増谷栄一のアメリカ経済情勢ファイル
【お知らせ】「増谷栄一のアメリカ経済情勢ファイル」は6月30日で終了いたしました 。
いつも「増谷栄一のアメリカ経済情勢ファイル」をご愛読いただきまして誠にありがとうございます。当ブログは2007年5月より連載してまいりましたが、2011年6月30日(木)をもって終了いたしました。4年間にわたる皆様のご愛顧に感謝し、御礼申し上げます。

米4月CPI、伸び鈍化でインフレ懸念緩和

-景気後退が物価上昇にブレーキかける-

【2008年5月15日(木)】 - 米労働省が14日に発表した4月のCPI(消費者物価指数)は、予想以上に伸びが鈍化、これまでFRB(米連邦準備制度理事会)幹部が講演などで再三にわたり指摘してきているインフレに対するタカ派発言と食い違う内容となった。

 食品価格が前月比0.9%上昇(前年比5.1%上昇)と、18年ぶりの大幅上昇となったものの、CPI全体が弱い伸びとなったことから、市場では、最近のエネルギー価格や食品価格の急伸によるインフレ上昇圧力も景気後退の影響で封じ込まれていると見ている。

 4月のCPIは前月比(季節調整後)0.2%上昇となり、3月の0.3%上昇から伸びが鈍化、市場予想(0.3%上昇)も下回った。また、FRB(米連邦準備制度理事会)と市場が重視しているコアCPI(価格変動が激しいエネルギーと食品を除いたもの)も同0.1%上昇と、3月の0.2%上昇や市場予想(0.2%上昇)を下回った。

 対前年比では、総合指数が3.9%上昇となり、前月の4.0%上昇を下回った。コア指数も3月の2.4%上昇から2.3%上昇に伸びが鈍化した。

 また、1-4月の総合指数は年率で3%上昇となり、2007年全体の4.1%上昇を下回っている。コア指数も1-4月は年率1.8%上昇、2-4月の直近3カ月では1.2%上昇と、伸びが弱まり、2007年全体の2.4%上昇を大幅に下回っている。

エネルギー価格の横ばいには疑問符

 特に、今回、サプライズだったのは、エネルギー価格が季節調整値で、上昇しなかったことだ。3月は前月比1.9%上昇だったが、4月は横ばいとなっている。

 また、季節調整前のガソリン価格は前月比5.6%上昇となり、最近のエネルギー価格の上昇の実態に即した結果となったが、季節調整後では、逆に同2%低下となっている。

 実際、AAA(全米自動車協会)の調べによると、4月は、ガソリン小売価格が16日連続で過去最高値を記録、前月比で9-10%上昇となった。また、米国標準油種であるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)の原油先物価格も4月だけで11%も上昇している。それにもかかわらず、CPIは低下したのだ。

 これについて、エコノミストは、季節調整というテクニカルな問題だと見ている。もともと、4-5月はガソリン価格が上昇する時期なので、4月の低下は季節調整が過度に作用した結果としている。

 その上で、ガソリンの先物価格が低下していないことを考えると、5月は前月比3-5%上昇となり、CPI全体を0.1%ポイント押し上げ、それ以降も需要期の夏場にかけて上昇すると見ている。

CPIの先行きに楽観的な見方も

 他方、今後のCPIの動向に楽観的な見方もある。食品価格も5月以降、さらに上昇が急カーブを描く可能性があるものの、長続きしないと見るエコノミストは少なくない。また、CPIの伸び率が3カ月連続で加速していないことは、FRB幹部が相次いでインフレリスクを示しているのと矛盾すると見る向きもある。

 食品やエネルギーの価格が急騰しているものの、景気後退局面にあるため、多くの企業は製品やサービスに価格転嫁できない状況にあるため、今後数カ月で、全ての物価が均等に上昇してくるのは困難と見ているからだ。

 FRB幹部の中でも、ミネアポリス地区連銀のゲーリー・スターン総裁はこれに近い考えだ。インフレに対するタカ派のダラス地区連銀のリチャード・フィッシャー総裁やカンザスシティ地区連銀のトーマス・ホーニグ総裁、サンフランシスコ地区連銀のジャネット・イエレン総裁らとは違い、インフレリスクについては楽観的だ。

 スターン総裁は13日付のウォールストリート・ジャーナルとのインタビュー記事の中で、エネルギーや食品価格の上昇でCPIが上昇すれば、実質の個人所得が伸びないため、需要が抑制され、その結果、他の物価の上昇が抑制されると述べており、4月のコアCPIの前月比0.1%上昇はそれを良く示している。

CPI発表受け、金利先物市場は6月利下げ確率をやや高める

 FRBの政策金利の先行きを占う金利先物市場では、4月のCPIが弱い内容だったことを受けて、CBT(シカゴ商品取引所)のFF金利7月物は、6月24-25日に開かれるFOMCで、政策金利が現行の2%から1.75%に下がる確率を発表前の6%から8%に高めた。

 また、11月物も10月28-29日のFOMCで、逆に2.25%に利上げされる確率を発表前の68%から56%に引き下げている。

 しかし、金利先物市場では、FRBはインフレよりもクレジット市場危機を重視、金融市場の混乱が続く間は、利上げはしないとの見方も強く、年内は金利据え置きが続くと予想している。他方、インフレリスクを重視する向きは、年内の利上げを織り込む。

 結局、この日の11月物は、10月の利上げ確率を、13日の50%や12日の16%から、60%に引き上げている。

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02月04日更新

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増谷栄一(ますたに・えいいち)

増谷栄一(ますたに・えいいち)

経済ジャーナリスト。北海道生まれ。早稲田政経学部卒。
1988年ジャパンタイムズ入社、編集局記者として世界100カ国の特集記事を制作。
1992年日経国際ニュースセンター編集室総合編集部次長を経て、1996年~2000年まで
米国経済通信社ブリッジ・ニュース東京特派員として日米の政治、経済、マーケットを取材。
1998年から2年間、ニューヨーク、ワシントン支局でアメリカのマーケット、重要経済統計、米政府、
財務省、米議会などをシニア・エディターとして取材。G7財務相・中央銀行総裁会議を3度取材。
その後、米国通信社ダウ・ジョーンズ通信社のコピー・エディターを経て、2001年1月から2004年9月まで
AFX通信社(AFP通信の経済ニュース部門)東京特派員。
2004年4月から2007年3月末までライブドア・ニュース外報部チーフ。
2007年11月まで英米金融情報サービス、トムソン・ファイナンシャルの起債担当記者。
2009年2月から経済ニュースサイト「NNAヨーロッパ」の編集長としてロンドンに駐在中。

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