増谷栄一のアメリカ経済情勢ファイル
【お知らせ】「増谷栄一のアメリカ経済情勢ファイル」は6月30日で終了いたしました 。
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米4月住宅販売、一段と底打ちの兆し=新築は前月比横ばい、中古は2.9%増

【2009年5月31日(日)】 - 4月の新築と中古の住宅販売統計が相次いで発表されたが、販売件数が微増、ないしは横ばいとなったことから、市場では住宅市場は底打ちした可能性が一段と強まったとの楽観的な見方が広がってきている。

 米商務省が28日発表した4月の新築住宅販売件数(季節調整値)は、前月比0.3%増の年率換算35万2000戸と、前月比でほぼ横ばいとなった。市場予想の36万戸をやや下回ったものの、1月に前月比12%減の32万9000戸に急落した以降は持ち直している。2-4月の月間販売件数は35万~36万戸台を3カ月連続で維持、底打ちの兆しを見せている。ただ、前年比は34.0%減と、依然、大幅悪化は続いている。

 また、もう一つの明るい材料は、4月末時点での新築住宅の売れ残り住宅在庫(着工前や建築中の住宅も含む)が着実に低下していることだ。4月の売れ残り在庫は前月比4.2%減の29万7000戸と、2001年5月以来約8年ぶりの低水準となった。

 4月の販売ペースで計算した在庫水準は10.1カ月分相当で、これは最悪だった1月の12.4カ月分以降、2月は10.8カ月分、3月は10.6カ月分と3カ月連続で低下している。しかし、住宅建築業界が容認可能な水準は6カ月分相当以下のため、エコノミストは適正水準に戻るのは来年以降と見ている。

■4月中古住宅、増勢に転じる

 一方、27日にNAR(全米不動産業協会)が発表した4月の中古住宅販売件数(一戸建てや分譲住宅、集合住宅など、季節調整値)は、前月比2.9%増の年率換算468万戸となり、市場予想の466万戸を上回った。前月の同3.4%減から増加に転じており、ここ6カ月間の販売件数の動きを見ると横ばいが続いており、中古住宅市場も底打ちの兆しが見え始めている。

 一方、中古住宅市場の供給過剰感を示す売れ残り住宅在庫は、前月比8.8%増の397万戸と、4月の販売ペースで換算して10.2カ月分(3月は9.6カ月分)に上昇、昨年11月以来5カ月ぶりの高水準となっている。過去25年間の平均値である7.1カ月分、また、適正水準とされる6-7カ月分(住宅ブームのピークだった2005年は4.5カ月分)を依然、大幅に上回っている。

 4月の新築と中古の住宅販売が伸びたのは、オバマ政権の総額7870億ドル(約75兆6000億円)の大型景気刺激策の一環として導入された新規住宅購入者に対する8000ドル(約77万円)の住宅取得税額控除(11月末まで有効)が功を奏していること、さらに、フォークロージャー(住宅不動産の差し押さえ=競売)の格安物件への旺盛な購入意欲だ。

 NARのエコノミスト、ローレンス・ヤン氏は、新規住宅購入者の比率は、4月は40%に低下したものの、これは春の住宅購入シーズンを迎える中で、買い替え需要が期待できることを意味している」と述べている。また、同氏は、「実際、住宅見学の訪問者数も前年比14%増になっており、今年下期の住宅販売は前年比10-20%増にまで回復する」と強気予想だ。

■住宅価格、依然低下傾向=格安なフォークロージャー物件の増加で

 ただ、懸念材料は、格安なフォークロージャー物件の購入増加で全体の住宅価格の下落にはまだ歯止めがかかっていないことだ。

 新築住宅価格の中央値(季節調整前)は、前年比14.9%低下の20万9700ドルとなり、前月の同11.8%低下から下げ幅が拡大した。今後数カ月は価格の低下は続く見通しだ。住宅業者は売れ残りの在庫の処分を進めるため、格安なフォークロージャー物件への対抗上、値下げせざるを得ないからだ。

