下がることは考えにくい流通・サービス業の人材定着率
2月1日の日本経済新聞は、流通・サービス業で人材の定着傾向が強まってきたと報じています。すかいらーく、セントラル警備保障、ヤマダ電機といった業界大手企業では、離職率が大幅に下がり、2010年春以降の採用を絞り込む動きも広がっているようです。
記事によると、外食大手すかいらーくでは、これまで10%を超えていた入社1年目の正社員の離職率が、09年春の採用者については数%程度にとどまる見通しで、これにより10年春の採用者数は09年春の150人から60人に減らす予定です。また、セントラル警備保障、介護サービス最大手のニチイ学館、スーパーのイトーヨーカ堂、家電量販店最大手のヤマダ電機などでも離職率が下がっているようです。
記事では、流通・サービス業で人材の定着傾向が強まってきた背景として景気低迷をあげています。一般的に流通・サービス業の多くは、給与水準が比較的低く、肉体的・精神的な負担も大きいとされています。このため、流通・サービス業の人材定着率は低かったわけですが、景気低迷によって就業機会が減っており、流通・サービス業の就業者が仕事を辞めずに続けている、というふうに記事は構成されています。
一昨年後半から、製造業の雇用吸収力が低下しているので、流通・サービス業の就業者が、たとえ転職したとしても、前と同じ流通・サービス業で仕事をすることもあるでしょうし、転職を思いとどまることもあるでしょう。そうした結果、流通・サービス業の定着率が高まった可能性があります。
しかし、製造業の雇用吸収力が低下したのは、景気低迷のためだけ、とはいえない気がします。世界全体で考えた場合、製造業の労働コストは、新興国の出現によって劇的に低下しており、日本は劣勢にたたされています。また、ドル安・円高の進展もありますので、日本の製造業は景気の状況にかかわらず、労働コストを下げるべく、生産拠点を海外に移す動きを進めるでしょう。つまり景気が回復したとしても、製造業で就業する機会が減少しているため、労働者が流通・サービス業のから製造業に移転する可能性も低くなり、結果として、流通・サービス業の人材定着率が、以前のように低くなることはなくなると思われます。
なお、記事では、流通・サービス業の人材定着率が高くなることで、流通・サービス業の人材採用意欲が低下し、失業者が増加する恐れがある、とありますが、これは誤りでしょう。仮に流通・サービス業の人材採用意欲が低下した場合、新規に採用される労働者は減少しても、人材が定着しているため失業者数に変化は生じません。
村田雅志(むらた・まさし)
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労働コストを下げるため
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