増谷栄一のアメリカ経済情勢ファイル
【お知らせ】「増谷栄一のアメリカ経済情勢ファイル」は6月30日で終了いたしました 。
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米FRB、出口戦略に向け前進=金融市場の改善を確認

-中小企業資金調達支援のTALFは来年6月まで延長-

【2009年12月18日(金)】 - FRB(米連邦準備制度理事会)は16日、FOMC(連邦公開市場委員会)会合を開き、市場の大方の予想通り、政策金利であるFF(フェデラル・ファンド)金利の誘導目標を現行通り0%~0.25%のレンジを当面、維持することを決めた。

 同時に、前回11月4日のFOMC会合時よりも景気と金融市場の回復が順調に進んでいるとの認識を示した上で、インフレ期待の上昇を抑制する観点からも、これまで金融市場の安定化のために6月に期限延長した緊急融資制度の大半を予定通り来年2月1日までに終了させる方針も明らかにしている。

 前回11月のFOMC声明文との違いは、景気に対する認識だ。FRBは、過去60年間で最悪といわれたリセッション(景気失速)について、前回は「経済活動は引き続き回復している(economic activity has continued to pick up)」と述べていたが、今回はこの文言に加えて、「the labor market is abating」と、「Financial market conditions have become more supportive of economic growth」という新しい2つの文言が入り、景気と金融市場に対する認識が一段と強化された。

 確かに、先月26日に、商務省が発表した2009年第3四半期(7-9月)実質GDP伸び率(季節調整済み、前期比年率換算)の改定値は先月下旬に発表された速報値+3.5%から+2.8%と、一気に0.7%ポイントもの大幅な下方改定となった。しかし、それでもこの+2.8%の成長率は2年ぶりの高い伸びには変わりはない。また、前期(4-6月期)の-0.7%から、昨年第2四半期以来1年以上ぶりにプラス成長に転換している。

 また、同省が今月11日発表した11月の小売売上高(季節・営業日調整後)が前月比1.3%増の3521億ドル(約31兆7000億円)となり、市場予想のコンセンサスである同0.6%増の2倍以上の強い伸びを示したことから、市場では、景気が2番底を打つリスクは後退したとの楽観的な見方も出ている。JPモルガンとクレディスイスはいずれも同四半期のGDP伸び率を従来予想の+3.5%から+4.5%に上方修正している。

 さらに、労働省が4日発表した11月の新規雇用者数も前月比11万人減と、リセッションが始まった2007年12月以来約2年ぶりの小幅減少となっており、また、9月と10月の前2カ月の減少幅も合計で約16万人も上方改定され、雇用市場はようやく改善に向けて着実に動き出した感がある。

 その上で、FOMCは、前回同様、「現行の財政と金融面からの景気刺激策や金融安定化対策が経済成長を強め、物価が安定する中で企業の設備稼働率も緩やかに上昇するのに役立つ」と述べ、また、物価についても「長期のインフレ期待は安定している」として、ゼロ金利政策を「当分の間(for an extended period)」続けるとしている。この箇所も変わっていない。

■FF金利先物、早期利上げ確率が低下

 金利先物市場では、こうした今回のFOMCの声明文を受けて、FRBによる早期利上げ観測が後退した。CBOT(シカゴ商品取引所)のFF(フェデラル・ファンド)金利先物の7月物は、来年6月に開かれるFOMC会合で政策金利が0.5%に引き上げられる確率を前日の66%から58%に低下(一時は48%まで低下)しており、エコノミストの多くは、FRBは来年の半ばまで金利が据え置かれる可能性があると引き続き見ている。

 また、住宅市場については、前回は「住宅セクターの活動はここ数カ月、高まっている」としていたが、今回は、「The housing sector has shown some signs of improvement」と、明確に「回復の兆候がある」とし、住宅市場の回復に強い自信を示している。

 こうした認識に基づいて、FRBは住宅市場対策として打ち出した、政府系住宅金融会社のファニーメイ(米連邦住宅抵当金庫)とフレディマック(米連邦住宅貸付抵当公社)が債務保証したMBS(不動産担保証券)の買い取り枠1.25兆ドル(約112.5兆円)を引き続き維持するとしている。

