増谷栄一のアメリカ経済情勢ファイル
【お知らせ】「増谷栄一のアメリカ経済情勢ファイル」は6月30日で終了いたしました 。
いつも「増谷栄一のアメリカ経済情勢ファイル」をご愛読いただきまして誠にありがとうございます。当ブログは2007年5月より連載してまいりましたが、2011年6月30日(木)をもって終了いたしました。4年間にわたる皆様のご愛顧に感謝し、御礼申し上げます。

米11月雇用者数、2年ぶり小幅減=失業率10%に低下

-オバマ大統領は慎重な見方維持=今週雇用対策発表へ-

【2009年12月6日(日)】 - 米労働省が4日発表した11月の新規雇用者数は前月比11万人減と、23カ月連続の減少となったものの、リセッション(景気失速)が始まった2007年12月以来約2年ぶりの小幅減少となった。

 また、9月と10月の前2カ月の減少幅も合計で約16万人も上方改定され、雇用市場はようやく改善に向けて着実に動き出した感がある。

 市場予想のコンセンサスである12万5000人減も下回っており、7月の30万4000人減に比べると減少幅が大幅に縮小している。前回発表時は、10月が19万人減と、減少幅が9月の21万9000人減に比べてそれほど変わらなかったため、雇用市場の改善が一段落した印象があった。

 しかし、今回の発表では9月は13万9000人減へと、8万人も上方改定され、10月も11万1000人減へと、7万9000人も上方改定されており、8月に15万4000人減と大幅縮小して以降、この4カ月間で、雇用市場は着実に改善してきている。過去3カ月間(9-11月)の月平均も13万5000人減と小幅になってきている。

 もう一つの明るい材料は失業率が10月の10.2%から11月は10.0%と一気に0.2%ポイントも低下したことだ。ただ、リセッションが始まった当時よりも5.1%ポイント高い水準となっている。

 失業率の見通しについては、FRB(米連邦準備制度理事会)は11月24日にFOMC(公開市場委員会)議事録を発表した際、その中で、FOMCの各委員の失業率の予想(中央値)として、2010年は9.3~9.7%に緩み、2011年からようやく8.2~8.6%に低下。2012年は6.8~7.5%になると予想している。

■FF金利先物の利上げ確率が上昇

 11月の雇用統計が強い内容となったのを受けて、統計発表直後の為替市場ではドル買いが加速し、株式市場も急伸した。ニューヨーク株式市場ではダウ工業株30種平均が一時、前日比150ドル高となったあと、値を戻したものの、22.75ドル(0.2%)高の1万0388.90ドルで引けた。また、ドルの主要6通貨のバスケットに対す相場を指数化したドル指数の終値は前日比1.6%上昇の75.819と、6月以来半年ぶりの大幅上昇となった。

 一方、対照的に債券相場は売られて、債券価格と反対方向に動く利回りが上昇。政策金利の誘導目標となっているFF(フェデラル・ファンド)金利の先物市場でも相場が下落したため、利上げ確率が上昇している。

 CBOT(シカゴ商品取引所)のFF金利先物の来年5月物は、来年4月27-28に開かれるFOMC会合でインフレ上昇を抑制するため、政策金利が0.5%に引き上げられる確率が前日の2%から14%に上昇。

 また、来年7月物は6月22-23日のFOMC会合で政策金利を0.5%に引き上げられる確率は前日の42%から68%に上昇しており、一部のエコノミストは、FRBは来年4月からの政策金利の引き上げを予想していることを示している。

■オバマ大統領、今週早々にも雇用対策発表へ

 エコノミストは、雇用市場の安定化に一歩近づいたとし、世界的な金融危機に見舞われた昨年秋に企業は大規模な人員削減を実施したので、今後は数カ月以内に新規雇用が必要になって来るという楽観的な見方も出てきている。

 しかし、2007年12月にリセッションが始まった当時と比べると、雇用者数は716万人減少する一方で、失業者数は790万人増の1540万人となっており、リセッションが始まったころの水準(失業者数750万人、失業率4.9%)までにはまだまだだ。

 また、要注意なのは、半年以上就職できない失業者数が前月比29万3000人増の590万人と依然、過去最高を更新中となっていることだ。これは、失業者全体の3分の1以上にあたる38.3%で、10月よりも2.7%ポイントも上昇し、依然として過去最高の水準が続いていることだ。

 このため、オバマ大統領も4日のペンシルベニア州での講演では、今回の雇用統計の結果については、一応の評価を示しながらも、雇用市場の今後の見通しについては、「今回の良い結果が今後も続くことを期待するが、道のりはまだ遠い」と述べ、今後も曲折がありうるとの慎重な見方を示している。

 現在、ホワイトハウスでは昨年10月に議会で成立し、ブッシュ前大統領が署名した金融安定化法の柱である総額7000億ドル(約63兆5000億円)の不良資産救済制度(Troubled Asset Relief Program)活用した雇用促進対策を策定中で、同大統領は今週早々にも詳細を発表すると見られている。

