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米財務省、ファニーメイとフレディマックに公的資金注入へ
-財務長官、2社に最大22兆円の資本注入を保証-
【2008年9月8日(月)】 - ヘンリー・ポールソン米財務長官は7日午前(日本時間8日未明)、記者会見し、財務内容が悪化している政府系住宅金融会社のファニーメイ(米連邦住宅抵当金庫)とフレディマック(米連邦住宅貸付抵当公社)を救済するため、当面、政府の管理下に置くとともに、直ちに20億ドル(約2200億円)の公的資金を注入する、と発表した。
同長官は、会見で、救済策について、「MBS(不動産担保証券)市場の安定を図り、住宅ローンの上昇を防ぐことを目的にしている」と述べている。
また、ベン・バーナンキ米FRB(連邦準備制度理事会)議長も声明文を出し、「財務省が2社からMBSを買い取るという新制度は、クレジット市場の先行きが不透明な中で、モーゲージ市場の安定化に寄与する」として歓迎している。
●救済策は政府によるMBS買い取りや緊急融資など4本柱
救済策は、(1)2社をコンサーベイターシップ(財産管理)下に置く(2)財務省は2社が発行する新規に優先株を取得する(3)新たに2社向けの緊急融資制度を創設する(4)政府は2社が金融機関から買い取った住宅ローン債権を裏付けとして発行する資産担保証券であるMBSを買い取る-の4つの柱からなる。
コンサーベイターシップは、2社を政府の財産管理下に置くものだが、破綻した企業に対し裁判所が指名する破産管財人制度とは違い、政府の手による企業再建を目指すもので、再建後は再び民間経営に戻すというもの。
具体的には、2社の監督機関である連邦住宅金融機関(FHFA)が2社の日常業務を引き継ぐとともに、2社の資産を管理する。これは2社のバランスシートを健全な状態に回復させるための措置で、期限は定められてはいない。コンサーベイターシップの期間中は、既存の株主の議決権は停止される。
また、これに伴い、ファニーメイのダニエル・マッドCEO(最高経営責任者)とフレディマックのリチャード・サイロンCEOが辞任。新CEOに、それぞれ、TIAA-CREF(全米教職員年金・保険基金)の元会長であるハーブ・アリソン氏とUSバンコープ(USB)の元CFO(最高財務責任者)であるデービッド・モフェット氏が就任する。
●2社の普通株と優先株は紙くずにならず=財務長官
このほか、2社の普通株と優先株の株主に対する配当金支払いを停止する。これにより、毎年20億ドル(約2200億円)の節約になる見通しだ。
市場では国有化の結果、2社の普通株が紙くず同然となり、優先株や2社で計190億ドル(約2兆円)の劣後債を保有している投資家がかなりの損失を受けると懸念され、2社の株式の狼狽売りにつながっていた。
しかし、ポールソン長官は、「既存の普通株と優先株は紙くずにはならない」とし、普通株の弁済順位が劣位となり、優先株の株主の弁済順位は普通株に次いで2番目になるとしている。また、普通株と優先株は引き続き市場での売買が可能となるとしている。2社の劣後債に対する元利金支払いも引き続き行われるという。
2社は、MBS市場の安定化させるため、2009年末まではMBSのポートフォリオへの組み入れを2社合計で現行の1兆5000億ドル(約162兆円)から1兆7000億ドル(約184兆円)まで2000億ドル増やすことが許される。
しかし、2010年以降は年間10%のペースでMBS保有額を低リスクとなる2社合計で5000億ドル(約54兆円)規模まで減らすとしている。
●政府の2社の保有は80%以内=当面、20億ドルの公的資金注入
政府の優先株取得は、2社が債務超過にならないよう、2社がそれぞれ新規に発行する10億ドル(約1100億円)相当のシニア優先株を表面金利10%で直ちに取得するほか、2社のそれぞれの79.9%に相当する普通株を購入できる新株引受権(ワラント)を取得する。
シニア優先株の取得限度はそれぞれ1000億ドル(約10兆8000億円)で、ポールソン財務長官は、「この金額は、2社の債権者や2社のMBSを保有する投資家に安心感を与える」と自信を示している。一部では、最終的な2社への資本注入は2社で150億‐200億ドル(約1兆6000億‐2兆2000億円)になるという見方がある。
