増谷栄一のアメリカ経済情勢ファイル

バーナンキFRB議長、再任めぐる上院委で証言=再任反対意見も

-議長、銀行改革法案のFRB権限縮小は過ちと強調-

【2009年12月4日(金)】 - ベン・バーナンキ米FRB(連邦準備制度理事会)議長は3日、2期目入りを目指して米上院銀行住宅都市委員会の公聴会で証言した。

 同議長は、これまでの世界的な金融危機に対応するためにFRBが打ち出したさまざまな金融政策の有効性を強調したが、一部の委員からは、FRBはウォール街に肩入れし過ぎだと批判して再任の承認に反対、もしくは投票しないと発言するなど、再任手続きが長期化して来年の春にまで延びる可能性が出てきている。

 それでも、クリストファー・ドッド委員長(民主党、コネチカット州選出)や他の民主・共和両党の委員もバーナンキ議長の再任を支持していることから、最終的にはバーナンキ議長が再任される見通し。

 しかし、再任されたとしてもFRBの金融政策決定に対する議会の関与を可能にする銀行改革法案が奇しくも前日の2日、下院金融サービス委員会で31対27票の賛成多数で承認されたばかりだ。

 この法案は今後、下院本会議で、9日から審議が3日間行われて採決されるが、中央銀行としてのFRBの独立性を脅かすだけではなく、FRBの金融安定化のための政策に足かせをはめる色彩が強いため、今後の景気回復や金融市場の安定化にも影響が出てくる恐れがある。

■共和党幹部が再任で難色

 バーナンキ議長はジョージ・ブッシュ前大統領によって、アラン・グリーンスパン前FRB議長の後任として最初の指名を受けた。今年の夏には、バラク・オバマ大統領によって、任期4年の2期目に向けて再指名されている。しかし、同議長の最初の任期は来年1月末で満期となることから、議会で正式に2期目入りの承認を受ける必要がある。ただ、上院の採決が行われなくても、その間、同議長は職務を遂行することは可能だ。

 バーナンキ議長の再任に真っ向から反対したのは、共和党のジム・バニング議員(ケンタッキー州選出)だ。同議員が批判の中心にしたのは世界保険最大手AIGの政府救済に対するFRBの対応だ。同議員は、「政府のAIG救済に対し、FRBが取った行動だけが、私がバーナンキ議長を元のプリンストン大学に送り返す唯一の理由だ」と述べている。

 その上で、同議員は「再任を阻止するためなら出来ることは何でもする。また、この再任手続きをできるだけ長期化させる」と強硬姿勢だ。また、無所属のバーニー・サンダース議員(バーモント州選出)は同議長の再任の投票を行わない考えを明らかにしている。

 こうしたバニング議員の再任反対の声は他の委員の間に広がってはいない。しかし、同委員会の共和党のリーダー的存在である大物議員のリチャード・シェルビー議員(アラバマ州選出)は、「アメリカ経済はまだ深い森から抜け出していない。バーナンキ議長が我々を深い森から抜け出してくれる最善の人物なのかが問題だ」とし、再任に対する賛否を決めかねていると述べている。

■ドッド委員長ら銀行改革法案の可決目指す

 下院に続いて、銀行改革法案を審議する上院の同委員会では、ドッド委員長が同法案の可決を画策しており、共和党のシェルビー議員もこの日の公聴会でFRBの大幅な改革を支持する意向を明らかにしたことから、バーナンキ議長にとっては新たな頭痛の種になっている。

 同議長はドッド委員長に対し、この法案が成立すれば2001年9月11日の米国同時多発テロ後の経済・金融混乱やその後の2007年から始まった金融危機でもFRBが金融システムの安定化に寄与してきたような有効な金融措置を打ち出せなくなるとし、大きな過ちになると苦言を呈している。

 この銀行法案では、最後の貸し手とされるFRBの緊急融資が4兆ドルに制限されるばかりか、議会にFRBの金融政策を監査する権限が与えられることになっている。このため、市場では、FRBが議会の利上げ要求に反対して意見が分かれた場合、議会がFRBに利上げを迫る手段として利用され、FRBの独立性が失われるだろうと危機感を示している。

 具体的には、FRBの金融政策が長期的な視点で決定されても、議会の短期的な目標と相容れない場合には、FRBに対し調査官を送り込む権限が与えられる。バーナンキ議長は、もし、この法案によって、市場が議会は金利に対して強い影響力を持っていると見るようになれば、金利が上昇し始める可能性があると警告している。

 また、この法案で厄介なのは、現在、FRBの傘下に12地区連銀の総裁がおり、現在は各地区連銀の理事会で互選されている。この点について、バーナンキ議長も理事会には地元の銀行や経済界の有力者が入っているため、政府や金融界、産業界など幅広い分野の意見が金融政策の決定に反映されやすいと主張している。

 しかし、今後はこれらの総裁の任命は議会の承認が必要になる。現時点では上院の承認が有力になっており、FRBの金融政策の決定に対し、議会の意向が強まるのは必至だ。(了)

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増谷栄一(ますたに・えいいち)

増谷栄一(ますたに・えいいち)

経済ジャーナリスト。北海道生まれ。早稲田政経学部卒。
1988年ジャパンタイムズ入社、編集局記者として世界100カ国の特集記事を制作。
1992年日経国際ニュースセンター編集室総合編集部次長を経て、1996年~2000年まで
米国経済通信社ブリッジ・ニュース東京特派員として日米の政治、経済、マーケットを取材。
1998年から2年間、ニューヨーク、ワシントン支局でアメリカのマーケット、重要経済統計、米政府、
財務省、米議会などをシニア・エディターとして取材。G7財務相・中央銀行総裁会議を3度取材。
その後、米国通信社ダウ・ジョーンズ通信社のコピー・エディターを経て、2001年1月から2004年9月まで
AFX通信社(AFP通信の経済ニュース部門)東京特派員。
2004年4月から2007年3月末までライブドア・ニュース外報部チーフ。
2007年11月まで英米金融情報サービス、トムソン・ファイナンシャルの起債担当記者。
2009年2月から経済ニュースサイト「NNAヨーロッパ」の編集長としてロンドンに駐在中。

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