 中古住宅の販売価格の中央値(季節調整前)も、前年比15.4%低下の17万0200ドルと、統計開始の1968年以降では、過去2番目の低水準となっている。NARによると、4月は格安なフォークロージャー物件が販売全体の45%も占めたため、全体の価格水準が押し下げられているとしている。

 NARのヤン氏は、格安なフォークロージャー物件の増加で、低価格帯の物件の売れ行きが好調だが、対照的に75万ドル以上の高額物件は、売れ残り在庫が40カ月相当に達しており、崩壊状態と指摘する。このため、NARでは、政府に対し高額物件の販売促進のインセンチブとして、高額住宅ローンであるジャンボローン(コンフォーミングローン上限(2007年時点で1世帯向け住宅41万7000ドル)を上回るローン)に対する適用金利の引き下げや、FRBが現在進めているMBSの買い取り支援でジャンボローンの買い取り拡大を求めている。

■リセッション脱却は今年後半か

 一部のエコノミストは、住宅価格の低下に歯止めがかからないことから、ホームエクイティローン(HELOC:住宅の正味価値(住宅価格とローン残高との差額)を限度とする住宅ローンの借り増し)にも悪影響が及び、個人消費の盛り上がりに水を差すのではないかと危惧している。

 商務省は29日、第1四半期(1-3月)GDP伸び率の改定値を発表したが、前期比年率換算-5.7%となり、市場の大方の予想の同-5.5%を下回ったものの、前回発表時の速報値の同-6.1%や昨年第4四半期(10-12月)の同-6.3%から改善した。

 最悪期は過ぎたとの見方を裏付ける形となったが、それでもまだ、高水準のマイナス成長で、2007年12月から始まった戦後以降では過去最長といわれる、今回のリセッション(景気失速)は依然、深刻な状況であることには変わりはない。

 ただ、ベン・バーナンキ米FRB(連邦準備制度理事会)議長や経済予測で権威があるNABE(全米企業エコノミスト協会)は、いずれも、今年後半にリセッションが終わると見ており、NABEも第2四半期(4-6月)は少なくとも前期よりもマイナス幅が1.8%に縮小すると予想している。

 FOMC(米連邦公開市場委員会)が21日に公表した議事録(4月28-29日開催分)では、最新の景気予測が明らかにされ、それによると、2009年のGDP伸び率は-2.0~-1.3%、2010年は+2.0~+3.0%、2011年は+3.5~+4.8%となっている。

 それでも失業率は、FOMC委員の最新の経済予測でも年末には現在の8.9%から2009年は9.2-9.6%と9%を超えると懸念している。エコノミストはもっと厳しい見方で、年末には10%に達し、来年第2四半期(4-6月)には10.7%に達すると依然、気が抜けない状況が続くと見ている。(了)

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02月04日更新

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増谷栄一(ますたに・えいいち)

増谷栄一(ますたに・えいいち)

経済ジャーナリスト。北海道生まれ。早稲田政経学部卒。
1988年ジャパンタイムズ入社、編集局記者として世界100カ国の特集記事を制作。
1992年日経国際ニュースセンター編集室総合編集部次長を経て、1996年~2000年まで
米国経済通信社ブリッジ・ニュース東京特派員として日米の政治、経済、マーケットを取材。
1998年から2年間、ニューヨーク、ワシントン支局でアメリカのマーケット、重要経済統計、米政府、
財務省、米議会などをシニア・エディターとして取材。G7財務相・中央銀行総裁会議を3度取材。
その後、米国通信社ダウ・ジョーンズ通信社のコピー・エディターを経て、2001年1月から2004年9月まで
AFX通信社(AFP通信の経済ニュース部門)東京特派員。
2004年4月から2007年3月末までライブドア・ニュース外報部チーフ。
2007年11月まで英米金融情報サービス、トムソン・ファイナンシャルの起債担当記者。
2009年2月から経済ニュースサイト「NNAヨーロッパ」の編集長としてロンドンに駐在中。

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