 前回、FRBはファニーメイとフレディマックが発行する短期社債の買い取り枠2000億ドル(約18兆円)について、市場の円滑な取引の障害にならないようにするため、また、これまでの買い取り実績や社債発行がそれほど増えていないことも反映させて、1750億ドル(約15.8兆円)に減額したが、この金額は今回も変えていない。

 また、これらのMBSと社債の買い取りペースについては、前回と同様、来年第1四半期(1-3月)を期限として、徐々にスローダウンさせるとしている。これは、これまでFRB主導で進められてきたMBSの買い取りをマーケット自身の手で行うことができるよう取引の円滑化を進めることを目的としている。

 現時点で、FRBはこれまでに1.25兆ドルのMBS購入枠に対し約86%の1兆0700万ドル、政府系住宅金融会社の社債購入の1750億ドル枠に対しては約90%の1560億ドルまで消化している。

■緊急金融制度の大半、来年2月1日で終了

 さらに、前回と違う点は、緊急金融制度を予定通り、来年2月1日で終了させると明言したことだ。声明文では、「In light of ongoing improvements in the functioning of financial markets」という文言を使って、金融市場の機能回復が続いているという認識を強調した上で、今年6月25日のFOMC会合で来年2月1日までの延長を決定した緊急融資制度の大半を再延長せずに終わらせる。

 来年2月1日に終了する制度は、Asset-Backed Commercial Paper Money Market Mutual Fund Liquidity Facility (AMLF:資産担保コマーシャルペーパー(ABCP)購入に向けた金融機関への貸し出し制度)とCommercial Paper Funding Facility (CPFF:CP買い取り支援制度)、Primary Dealer Credit Facility (PDCF:政府公認証券ディーラー向け連銀貸出制度)、Term Securities Lending Facility (TSLF:ターム証券貸出制度)だ。

 また、世界的規模での金融システムの安定化のために導入されている、米国や日本、ECB(欧州中央銀行)を含む14の各国主要中央銀行間の資金融通取り決めである通貨スワップ協定(一定期間通貨を交換、期間終了時にあらかじめ取り決められたレートで買戻し・売りを行う取引)も来年2月1日で終了する。

 ただ、Term Auction Facility (TAF:入札型ターム物貸し出し制度)については、もともと期限が設定されていなかったが、今回の決定では2010年の早期に規模を縮小するとしている。

 家計や中小企業の資金調達を支援するためのTerm Asset-Backed Securities Loan Facility(TALF:ターム物資産担保証券貸出制度)については、今年12月末で期限切れとなるが、今回の決定では、新規発行されたCMBS(商業用不動産モーゲージ担保証券)を担保とする融資については来年6月末まで、それ以外の担保の融資については来年3月末で終了するとしている。

 市場では、今後数日中に、FRBは緊急融資制度の変更点の詳細について、声明文を出すと見ている。(了)

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02月04日更新

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増谷栄一(ますたに・えいいち)

増谷栄一(ますたに・えいいち)

経済ジャーナリスト。北海道生まれ。早稲田政経学部卒。
1988年ジャパンタイムズ入社、編集局記者として世界100カ国の特集記事を制作。
1992年日経国際ニュースセンター編集室総合編集部次長を経て、1996年~2000年まで
米国経済通信社ブリッジ・ニュース東京特派員として日米の政治、経済、マーケットを取材。
1998年から2年間、ニューヨーク、ワシントン支局でアメリカのマーケット、重要経済統計、米政府、
財務省、米議会などをシニア・エディターとして取材。G7財務相・中央銀行総裁会議を3度取材。
その後、米国通信社ダウ・ジョーンズ通信社のコピー・エディターを経て、2001年1月から2004年9月まで
AFX通信社(AFP通信の経済ニュース部門)東京特派員。
2004年4月から2007年3月末までライブドア・ニュース外報部チーフ。
2007年11月まで英米金融情報サービス、トムソン・ファイナンシャルの起債担当記者。
2009年2月から経済ニュースサイト「NNAヨーロッパ」の編集長としてロンドンに駐在中。

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