増谷栄一のアメリカ経済情勢ファイル
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米上院銀行委、31兆円規模の借り換えローン保証法案を可決

―フレディマックなどの住宅ローン債権購入限度額も引き上げへ―

【2008年5月21日(水)】 - 米国の住宅市場の長期低迷の原因となっているフォークロージャー(住宅不動産の差し押さえ=競売)の増大に歯止めをかけるため、住宅ローンの返済遅延など債務不履行の恐れがある住宅所有者の借り換えを推進する法案が20日、上院の銀行住宅都市委員会で19対2の賛成多数で可決した。

 この上院案は、FHA(連邦住宅管理公団)が借り換え住宅ローンに対し、向こう3年間にわたり、最大3000億ドル(約31兆2000億円)まで返済を保証することを可能にするもの。

 これと同様の法案は、先週、下院本会議で可決されたのを受けて、上院でもここ数週間にわたり、銀行住宅都市委員会のクリストファー・ドッド委員長(民主党、コネチカット州選出)と共和党のトップであるリチャード・シェルビー議員(アラバマ州選出)が超党派で協議、19日に最終合意していた。

 今後は、6月初旬に、上院本会議で同法案が可決すれば、下院案と一本化したあと、米議会が休会に入る7月4日までに、ブッシュ大統領に送付される予定だ。

ホワイトハウスは上院案に前向きか

 当初、ドッド委員長が提案した法案では、借り換えローンの保証の実施に伴う費用(ローンが焦げ付いた場合の費用負担など)は、国民の税金を投入してFHAに「手ごろな住宅促進信託基金」(AHF)を新設、その運用利益でまかなうとしていた。

 しかし、共和党との協議で最終合意した案では、税金投入は避け、政府系住宅金融専門会社のフレディマック(米連邦住宅貸付抵当公社)とファーニーメイ(米連邦住宅抵当金庫)からの資金拠出で同基金を作ることになった。

 このため、シェルビー議員は、国民に新たな税負担を生じさせるリスクがあるとして、下院案に拒否権を行使すると宣言していたブッシュ大統領も、この上院案には賛成する見通しだと自信を示している。

 下院案は、5年間で27億ドルの税金投入となっているが、上院案では3年間で5億ドルの費用と見積もり、税金ではなくフレディマックとファニーメイが資金拠出して創設される同基金が負担するとしている。

 ホワイトハウスは19日、上院での最終合意を受けて、スコット・サンチェス報道官が記者会見し、「我々は最終合意の詳細について検討するが、議会が合意に基づいて超党派で進むことができれば、それは前進といえる」と前向きの発言をしている。

 下院は、民主党のバーニー・フランク下院金融サービス委員長(マサチューセッツ州選出)が、先月初め、政府対策では不十分として、FHAによる3000億ドルの借り換ローンに対する融資保証を実施する法案を議会に提出している。

 これは、返済能力がほとんどない世帯を含め50万世帯(当初の150万-200万世帯から縮小)を向こう5年間にわたり救済するというもので、先週の5月8日、同法案は下院を通過した。今回、可決した上院案も50万世帯が対象となっている。

 具体的な借り換えの仕組みは、まず、借り手や住宅ローン債権回収会社(モーゲージサービサー)がFHA公認の貸し手に支援を申し込み、相談を受けた新しい貸し手は借り換えローンの対象となる住宅を査定し直し、新しい資産価値を決定する。

 また、同時に、借り手が返済可能な金額も決定する。次に、既存の貸し手に対して、査定結果を受け入れるよう求め、新しい貸し手が現金で既存の貸し手にローンを代理弁済する。FHAは、新しい貸し手が組成した住宅ローン(借り換えローン)を保証するという仕組みだ。その保証料は借り手が支払う。

 この方法だと、既存の貸し手(債権者)は、住宅価格が低下している関係で、減額査定された金額で債権を回収、さらに、ローン手数料や繰り上げ償還に伴う罰則金も放棄することになる。

 一方、ブッシュ政権はすでに、4月9日に、ARM(変動金利)型住宅ローンのリセット(金利条件改定)で返済が滞り、フォークロージャーの危機に直面している借り手に対する追加救済策を発表している。

 これは昨年8月から実施しているFHAの借り換えローン促進制度「FHA Secure」の対象を拡大するもので、新規に10万世帯の救済を追加し、これまでに救済された15万世帯と合わせて、今年末までに計50万世帯に拡大するというものだ。