また、シニア優先株の配当金は年間10%とし、配当金が全額、現金で支払うことができない場合には12%に引き上げられる。財務省はシニア優先株を取得することで、2社が万が一、破たんした場合でも、弁済順位が優先されるため、納税者の負担にはならないと強調している。
新しい緊急融資制度(Government Sponsored Enterprise Credit Facility)は、限度なしに、2社が必要とする資金を有担保で融資する制度だが、融資期間は来年12月31日までの短期としている。
融資金の原資は、財務省がニューヨーク連銀に預けている政府預金から財務省が直接2社と住宅ローンの融資を行っている金融機関に低コストの資金を提供している12の連邦住宅貸付銀行(FHLB)に融資する。担保資産は、2社が発行した債務保証付きMBSとFHLBがメンバー8000行強に対して保有する貸出債権。
また、財務省は市場を通じて、2社のMBSを取得する。これにより、財務省は住宅ローンに向けられる資金を供給でき、既存の住宅所有者やこれから住宅を取得する世帯の住宅資金の調達を円滑化できるとしている。
財務省は今月後半から、2社が発行するMBSを50億ドル(約5400億円))相当購入し、満期まで保有することも可能だとしている。満期保有によって、納税者が負担を負うことは避けられると指摘している。ただ、市場の状況に応じて、ポートフォリオの見直しを行う。このため、財務省は独立した投資会社を指定するという。
●S&P、2社の優先株をジャンク級に格下げ
また、政府の発表を受けて、米信用格付け大手スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は声明文を出し、その中で、米国のソブリン債の格付け「AAA/A-1+」には影響は及ばないとの見解を示した。
また、2社の長期と短期のシニア債の格付けはそれぞれ、「AAA」と「A-1+」に据え置いたものの、優先株については、「BBB-」から「C」へと、投資不適格のジャンク級に引き下げた。
これより先、ムーディーズは8月22日に、2社の優先株の格付けをいずれも「A1」から投資不適格とされるジャンク級まであと1段階の「Baa3」へ引き下げたほか、銀行財務格付けも「B-」から「D+」に引き下げ、政府や株主(出資者)など第3者からの相当な金融支援の可能性が高まったとの判断を示した。
優先株の格下げ理由について、ムーディーズは、2社が保有する住宅ローン債権が予想以上に劣化しているため、所定の自己資本額の維持が困難となり、その結果、配当金の支払いが停止するリスクが高まったことを挙げている。
また、ムーディーズは、政府による2社への公的資金注入の結果、優先株を保有している株主への配当金支払いが停止、あるいは、支払い優先順位が劣後化した場合には、さらに格下げするとしている。
銀行財務格付けの引き下げ理由については、2社に対する政府の直接介入による救済によって、株主が保有している普通株の価値が失われるという懸念が市場に広がっているため、2社は普通株や優先株の発行を通じて、必要な資金調達が困難になっていることを挙げている。
現在、ファニーメイに対しては自己資本の15%、フレディマックに対しては自己資本の20%を資本余剰金として積み立てるよう連邦住宅金融機関(FHFA)が指導している。
6月末現在のファニーメイの自己資本は470億ドル(約5兆1000億円)だが、これに対する最低自己資本は326億ドル(約3兆5500億円、資本余剰金を含めると375億ドル)だ。また、フレディマックの自己資本は371億ドル(約4兆円)に対する最低自己資本は287億ドル(約3兆1000億円、同345億ドル)となっている。
もともと、この規制は、2社が2003年から2004年にかけて、不正会計処理問題が明るみに出た際、当時の監督機関OFHEO(連邦住宅公社監督局)から自己資本の充実策が求められ、自己資本のほかに、自己資本の30%を資本余剰金として積み立てるよう指導されていたものだ。
●株価急落の発端は米経済誌バロンズの報道
