増谷栄一のアメリカ経済情勢ファイル

米3月新築住宅販売、27%増=47年ぶり大幅増

―全国的に増加=天候回復や駆け込み需要などで―

【2010年4月25日(日)】 米商務省が23日発表した3月の新築住宅販売件数は、前日(22日)発表された中古住宅販売件数と同様、大幅上昇となり、1963年の統計開始以来の最低水準まで落ち込んだ2月からようやく5カ月ぶりに増加に転じた。

 3月の新築住宅販売件数(季節調整値)は前月比26.9%増の年率換算41万1000戸となった。昨年11月から2月まで4カ月連続して減少していた新築住宅販売もようやく歯止めがかかった格好。伸び率も1963年4月以来47年ぶりの大幅上昇で、市場予想の33万戸も上回った。

 販売が急増したのは、中古住宅と同様、住宅減税(住宅取得控除制度)の期限切前の駆け込み需要と2月の寒波からの天候回復、住宅ローン金利の低下などが主な理由となっている。

 もともと、2月は2度にわたって大寒波が主に米東部を襲ったため、2月の新築住宅の販売に悪影響が及んだもので、3月はそうした天候悪化要因が剥落、その分、全国的に住宅販売にも勢いが戻っている。

 地域別では、北東部は前月比35.7%増(2月は32%減)、中西部は同4.3%増(同13%減)、南部も43.5%増(同4%減)に急回復。2月が好調だった西部も同5.7%増(が同17%増)と好調を維持した。

 ちなみに、2月のデータは前回発表時の30万8000戸から今回は32万4000戸に上方改定されたが、1963年の統計開始以来の最低水準には変わりはない。

■05年ピーク時に比べ依然70%減

 一般的に、新築住宅販売統計は統計エラーが多いので単月のデータだけでは信頼性が低い難点がある。そこで、長期トレンドを見る必要があるのだが、直近の過去5カ月(2009年11月-今年3月)の月平均販売件数は35万8000戸となっており、2月までの5カ月間の平均35万5000戸(改定前は34万6000戸)に比べて、わずかながら0.8%増加している。

 また、3月は前年との比較でも23.8%増となった。しかし、2005年のピーク時に比べると実に70%減と、本格回復には程遠い状況には変わりはない。

 3月の中古住宅販売件数は前月比6.8%増の年率換算535万戸と、4カ月ぶりの増加に転じたが、この中古と新築を合わせた同月の住宅販売件数は前月比8%増の576万1000戸と、急回復を見せている。しかし、これも直近の昨年11月のピーク時の年率換算685万戸に比べると、まだ109万1000戸(15.9%)下回っている。

■住宅減税切れの5月以降、反動減か

 新築住宅販売の先行きの見通しについては、エコノミストの多くは、少なくとも4月はまだ、住宅減税の適用が間に合うので、強い結果が出ると予想している。

 これは、住宅減税を受けるには、4月末までに住宅購入契約を結び、6月末までに住宅の引き渡しを受けることが条件になっているが、新築住宅販売統計では、契約書にサインした時点でカウントされるため、まだ、駆け込み需要の効果が及ぶからだ。

 しかし、5月にはその反動で急減する可能性がある。その場合、住宅販売が好調を維持するには、住宅減税を再々延長されるかどうか次第だという見方もある。

 この点については、市場では政府は住宅減税を再び延長する可能性が高いと見ている。その意味で、エコノミストは第2四半期(4-6月)が米国の住宅市場、さらには景気の先行きを見る上で、最大のヤマ場を迎えると見ている。

 その根拠となっているのは、米経済の回復で遅れが目立って最も懸念されているのが住宅産業だからだ。

 FRB(米連邦準備制度理事会)が今月6日に公表したFOMC(公開市場委員会)議事録(3月16日開催分)では、「住宅着工は低水準のままで横ばい状態が続いており、(住宅以外の)非居住用建築物に対する投資は依然減少している。また、国や地方の公共支出も財政収入の減少で圧迫されている」と指摘。

