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債券アービトラージの誤算(股裂きショック)
今年の3月、英ヘッジファンド・エンデバーキャピタルは日本国債(JGB)のスプレッド取引の一つである「ボックストレード」により、資産価値の4分の1以上を失う多額の損失を計上した。
今回はこの「ボックストレード」とはどういうトレードなのかを中心に、エンデバーキャピタルに代表される債券アービトラージ(注1)戦略のヘッジファンドが実際どのように損失を出したのか?またその時のマーケットのインパクトがいかほどで、その後どのように動いているのか?を簡単に整理してみたいと思う。
では、まずこの「ボックストレード」とはどういうトレードなのだろうか?
ボックストレードは、債券アービトラージでは非常にポピュラーなトレードの一つであり、多くの外国人トレーダーが好んで使ってきたものである。JGBのボックストレードのほとんどは外国人(ヘッジファンドがほとんど?)ではないかと言われている。
ポジションの基本は、同じ年限の①JGBの買いとスワップの払い(スワップスプレッドのロング)と別の年限の②JGBの売りとスワップの受け(スワップスプレッドのショート)をボックスで組み合わせる。エンデバーキャピタルのポジションは、20年のスワップスプレッドのロングと7年のスワップスプレッドのショートで多額の損失を出したと発表されている。
年限の組み合わせはトレーダーの相場観により構築されるが、外国人(ヘッジファンドがほとんど?)が日銀の量的緩和政策以降好んで作ってきたポジションは、20年、30年の超長期ゾーンのスワップスプレッドのロングとJGB先物が使える7年ゾーンのスワップスプレッドのショートである。
外国人は超長期のJGBが割安(年限が長く買い手が少ない等さまざまな理由による)との観点から、このようなポジションを好み、収益を上げてきたが、その積みあがったポジションが今回のリスクリダクションの流れのなか(2008年3月17日周辺がピーク)で、一斉にポジション解消 → "股裂き" → 多額損失 という現象を引き起こしたのである。
言わずもがな、3月17日周辺はベアスタ破綻のニュースなどで、一番マーケットの信用不安が高まった時期である。
"股裂き": トレーダー間の俗語で、株の場合は、ロングの株が下落しショートの株が上昇し、ダブルでやられてしまうこと。本来相場がどちらに動いても、合算した損益がプラスになるのが理想だが、ロングショートのポジションが一斉に解消されるとこの現象が起こる。
運用資産28.8億ドルで18倍程度のレバレッジをかけたエンデバーキャピタルの「ボックストレード」のポジションが一斉に(?)解消されたとすれば、これくらいのインパクトになるのかもしれない。もちろんこの動きを見て自分のポジションを一斉に解消したファンドも少なくないであろうが。
現在、この7年20年のスプレッドはサブプライムショック(2007年8月ごろ)以降の水準であるマイナス15bp程度にまで収まってきているが、この水準が適正なのかどうかは議論を要するところである。
債券アービトラージ(レラティブバリュー)の戦略はボックストレード以外にも山ほどトレードタイプがあるのだが、多くのポジションが一つのトレードタイプに集中すると股裂きの危険が高まっていく(知らない間に)ことが今回の教訓として残るであろう。
注1)債券アービトラージ: 類似した債券で過小評価された方を買い建て、過大評価された方を売り建てて、これらの価格が合理的な水準に戻ったところで、それぞれの決済を同時に行って差額の利益を獲得する投資戦略のこと。
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