2社の株価は8月18日から始まった週の週初から急ピッチに値を下げ、20日には20%を超す大幅下落とり、その週初来の株価も、ファニーメイが39%下落、フレディマックも53%下落している。先週末(5日)、財務省が2社を統制化に置くという観測が流れ、大引け後の時間が取引で、ファニーメイの株価は終値からさらに25%、フレディマックは20%も値を下げている。いずれも昨年6月のクレジット市場危機以降では約90%も株価が下落している。
もともと、2社の株価が急落する発端となったのは米経済誌バロンズが8月18日付で、政府は今後数カ月以内に2社の優先株を取得、事実上の国有化による金融支援に乗り出すという報道だった。
しかし、同誌は、その結果、2社の普通株が紙くず同然となり、優先株や2社で計190億ドル(約2兆1000億円)の劣後債を保有している投資家もかなりの損失を受けると報じたのが株式の売りにつながっている。
問題は、政府が2社の優先株を取得した場合、2社の優先株をすでに保有している銀行や証券会社、保険会社、投資運用会社といった機関投資家が打撃を受ける可能性があることだ。その場合、一部に企業は評価損を計上する可能性があるが、2社の既存株主は多岐に渡るため、その悪影響が幅広い産業に一気に広がることを指摘するエコノミストも少なくない。
●2社、今後1-2兆円の新規資金調達の必要に迫られる
2社は昨年夏のクレジット市場危機以降、3月末までの9カ月間で合わせて118億ドル(約1兆3000億円)の損失(フレディマックは46億ドル、ファニーメイは72億ドル)を計上、その穴埋めのために、昨年12月以降、これまでに200億ドル(約2兆2000億円)の資金調達を進めてきている。
ファニーメイの時価発行総額は約65億8000万ドル(約7100億円)だが、アナリストは、今後、それを上回る50億‐100億ドル(約5400億‐1兆0800億円)の新規資金を調達しなければならないと見られている。
ファニーメイとフレディマックは、合計で、米国の住宅ローン債権(12兆ドル)の約42%に相当する5兆2000億ドル(約560兆円)を買い取り、あるいは、元利金返済の保証をしているが、2社の発表では、6月末時点での資本金は840億ドル(約9兆1000億円)で、同社が保有、あるいは債務保証している住宅ローンの1.6%にすぎない。
また、米経済誌バロンズによると、フェアバリュー(時価ベース)で、フレディマックは6月末時点で純資産はマイナス56億ドル(約6050億円)、ファニーメイも昨年末の360億ドル(約3兆9000億円)から125億ドル(約1兆3500億円)に減少しているという。
この125億ドルではファニーメイが保有、あるいは、債務保証している住宅ローン債権2兆8000億ドル(約302兆円)のエクスポージャーのリスクをカバーするには不十分となっている。
●7月の金融支援策の概要
7月13日に、ブッシュ政権が発表した、ファニーメイとフレディマックに対する金融支援策は、現在、政府が2社に対して設定している与信枠(現在は各社22億5000万ドル=約2500億円)を無制限に拡大すること、また、政府が2社の株式を取得する権限の承認を議会から得るとしている。
与信枠の具体的な上限について、政府は明らかにしていないが、長官の裁量に委ねられるとしており、事実上、上限はない。ただ、実施期間は2009年12月末までの1年半の暫定的措置となっている。
また、この2社に対する金融対策が実施された場合にかかるコストについては、CBO(米議会予算局)は7月22日に、2009-2010年の向こう2年間の同対策費が250億ドル(約2兆7000億円)になるとの試算結果を明らかにしている。
この250億ドルという試算は、今後数カ月間の住宅価格の動向が、下落が止まり安定するケースと緩やかに上昇するケース、急速に低下するケースの3つのシナリオで試算した結果の平均値となっている。
また、CBOの試算では、住宅市場と金融市場が一段と悪化し、2社の経営も一段と悪化した場合は、2社のクレジット損失がフェアバリューで、新たに1000億ドル(約10兆8000億円)増える確率は5%だとし、1000億ドルの対策費が必要になる可能性は完全には否定していない。(了)
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