増谷栄一のアメリカ経済情勢ファイル
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FOMC議事録、早期利上げ観測を否定=景気リスクを示唆

【2010年4月7日(水)】 - FRB(米連邦準備制度理事会)は6日、先月16日に開催したFOMC(連邦公開市場委員会)会合の議事録を公表したが、早期利上げを期待していた投資家や市場関係者にとっては失望を感じる内容だったようだ。

 3月16日のFOMC会合で、FRBは政策金利であるFF(フェデラル・ファンド)金利の誘導目標を、当分の間、現行の0%~0.25%のレンジに据え置くことを決めたが、会合終了直後に発表された声明文では、注目された金融政策の転換のタイミングについては明らかにされていなかった。

 それだけに、市場ではより詳細な議論の内容が分かる議事録に早期利上げを示すような何らかの糸口を見つけたかったが、思惑が外れた格好だ。

■委員、住宅市場の悪化リスクを示唆

 今回の議事録では、「委員は、経済活動は引き続き堅調で雇用市場も安定化しているという認識で一致した」とした上で、「景気回復は緩やかなペースで進む可能性が高い」と結論付けている。

 この点については、委員の一人でカンザスシティ地区連銀のトーマス・ホーニグ総裁は前回1月27日のFOMC会合と同様、3月のFOMCでも現行のゼロ金利政策は長期的には景気や金融市場に対するリスクを高めるとして反対票を投じている。

 しかし、議事録では、「住宅着工は低水準のままで横ばい状態が続いており、(住宅以外の)非居住用建築物に対する投資は依然減少している。また、国や地方の公共支出も財政収入の減少で圧迫されている」と指摘。

 特に、住宅市場については、「委員は、政府の住宅取得減税など支援策にもかかわらず、横ばいの状況が続いている」とした上で、「今後数四半期は、フォークロージャー件数(デフォルト通知や競売通知、銀行差し押さえ件数の合計)の割合も増加し、空き家物件の市場流入で住宅価格が一段と低下するリスクが高まることを懸念している」と述べている。

 さらに、議事録は、「家計の消費意欲も、弱い雇用状況で勢いが削がれ、企業も依然として新規雇用や新規プロジェクトに対する投資にも慎重になっている」と述べ、景気の先行きに対しては、利上げへの政策転換を正当化できるほど景気が過熱化する兆候を懸念するような見方にはなっていない。

 米商務省が2日発表した3月の雇用統計を見ても、前月比16万2000人の純増と、2007年3月以来3年ぶりの大幅増加となったものの、その一方で、半年(27週間)以上就職できない長期失業者数が654万7000人へと、41万4000人も増加、過去最悪となっている。これは失業者全体(1500万人)の10人中4人以上(44.1%)と、依然高水準で、エコノミストは雇用の先行き見通しにはなおも慎重だ。

■委員、インフレ率低下の加速を懸念

 また、利上げを正当化するのはインフレ懸念の高まりだが、3月のFOMC声明文では、「長期のインフレ期待は安定しており、インフレは当面、抑制される。企業の設備稼働率が低く雇用が弱い一方で、インフレは抑制されインフレ期待も落ち着いているという(現在の)経済状況では、当分の間(for an extended period)、超低金利を続けることが許される」と述べ、インフレ防止のための先行的な利上げの必要性を改めて否定している。

 今回の議事録でも、インフレについては、「委員は、最近のインフレのデータは消費者物価の低下ペースが思っていた以上に少し速くなっていると判断した。長期のインフレ期待も安定化していることや依然としてリソース(企業の設備稼働率や雇用市場など)もかなり緩慢となっていることを考えると、インフレは当分、抑制される」とし、むしろ、デフレ傾向が強まっており、早期利上げの根拠を与えるような判断にはなっていない。

■「当分の間」の文言、事実上の骨抜きに

 さらに、FRBは「当分の間」という文言を使って、政策金利を据え置き続けているため、市場も、この文言に注目し、今後のFOMC会合で、この文言がどのように修正されるかに注目している。また、最近では、この「当分の間」というのは、6カ月程度の期間を指すという認識が一人歩きし、利上げは近いとの見方が広まっていた。

 しかし、今回の議事録では、この点について、「多くの委員は、金融政策の先行きは、ある特定の時間経過というよりも経済の成り行き次第という認識を示した」と指摘し、6カ月というような特定の期間を指していないことが鮮明になった。

 その上で、議事録は、「経済活動が著しく加速化するか、インフレが顕著に上昇する兆候が確認される場合には、直ちに金融引き締めに向かう。反対に、景気見通しが明白に悪化するか、インフレが一段と低下傾向を示す場合には、当分の間の期間がかなりの長期間になる可能性がある」と強調、事実上、「当分の間」という文言を骨抜きにしている。

 この議事録の内容について、特に、為替市場ではFRBは明らかに雇用市場や住宅市場のぜい弱さとそれに伴う個人消費の悪化リスクに懸念を示していると見ており、今後もFRB幹部が今後も早期利上げに対し否定的な発言を続けるようであれば、これまでのドルの上昇分を消す動きに転換せざるを得ないというドル売りの見方が広がっている。

■金利先物市場、早期利上げ確率が低下

 それでも、エコノミストは早ければ今月27-28日に開かれるFOMC会合、あるいは、そのあとの6月22-23日の会合で、この「当分の間」と言う文言が削除されるかどうかに注目している。

 これは第1四半期(1-3月)GDP伸び率が緩やかながら+3%を超える見通しであることや3月の雇用統計も寒波の影響を受けた2月の新規雇用の減少から反動増に転じる可能性があるからだ。

 一部のアナリストは早ければ9月にもFRBは利上げに転じる可能性があると見ているものの、大方は現在のゼロ金利政策が長期化すると見ている。

 6日の金利先物市場では、この日発表されたFOMC議事録の内容やギリシャの緊縮財政への転換が不透明になったとの見方もあって、FRBによる早期利上げ観測が後退した。

 CBOT(シカゴ商品取引所)のFF(フェデラル・ファンド)金利先物の10月物は、9月21日に開かれるFOMC会合で政策金利が0.5%に引き上げられる確率が前日の60%から46%に低下、また、11月物も11月2-3日のFOMC会合で0.5%への利上げ確率を前日の100%から84%に引き下げている。(了)

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02月04日更新

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増谷栄一(ますたに・えいいち)

増谷栄一(ますたに・えいいち)

経済ジャーナリスト。北海道生まれ。早稲田政経学部卒。
1988年ジャパンタイムズ入社、編集局記者として世界100カ国の特集記事を制作。
1992年日経国際ニュースセンター編集室総合編集部次長を経て、1996年~2000年まで
米国経済通信社ブリッジ・ニュース東京特派員として日米の政治、経済、マーケットを取材。
1998年から2年間、ニューヨーク、ワシントン支局でアメリカのマーケット、重要経済統計、米政府、
財務省、米議会などをシニア・エディターとして取材。G7財務相・中央銀行総裁会議を3度取材。
その後、米国通信社ダウ・ジョーンズ通信社のコピー・エディターを経て、2001年1月から2004年9月まで
AFX通信社(AFP通信の経済ニュース部門)東京特派員。
2004年4月から2007年3月末までライブドア・ニュース外報部チーフ。
2007年11月まで英米金融情報サービス、トムソン・ファイナンシャルの起債担当記者。
2009年2月から経済ニュースサイト「NNAヨーロッパ」の編集長としてロンドンに駐在中。

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