増谷栄一のアメリカ経済情勢ファイル

オバマ大統領、きょう第1弾の雇用対策法案に署名へ

-上下両院、引き続き13.6兆円雇用対策を調整-

【2010年3月18日(木)】 - 米上院は17日、先に下院で修正可決した新規雇用インセンティブ減税とインフラ整備を中心とした公共投資から成る180億ドル(約1兆6300億円)の雇用対策法案を68票対29票の賛成多数で可決した。

 これを受けて、同法案は直ちにオバマ大統領に送付され、18日には大統領署名を経て発効する見通しだ。

 

 同法案は先月24日に上院を通過した150億ドル規模の雇用対策法案を下院が修正を加えたもので、改めて上院の再議決が求められていた。下院は今月4日に、当初の上院案に対し、運輸省が失業対策事業として実施している、41カ所の高速道路建設プロジェクトの今年末までの延長を盛り込むなど一部を修正した上で可決している。

 一方、上下両院は現在、総額1500億ドル(約13兆6000億円)規模の雇用対策法案の内容をめぐって調整しているが、今回の法案は事実上、それを小分けした第1弾となるものだ。1500億ドル規模の雇用対策法案はさまざまな雇用促進につながる対策を網羅した、いわば包括法案で、すでに上下両院を通過している。

 しかし、この包括法案は、上院案がさまざまな減税と失業保険給付期間の1年延長などを柱としている一方で、下院案はインフラ投資と公務員の雇用安定などが中心になっており、雇用対策の優先順位で大きな隔たりがある。このため、双方の法案調整が難航しており、こう着状態となっている。

 ただ、11月の中間選挙を控えていることから、特に、民主党では選挙対策上、何らかの雇用措置を打ち出していく必要性に迫られていることも今回の"小出し戦略"に転換した格好となっている。

■社会保障税減税、1.2兆円規模

 今回、上院を通過した180億ドルの雇用対策法案の主なものには、従業員を新規に雇用した中小企業に対するソーシャル・セキュリティ・タックス(社会保障税)の130億ドル(約1兆2000億円)規模の減税がある。

 これは60日以上の失業者を2月3日以降に雇用した場合、今年は現行の6.25%のソーシャル・セキュリティ・タックスを雇用主である中小企業は支払いを免除する。また、雇用された従業員が1年間在籍すれば、さらに1000ドルの減税措置が講じられる。

 そのほか、政府の8620億ドル(約78兆円)の景気刺激策に盛り込まれた、最大25万ドルまでの設備投資に対する加速度償却を今年末まで延長する。

 また、180億ドルとは別枠で、今年末に期限切れとなる「ビルド・アメリカ・ボンド(BAB)」と呼ばれる、連邦政府が州政府に対して、利払いの35%を負担する債券の発行を2013年6月まで延長し、州政府がインフラ整備に必要な資金の調達を支援する。これにより州政府は地方債の利払いの負担が大幅に軽減される。これに伴う政府支出は76億ドル(約6900億円)となる。

 さらに、運輸省が失業対策事業として実施している、41カ所の高速道路建設プロジェクトの今年末までの延長し、政府会計から高速道路・橋梁建設ファンドに200億ドル(約1兆8100億円)を移す措置も盛り込まれている。

■失業保険の給付再延長が当面の課題

 また、今回、上院を通過した雇用対策法案には失業保険の給付期間の今年末までの延長が盛り込まれていないため、当面は、4月5日の保険給付の期限切れをいかに回避するかが最大の課題となっている。

 給付期間の延長問題は、これが初めてではなく、2月28日に最初の期限切れが発生した際には社会問題に発展する恐れがあった。

 このときは、結局、下院が全会一致で給付期間の1カ月延長などを可能にする法案を可決、上院に再議決を求めたため、上院もようやく今月2日に期限切れとなっていた失業保険給付期間の延長と高速道路建設労働者への給与の支払いなどを1カ月延長する総額100億ドル(約9000億円)の緊急雇用対策法案を可決、当面の危機が回避されている。

 しかし、今度は4月5日までに上下両院が1500億ドルの雇用対策法案で合意し、失業保険の給付期間の今年末までの延長を決めなければ、再び、短期間の期間延長の法案を審議しなければならなくなり、議会の混乱は避けられなくなる可能性がある。(了)

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増谷栄一(ますたに・えいいち)

増谷栄一(ますたに・えいいち)

経済ジャーナリスト。北海道生まれ。早稲田政経学部卒。
1988年ジャパンタイムズ入社、編集局記者として世界100カ国の特集記事を制作。
1992年日経国際ニュースセンター編集室総合編集部次長を経て、1996年~2000年まで
米国経済通信社ブリッジ・ニュース東京特派員として日米の政治、経済、マーケットを取材。
1998年から2年間、ニューヨーク、ワシントン支局でアメリカのマーケット、重要経済統計、米政府、
財務省、米議会などをシニア・エディターとして取材。G7財務相・中央銀行総裁会議を3度取材。
その後、米国通信社ダウ・ジョーンズ通信社のコピー・エディターを経て、2001年1月から2004年9月まで
AFX通信社(AFP通信の経済ニュース部門)東京特派員。
2004年4月から2007年3月末までライブドア・ニュース外報部チーフ。
2007年11月まで英米金融情報サービス、トムソン・ファイナンシャルの起債担当記者。
2009年2月から経済ニュースサイト「NNAヨーロッパ」の編集長としてロンドンに駐在中。

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