増谷栄一のアメリカ経済情勢ファイル

米7-9月期GDP、予想通りの下方改定=個人消費と設備投資が悪化

-住宅市場回復でQ4以降の成長率鈍化予想は上方修正-

【2009年11月26日(木)】 - 米商務省が24日発表した2009年第3四半期(7-9月)実質GDP伸び率(季節調整済み、前期比年率換算)の改定値は、先月下旬に発表された速報値+3.5%から+2.8%と、一気に0.7%ポイントもの大幅な下方改定となった。ただ、市場の事前予想も+2.8%だったので、予想された結果に終わったといえる。

 先に発表された同四半期のGDPに大きな影響を与える主要な経済データが軒並み悪化したことから、大幅な下方改定は織り込み済みだった。

 例えば、商務省が16日発表した10月の小売売上高(季節・営業日調整後)統計では、9月が前月比1.5%減から同2.3%減へと大幅に下方改定されている。さらに、同省が13日発表した9月の貿易・サービス収支(季節調整済み)の赤字幅も前月比18.2%増の365億ドルと、再び赤字幅が拡大し、1999年2月以来の10年8カ月ぶりの大幅悪化となっている。

 GDPの70%を占める個人消費の大半を占める小売統計、さらに、貿易赤字に示される外需が悪化した結果、第3四半期中のGDP伸び率は+2.8%程度まで押し下げられる予想されていたのだ。

 それでもこの+2.8%の成長率は2年ぶりの高い伸びには変わりはない。また、前期(4-6月期)の-0.7%から、昨年第2四半期以来1年以上ぶりにプラス成長に転換している。

 2007年12月から始まったリセッション(景気失速)の終焉時期については、NBER(全米経済研究所)による正式発表を待たねばならないが、1947年の統計開始以来の62年間で初めてとなった4四半期連続マイナス成長に終止符が打たれたといえる。

 市場では、第3四半期GDPのプラス成長は、新規住宅取得者に対する住宅取得控除や新車買い替え支援制度などの政府の総額7870億ドル(約72兆円)もの景気刺激策が効果を発揮したと見ている。

■Q4以降のGDP伸び率は上方修正

 第4四半期(10-12月)のGDP伸び率については、10月の中古住宅販売が2007年2月以来2年8カ月ぶりの大幅増となったことから、エコノミストはこれまでの大幅な鈍化予想(一部では+1%近くまでの鈍化予想)を上方修正して、+3.1%にとどまると見ている。

 NAR(全米不動産業協会)が23日発表した10月の中古住宅販売件数は、前月比+10.1%の年率換算610万戸となり、9月の同+8.8%増に続いて、2カ月連続の大幅増加となった。また、売れ残り住宅在庫も前月比-3.7%の357万戸となり、10月の月間販売ペースでみて、7カ月分となり、9月の8カ月分、8月の9.3カ月分から低下ペースを速めている。

 この好調な住宅販売の背景にあるのは、住宅取得控除(最大8000ドルで住宅価格の約10%に相当)だ。オバマ大統領は今月6日、雇用市場の回復の遅れに対する当面の措置として、失業保険の給付期間を最大で20週間延長する法案に署名した際、同時に住宅取得控除の適用期限を11月30日から来年4月末まで5カ月間延長している。

 これは、住宅取得控除が第3四半期GDPのプラス成長への転換に寄与したことから、景気回復を後押しするために取られた措置だ。NABE(全米企業エコノミスト協会)が23日に発表した景気見通しでも、今後の住宅市場の回復を背景に、2010年のGDP伸び率は今年の-2.4%から+2.9%になると予想している。前回10月調査時の+2.6%から上方修正されている。

 また、今回のGDP改定値の発表では、企業利益も発表され、第3四半期は前期比+10.6%と、前期の同+3.7%の約3倍となり、2004年以来5年ぶりの大幅な伸びとなっている。これは企業が人員削減でコストの圧縮を図ったためと見られている。

■個人消費と設備投資、外需が下方改定

 第3四半期のGDP伸び率を押し上げたのは、GDP全体の約70%を占める個人消費支出だが、改定値は速報値の前期比年率+3.4%から+2.9%に下方改定された。前期の-0.9%からは大幅に改善しているが、1970-2007年の四半期ベースの平均伸び率+3.4%を依然下回ったままだ。

 これは失業率が高かった1983年でさえ、同+6.5%だったことからも分かるように、個人消費は緩やかな伸びにとどまっている。この結果、個人消費のGDP寄与度も速報値の+2.36%ポイントから+2.07%に下方改定された。

 個人消費以外では、企業の設備投資も速報値の前期比年率換算-2.5%から-4.1%と、大幅に下方改定され、GDP成長率寄与度も速報値の-0.24%ポイントから-0.4%と大きく足を引っ張った。

 住宅投資も速報値の同+23.4%から+19.5%に下方改定となったが、2003年以来6年ぶりの大幅な伸びを維持した。GDP寄与度は速報値の+0.5%ポイントから+0.45%ポイントに低下した。いずれにしても、住宅投資がプラス成長になったのは2005年第4四半期(10-12月)以来約4年ぶりには変わりはない。

 企業在庫も速報値では1308億ドルの減少だったが、改定値では1334億ドルと縮小幅が拡大した。ただ、前期の1602億ドルの減少からは減少幅は大幅に縮小している。この結果、GDP寄与度は速報値の+0.94%ポイントから+0.87%ポイントに低下、GDPの速報値を押し下げた。

 一方、外需は、輸出(サービス含む)が速報値の+14.7%から改定値では+17%(前期は-4.1%)と、上方改定され2年ぶりの大幅増となった。しかし、輸入も速報値の+16.4%から+20.8%(同-14.7%)と、上方改定され、5年ぶりの大幅増となり輸出の伸びを上回った。その結果、純輸出のGDP寄与度は速報値の-0.5%ポイントから-0.8%ポイントに下方改定され、GDPの速報値を押し下げている。

 また、公共投資である政府消費支出(地方自治体支出も含む)は景気刺激策の効果で、速報値の前期比年率+2.3%から+3.1%に上方改定され、GDP寄与度は速報値の+0.5%ポイントから+0.6%ポイントに改善した。このうち、国防費は+8.9%(速報値は+8.4%)、国防費を除いたベースでも+6.9%(同+6.8%)となった。 (了)

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03月05日更新

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増谷栄一(ますたに・えいいち)

増谷栄一(ますたに・えいいち)

経済ジャーナリスト。北海道生まれ。早稲田政経学部卒。
1988年ジャパンタイムズ入社、編集局記者として世界100カ国の特集記事を制作。
1992年日経国際ニュースセンター編集室総合編集部次長を経て、1996年~2000年まで
米国経済通信社ブリッジ・ニュース東京特派員として日米の政治、経済、マーケットを取材。
1998年から2年間、ニューヨーク、ワシントン支局でアメリカのマーケット、重要経済統計、米政府、
財務省、米議会などをシニア・エディターとして取材。G7財務相・中央銀行総裁会議を3度取材。
その後、米国通信社ダウ・ジョーンズ通信社のコピー・エディターを経て、2001年1月から2004年9月まで
AFX通信社(AFP通信の経済ニュース部門)東京特派員。
2004年4月から2007年3月末までライブドア・ニュース外報部チーフ。
2007年11月まで英米金融情報サービス、トムソン・ファイナンシャルの起債担当記者。
2009年2月から経済ニュースサイト「NNAヨーロッパ」の編集長としてロンドンに駐在中。

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