村田雅志のKlugView グローバル投資のポイント

実感なき景気回復を示した12月調査の日銀短観

12月14日に発表された12月調査の企業短期経済観測調査(日銀短観)によると、企業の景況感を示す業況判断DIは、大企業製造業でマイナス24と、市場予想(マイナス27)を上回り、3四半期連続の改善となりました。今回の調査は、ドル円が一時84円台をつけた直後でしたが、自動車や電機などの輸出産業の業況判断DIが大きく改善しており、ドル円下落の影響は限定的といえそうです。

意外だったのは、雇用の過剰感を示す雇用人員判断DIが、全規模・全産業で低下した(雇用過剰感が少なくなった)ことです。マスコミでは、日本の雇用環境が厳しいかのように報じられることが多いですが、10月の完全失業率が5.1%と、9月に比べて低下するなど、マスコミ報道とは逆に、雇用環境は改善傾向にあるといえます。

日銀短観の業況判断DIは、景気との連動性が強いこともあり、今回の結果から、日本景気は回復基調を続けている、と判断してよさそうです。来年3月時点の景況感予想を示すとされる業況判断DIの先行き予想は、製造業、非製造業ともに改善を示しているので、よほどの外的ショックがない限り、企業の景況感が3カ月後に悪化することはないでしょうし、ひいては日本景気も悪化に転ずる可能性は低いといえます。

ただ、日本景気が回復過程を続けるとしても、それをもって日本のGDP成長率が高まることを意味するわけではありません。おそらく、今後の日本景気は、景況感が改善したとしても改善ペースは緩やかなものである可能性が高まっているからです。

成長率が高まらない最大の理由は、企業の設備投資が昨年度に比べ減少する可能性が高まっているからです。日銀短観の設備投資計画によると、今年度の大企業・製造業の設備投資計画は、前年度実績比28.2%減と、現行の調査方式を採用した73年度以降、最大の減少率を記録しています。今後、設備投資計画が上方修正される可能性があるとはいえ、設備投資が2割以上も削減されれば、GDP成長率が低迷するのは避けられません。

雇用環境の悪化に歯止めがかかったとはいえ、個人消費が拡大基調を続けるとは期待できません。雇用人員判断DIが改善したとはいえ、雇用者数は全産業・全規模で1%以上のマイナスになっているほか、新卒採用計画は来年度(2010年度)2割以上のマイナスとなっています。雇用者数が減少する以上、個人消費が拡大すると期待するのは難しいです。

おそらく、こうした見方は、市場関係者の間では共通だと思われます。日銀短観は改善しているが、回復の実感はさほどない、というのが、今回の結果のまとめとなるでしょうし、しばらくは、それが続くと思われます。


村田雅志(むらた・まさし)

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03月05日更新

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村田雅志(むらた・まさし)

FXCMジャパン チーフエコノミスト 兼 営業部長
三和総合研究所、三和銀行にて産業機械アナリスト、UFJ総合研究所にてエコノミストとして活動後、
2004年にGCIアセットマネジメント入社。05年9月にGCIキャピタル・チーフエコノミスト。
09年4月より専修大学客員教授。09年6月より現職。
東京工業大学生命理工学研究科修士課程修了、Columbia University Master of International Affairs修了、政策研究大学院大学博士課程単位取得退学。
著書に「景気予測から始める株式投資入門」、「絶対リターンを目指すオルタナティブ投資」、「一冊まるごと投資商品超入門」、「実質ハイパーインフレが日本を襲う」など

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