増谷栄一のアメリカ経済情勢ファイル
【お知らせ】「増谷栄一のアメリカ経済情勢ファイル」は6月30日で終了いたしました 。
いつも「増谷栄一のアメリカ経済情勢ファイル」をご愛読いただきまして誠にありがとうございます。当ブログは2007年5月より連載してまいりましたが、2011年6月30日(木)をもって終了いたしました。4年間にわたる皆様のご愛顧に感謝し、御礼申し上げます。

米貿易赤字、3カ月ぶり縮小=景気回復足踏み

【2010年3月12日(金)】 - 1月の米貿易・サービス収支(季節調整済み)の赤字幅が3カ月ぶりに縮小に転じた。米国の景気回復はまだ一本調子ではなく、依然としてゆっくりとした足踏み状態になっていることを示している。

 米商務省が前日発表した1月の赤字幅は前月(昨年12月)の399億ドルから372億9000万ドルへと、6.6%縮小し、昨年9月以来4カ月ぶりの低水準となった。昨年の11月と12月の前2カ月はそれぞれ前月比で9.7%増と10.5%増と、景気回復による輸入急増を背景に赤字が大幅に増加したのとは対照的だ。

 また、市場予想の410億ドルの赤字を大幅に下回った。これは輸出が民間航空機と自動車の輸出減少で前月比0.3%減の1427億ドルと、8カ月ぶりに減少に転じた一方で、輸入は同1.7%減の1800億ドルと、輸出の減少ペースを上回って落ち込んだためだ。

■輸入減少、石油関連以外の要因も寄与

 輸入が減少したのは原油を含む石油関連の輸入額が予想に反して減少したのと、外国製自動車や消費財の輸入減少が響いている。ちなみに、石油関連の赤字幅(輸入超過分)は226億9000万ドルと、前月比で3.7%も縮小した。これは1月の原油価格は前月より上昇したものの、輸入量が減少したためだ。

 また、石油を除いた財ベースの貿易赤字幅は前月比5.4%減の254億ドルと、財全体の赤字幅の縮小ペース(4.9%)を上回っており、石油以外の要因も大きいことを示している。

 しかし、多くのエコノミストは、今回の貿易赤字の縮小については、一時的な縮小と見ており、今後数カ月は、世界貿易の回復の持続とともに米国の貿易赤字は拡大していく、と楽観的だ。

 ちなみに、1月の貿易赤字幅が今年1年間続くと仮定すれば、2010年の赤字額は4475億ドルとなり、2009年の3786億ドルを18%も上回ることになる。

 また、NABE(全米企業エコノミスト協会)は今年の赤字額は4375億ドルと予想している。2009年の赤字額は8年ぶりの低水準で、リセッション(景気失速)で輸入が大幅に減少したことや原油安が影響している。

■ドル安が米経済の回復のカギ

 米国経済の回復が輸入の増加を促し、その結果、貿易赤字も拡大していくわけだが、米経済の回復のカギを握るのは輸出の増加だ。そして、この輸出が増加するために必要なのが貿易相手国の景気回復とドル安である。

 特に、オバマ大統領は1月27日に行った大統領就任後初の一般教書演説の中で、今後5年間で新たに200万人の雇用創出を目指す方針を明らかにしており、そのために輸出を2倍に引き上げる提案を行っている。

 しかし、このドル安は2009年までは続いていたが、昨年12月以降、ドルは対ユーロで上昇し始めているのが懸念材料となっている。ドル高の背景にはユーロ圏のメンバー国であるギリシャの財政危機がある。これが引き金となってユーロ安・ドル高が続いているからだ。

 また、オバマ政権はこの18カ月間、中国は輸出を支援するため、人民元の対ドルの為替レートを安定的に推移させてきていることから、中国の人民元に対するドル高の是正、つまり、人民元の切り上げを求めているところだ。

 米国の貿易赤字の大半を占め、米国の赤字拡大の元凶とされてきた中国との貿易赤字は、1月は前月比0.9%増の183億ドルとやや拡大した。これは中国からの輸入が同1.8%増の252億ドルとなったためだ。ただ、前年比では11%減となっている。

 ただ、エコノミストはドルの上昇は米国の輸出、そして米国経済を成長路線から外すほどまでには至らないだろうと楽観的に見ている。

■自動車と消費財、資本財の輸入が減少

 輸入を見ると、食品を含む財全体の輸入額は前月比2.1%減の1478億ドルと減少した。このうち、石油関連以外の輸入額は2%減となっている。

 減少に大きく寄与したのは自動車・自動車部品(前月比8.1%減)と自動車以外のコンピューターや通信機器、産業機械などの資本財(同3%減)、テレビや家庭用品などの消費財(同2.3%減)だ。

 工業用サプライ品・原材料も同0.1%減となったが、中身をよく見ると、これは原油を含めた石油関連の輸入は同3.1%減となったことが大きい。

 うち、原油は10.8%減の192億4400万ドルとなっている。これは1バレル当たりの原油価格が前月比0.79ドル高の73.89ドルと上昇したが、原油の輸入量が同11.5%減の2億4527万バレルと、減少したためだ。

 輸入動向は、米国内の小売売上高の動向を反映している。商務省が先月発表した1月の小売売上高(季節・営業日調整後)は、前月比0.5%増の3558億ドル(約32兆円)と、市場予想のコンセンサス(同0.3%増)を上回った。

 しかし、主力の自動車・自動車部品の売上高は同0.1%減となり、昨年9月の同14.3%減以来4カ月ぶりの減少となっている。米調査会社オートデータが2月3日に発表した1月の自動車メーカー各社の新車販売台数は前年比6.3%増の69万8378台と、3カ月連続で前年実績を上回ったが、昨年12月の102万9911台((前年比15.1%増)を大幅に下回っている。

 エコノミストは、失業率が1月の雇用統計では9.7%に低下したものの、年内まで10%に近い水準が続くと予想していることや、政府の景気刺激策による減税や公共投資が今年後半にかけて細ることから、今年上期の小売売上高は横ばい状態が続くと予想している。(了)

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02月04日更新

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増谷栄一(ますたに・えいいち)

増谷栄一(ますたに・えいいち)

経済ジャーナリスト。北海道生まれ。早稲田政経学部卒。
1988年ジャパンタイムズ入社、編集局記者として世界100カ国の特集記事を制作。
1992年日経国際ニュースセンター編集室総合編集部次長を経て、1996年~2000年まで
米国経済通信社ブリッジ・ニュース東京特派員として日米の政治、経済、マーケットを取材。
1998年から2年間、ニューヨーク、ワシントン支局でアメリカのマーケット、重要経済統計、米政府、
財務省、米議会などをシニア・エディターとして取材。G7財務相・中央銀行総裁会議を3度取材。
その後、米国通信社ダウ・ジョーンズ通信社のコピー・エディターを経て、2001年1月から2004年9月まで
AFX通信社(AFP通信の経済ニュース部門)東京特派員。
2004年4月から2007年3月末までライブドア・ニュース外報部チーフ。
2007年11月まで英米金融情報サービス、トムソン・ファイナンシャルの起債担当記者。
2009年2月から経済ニュースサイト「NNAヨーロッパ」の編集長としてロンドンに駐在中。

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