ファニーメイとフレディマックの住宅ローン債権購入限度を引き上げ

 また、上院銀行住宅都市委員会で可決された法案では、ファニーメイとフレディマックが購入できる住宅ローン債権の上限額を、今年初めに一時的措置として1物件あたり41万7000ドルから72万9750万ドルに引き上げられているが、55万ドルとなる見通しだ。民主党は62万5000ドルを主張したが、共和党との超党派の合意では55万ドルになっている。

 サブプライムローン問題は、ジャンボローン(コンフォーミングローン上限(2007年時点で1世帯向け住宅41万7000ドル)を上回るローン)の焦げ付きが発端となったが、今回の上院案によって、住宅ローン債権を保有する銀行から、高額の住宅ローン債権の買い取りが進展する見通しとなった。

 ファニーメイとフレディマックによるローン債権の買い取りが進めば、銀行は新規の住宅ローン融資がしやすくなることが期待される。

 米国の住宅市場は、フォークロージャーの増加によって市場に売りに出される住宅供給が増える一方で、景気後退やクレジット市場危機による住宅ローンの審査基準強化の影響で、需要が細っているため、供給(在庫)過多となっている。

 このため、先週末(16日)、米商務省が発表した4月の米住宅着工件数は、3月の同13.8%減から前月比8.2%増の年率換算103万2000戸となったが、一戸建ての悪化には依然歯止めがかっていない状況だ。

 一戸建ては前月比1.7%減の69万2000戸と、12カ月連続の減少を示し、前年比も42%減と依然、1991年1月以来17年3カ月ぶりの低水準となっている。

 主力の一戸建てが依然、低迷していることや、さらに、4月24日に発表された3月の新築住宅販売件数も前年比36.6%減と17年ぶりの低水準となっていることから、エコノミストは、少なくとも今年末までは住宅着工は下落し続けると悲観的だ。

 また、15日に発表された5月のNAHB(全米住宅建設業者協会)/ウエルズ・ファーゴ住宅建設業者指数も3カ月連続で低下、4月のフォークロージャー手続き通知件数も前年比65増と依然衰えを見せていない。

 同指数は、4月の20から19に低下、3カ月連続で低下、昨年12月の過去最低の18に近づいた。これは約5社に一社しか今後の住宅市場の改善を見込んでいないことを示す。

 また、NAHBは4月15日に、クジレット危機の長期化見通しを理由に、今年の住宅着工件数の見通しを従来予想の前年比27%減から同30%減に下方修正している。

4月のフォークロージャー件数、依然高水準

 最近のフォークロージャー動向は、米不動産調査会社リアルティトラックが14日に発表した4月のフォークロージャー手続き通知件数があるが、それによると、前年比65%増(前月比4%増)の24万3353件だ。依然、28カ月連続で前年水準を上回っており、底打ちの兆しが見えず、住宅価格の下落圧力となっている。

 これは519世帯につき1世帯の割合(全住宅の約2%)で住宅を失っていることを意味している。今年だけで100万件以上のフォークロージャーが見込まれている状況だ。

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02月04日更新

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増谷栄一(ますたに・えいいち)

増谷栄一(ますたに・えいいち)

経済ジャーナリスト。北海道生まれ。早稲田政経学部卒。
1988年ジャパンタイムズ入社、編集局記者として世界100カ国の特集記事を制作。
1992年日経国際ニュースセンター編集室総合編集部次長を経て、1996年~2000年まで
米国経済通信社ブリッジ・ニュース東京特派員として日米の政治、経済、マーケットを取材。
1998年から2年間、ニューヨーク、ワシントン支局でアメリカのマーケット、重要経済統計、米政府、
財務省、米議会などをシニア・エディターとして取材。G7財務相・中央銀行総裁会議を3度取材。
その後、米国通信社ダウ・ジョーンズ通信社のコピー・エディターを経て、2001年1月から2004年9月まで
AFX通信社(AFP通信の経済ニュース部門)東京特派員。
2004年4月から2007年3月末までライブドア・ニュース外報部チーフ。
2007年11月まで英米金融情報サービス、トムソン・ファイナンシャルの起債担当記者。
2009年2月から経済ニュースサイト「NNAヨーロッパ」の編集長としてロンドンに駐在中。

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