外資系企業の呼び込みに使うべき政府の資金拠出
3月10日付の日本経済新聞一面には、「有力外資 相次ぎ日本撤退」という印象的な見出しの記事が掲載されています。また、少し小さな見出しですが、「先端研究助成 1000億円の配分公表」という見出しの記事も掲載されています。
「有力外資 相次ぎ日本撤退」の記事には、日本での生産や販売から撤退した外資系企業の例が数多く紹介されています。たとえば、タイヤ生産大手の仏ミシュランは、7月に太田工場を閉鎖するそうです。また韓国の現代自動車の日本法人は、日本での乗用車の新車販売を中止しています。
一方、「先端研究助成 1000億円の配分公表」の記事では、1000億円の先端研究助成基金について30人の研究者に配分する金額が公表されたことが報じられています。新型万能細胞(iPS細胞)で有名な山中教授らに50億円が配分されたほか、ノーベル化学賞を受賞した田中氏には34億円が配分されたそうです。
先端研究助成基金は、麻生政権時代に発足したもので、現政権になってから、当初の半額規模で2009年度補正予算に盛り込まれたものです。「基金」の名前がついていますが、これは使い切れなかった費用を翌年度以降に繰り越すことを可能にするために「基金」というハコを用意しているだけで、仕組みの本質は政府が研究者に助成金を支払うことといえます。
1000億円の助成金と聞くと、それなりにすごい規模のように思えますが、先にご紹介した外資系企業の撤退のほうが金額インパクトは大きいです。たとえば、太田工場を閉鎖する仏ミシュランは、約760億円をかけてインド南部に工場を建設します。また現代自動車は、約704億円をかけて北京に工場を新設する予定です。この2つだけで1400億円の資金が投じられることになります。
外資系企業にとっては、人口減少を背景に低成長に甘んじる日本よりも、インドや中国といった成長が期待できる新興国に資金を投じた方が効果的と判断するのは自然のことです。しかし、単に自然のままに任せていたら、日本経済は、ますます弱体化します。
おそらく先端研究助成基金は、日本経済の弱体化を防ぐべく、先端研究を活性化させることを目的に設立されたのでしょう。しかし残念ながら、政府が多額の資金を投じたとしても、世界各国の企業が投ずる資金規模には勝てません。
国・地方の長期債務残高がGDP比171%(825兆円)まで拡大していることを考えたら、より効果の高いことに資金を投ずる姿勢が求められます。一般的に政府は、民間企業に比べ業務効率が低いと言われています。政府は、自らが資金を拠出するよりも、世界各国の企業が日本に資金を投じたくなるよう環境整備や規制緩和に資金を投じることにもっと注意を払うべきだと思います。
村田雅志(むらた・まさし)
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171%(825兆円)
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