 最近では、雇用市場の回復の遅れに対処するため、オバマ大統領は11月6日に、失業保険の給付期間を最大で20週間延長する法案に署名した。この結果、失業者は連邦政府と州政府の両方を合わせると最大99週間の給付が可能になった。

 また、同法案では、失業給付期間の延長と同時に、今回の第3四半期GDPのプラス成長への転換に寄与した新規住宅取得者に対する住宅取得控除(8000ドルを限度に住宅価格の10%を控除)も当初の11月末の期限切れから来年4月末まで5カ月間延長され、景気回復を後押しする態勢が取られている。

■製造業と建設業、計約6.8万人減=減少ペース鈍化

 11月雇用統計の特徴は、前月同様、建設業と製造業、小売業で雇用者数が依然、減少しているが、減少ペースが鈍化してきていることだ。

 製造業は前月比4万1000人減で、これで41カ月連続の減少となったが、過去5カ月間(7-11月)の月平均は4万6000人減で、今年上期(1-6月)の月平均17万1000人減からは減少幅が大幅に縮小した。

 また、2007年12月にリセッションが始まって以降では計210万人の雇用者減だが、この大半は自動車などの耐久財の製造業で160万人減となっている。自動車・自動車部品製造は、10月は同4700人増だったが、11月は6300人減と、大幅に悪化している。

 他方、建設業も住宅市場の回復の兆しが見られるものの、同2万7000人減と、30カ月連続の減少となった。ただ、過去6カ月間(2008年11月-今年4月)の月平均11万7000人減から最近の6カ月間(5-10月)は月平均6万3000人減へと改善している。

 建設業が2万7000人減となったのは、specialty trade contractorsと呼ばれる、整地などの基礎工事や電気・配管などの専門工事業者のうち、住宅以外の業者が2万9000人減となったためだ。

 また、サービス産業は前月比5万8000人増と、17カ月ぶりに増加に転じた10月(2000人増)に続いて2カ月連続の増加となった。このうち、小売業は、個人消費の低迷を反映して、同1万5000人減となり、25カ月連続の減少となった。しかし、10月の同4万4000人減から大幅に改善している。

 小売業のうち、自動車・自動車部品販売は10月の同500人減から11月は800人増(うち、自動車ディーラーは10月の同100人増から11月は同2200人増)と、大幅に改善している。

 サービス産業全体の増加に寄与したのは専門・ビジネスサービス業だ。10月の3万8000人増に続いて、11月も同8万6000人増と、3カ月連続の増加だ。

 特に、このうち、将来の雇用の先行指標となる人材派遣業が同5万2400人の増加となり、10月の同4万3900人増に続いて4カ月連続の増加となっており、雇用市場の回復の可能性を示している。7月以降では計11万7000人増となっている。

 金融サービス業(不動産販売も含む)は前月比1万人減と、10月の1万人減と同数の減少となったが、4月の同4万6000人減からはピークを過ぎている。このうち、クレジット仲介業は同700人減と依然、減少が続いている。

 また、雇用者数の増減を民間部門と政府部門に分けると、これまで民間部門の膨大な失業者数を抑制する効果を示してきた政府部門だが、11月は前月比7000人増と、10月の4万6000人増からは増加幅が鈍化した。この結果、11月の民間部門だけの減少幅は同11万7000人となった。

■労働時間、4年以上ぶり大幅増=雇用の先行きに望み

 週平均労働時間は、過去最低を記録した10月の33.0.時間から11月は0.6%増の33.2時間となった。これは4年以上ぶりの大幅増だ。また、1時間当たり平均賃金は、18.74ドルと、10月の18.73ドルから0.1%上昇(前年比では2.2%上昇)しており、今後、消費者が収入の増加で、消費を増やす可能性を示している。(了)

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02月04日更新

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増谷栄一(ますたに・えいいち)

増谷栄一(ますたに・えいいち)

経済ジャーナリスト。北海道生まれ。早稲田政経学部卒。
1988年ジャパンタイムズ入社、編集局記者として世界100カ国の特集記事を制作。
1992年日経国際ニュースセンター編集室総合編集部次長を経て、1996年~2000年まで
米国経済通信社ブリッジ・ニュース東京特派員として日米の政治、経済、マーケットを取材。
1998年から2年間、ニューヨーク、ワシントン支局でアメリカのマーケット、重要経済統計、米政府、
財務省、米議会などをシニア・エディターとして取材。G7財務相・中央銀行総裁会議を3度取材。
その後、米国通信社ダウ・ジョーンズ通信社のコピー・エディターを経て、2001年1月から2004年9月まで
AFX通信社(AFP通信の経済ニュース部門)東京特派員。
2004年4月から2007年3月末までライブドア・ニュース外報部チーフ。
2007年11月まで英米金融情報サービス、トムソン・ファイナンシャルの起債担当記者。
2009年2月から経済ニュースサイト「NNAヨーロッパ」の編集長としてロンドンに駐在中。

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