 特に、住宅市場については、「委員は、政府の住宅取得減税など支援策にもかかわらず、横ばいの状況が続いている」とした上で、「今後数四半期は、フォークロージャー件数(デフォルト通知や競売通知、銀行差し押さえ件数の合計)の割合も増加し、空き家物件の市場流入で住宅価格が一段と低下するリスクが高まることを懸念している」と述べている。

 その上で、議事録は、「家計の消費意欲も、弱い雇用状況で勢いが削がれ、企業も依然として新規雇用や新規プロジェクトに対する投資にも慎重になっている」と述べ、景気の先行きに対しては、利上げへの政策転換を正当化できるほど景気が過熱化する兆候を懸念するような見方にはなっていないとしている。

■在庫水準、急低下=6.7カ月分相当

 新築住宅の売れ残り住宅在庫(着工前や建築中の住宅も含む)は、前月比2.1%減の22万8000戸となり、2月の同0.4%増から減少(改善)に転じた。前年比では27.2%減と依然、前年水準を下回っている。

 この結果、3月の販売ペースで計算した在庫水準は6.7カ月分相当と、前月の8.6カ月分相当から大幅に低下した。これは2006年12月以来3年3カ月ぶりの低水準。最悪だった昨年1月の12.4カ月分(34万戸)のほぼ半分で、住宅建築業界が容認可能な水準6カ月分相当以下に接近した。

 売れ残り住宅在庫の内訳を見ると、建築中の住宅は前月比2%減の10万戸と、過去最低水準となっており、住宅メーカーは在庫減らしに懸命で、新築住宅の着工には依然慎重になっていることを示している。

 これは中古住宅の売れ残り在庫やフォークロージャーの格安物件が依然多いことから逆風を受けているためだ。

■住宅価格、前月比3.4%低下=格安物件売れて

 新築住宅価格の中央値(季節調整前)は前年比4.3%上昇の21万4000ドルとなったが、前月比では3.4%低下となっている。

 前月比で低下したのは、価格帯が20万ドル以下の格安物件の販売比率が前月の42%から45%に上昇した一方で、20万-40万ドルの高額物件は前月の43%から42%に低下したためだ。40万ドル以上の物件も15%から12%に低下している。

 アナリストはフォークロージャーの格安物件が住宅市場に流入してくる状況は今後も続く見通しから、昨年春から持ち直してきている住宅価格も今後数カ月は低下傾向になると見ている。(了)

PR / Ad Space

PR / Ad Space

クルクるアンケート

09月03日更新

菅直人、小沢一郎、どっちを支持する?



みんなの回答を見る

増谷栄一(ますたに・えいいち)

増谷栄一(ますたに・えいいち)

経済ジャーナリスト。北海道生まれ。早稲田政経学部卒。
1988年ジャパンタイムズ入社、編集局記者として世界100カ国の特集記事を制作。
1992年日経国際ニュースセンター編集室総合編集部次長を経て、1996年~2000年まで
米国経済通信社ブリッジ・ニュース東京特派員として日米の政治、経済、マーケットを取材。
1998年から2年間、ニューヨーク、ワシントン支局でアメリカのマーケット、重要経済統計、米政府、
財務省、米議会などをシニア・エディターとして取材。G7財務相・中央銀行総裁会議を3度取材。
その後、米国通信社ダウ・ジョーンズ通信社のコピー・エディターを経て、2001年1月から2004年9月まで
AFX通信社(AFP通信の経済ニュース部門)東京特派員。
2004年4月から2007年3月末までライブドア・ニュース外報部チーフ。
2007年11月まで英米金融情報サービス、トムソン・ファイナンシャルの起債担当記者。
2009年2月から経済ニュースサイト「NNAヨーロッパ」の編集長としてロンドンに駐在中。

ページトップへ戻る