社の今後のあり方については、完全民営化を含め改革を進める動きがくすぶっているのが実態だ。共和党は1984年のAT&Tと7つのベビーベルズの誕生のように分割民営化するか、さもなければ完全に廃止するよう主張している。

 一方、オバマ政権は、住宅市場の回復が不透明な現状では、そうした解体や民営化は時期尚早と考えている。2社は住宅ローンを銀行などの金融機関から買い取り、MBS(不動産担保証券)として証券化することで住宅ローンの原資を供給しているほか、住宅ローンの元利金返済の保証も行っている。それだけに住宅市場の回復には不可欠な存在だからだ。

 しかし、財務省は2社に対する与信枠を無制限とした際に、2社の住宅ローン市場でのウエートを徐々に引き下げる方針も同時に打ち出している。2010年末までに2社のMBSなど住宅ローン資産ポートフォリオに、それぞれ8100億ドル(約76兆1000億円)の上限を設定。その後も毎年10%ずつ上限を引き下げるとしている。現在はそれぞれのポートフォリオは7000億ドル(約65兆8000億円)台後半となっている。

■2社、住宅市場回復に寄与

 実際、2社は住宅ローンのサブプライム融資(信用度の低い顧客への融資)の焦げ付きに端を発したクレジットクランチ(極端な金融逼迫)で、崩壊の恐れがあった住宅市場を下支えする上で大きな役割を果たしてきている。

 2社だけで全住宅ローン残高の約50%に相当する約5兆5000億ドル(約3100万件の住宅ローン)を保有するか、保証している。このため、2社に対する政府の支援がなくなれば2社は破たんし、数百万世帯は住宅ローンを借り入れることが困難になるほどだ。

 ちなみに、インサイド・モーゲージ・ファイナンスによると、2社にFHA(連邦住宅管理公団)と退役軍人局(VA)を加えた4者は、今年第1四半期の住宅ローンの約97%を支援している。

 フレディマックだけでも、同社は第1四半期中に、一戸建て住宅の約39万世帯分とアパート住宅の5万世帯分の住宅ローンの財源を供給し、また、一戸建ての住宅所有者に対し、680億ドル(約6兆4000億円)の借り換えローンを支援することで、7万1000世帯がフォークロージャー(住宅不動産の差し押さえ=競売)手続きに入るのを食い止めている。(了)

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増谷栄一(ますたに・えいいち)

増谷栄一(ますたに・えいいち)

経済ジャーナリスト。北海道生まれ。早稲田政経学部卒。
1988年ジャパンタイムズ入社、編集局記者として世界100カ国の特集記事を制作。
1992年日経国際ニュースセンター編集室総合編集部次長を経て、1996年~2000年まで
米国経済通信社ブリッジ・ニュース東京特派員として日米の政治、経済、マーケットを取材。
1998年から2年間、ニューヨーク、ワシントン支局でアメリカのマーケット、重要経済統計、米政府、
財務省、米議会などをシニア・エディターとして取材。G7財務相・中央銀行総裁会議を3度取材。
その後、米国通信社ダウ・ジョーンズ通信社のコピー・エディターを経て、2001年1月から2004年9月まで
AFX通信社(AFP通信の経済ニュース部門)東京特派員。
2004年4月から2007年3月末までライブドア・ニュース外報部チーフ。
2007年11月まで英米金融情報サービス、トムソン・ファイナンシャルの起債担当記者。
2009年2月から経済ニュースサイト「NNAヨーロッパ」の編集長としてロンドンに駐在中。

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