村田雅志のKlugView グローバル投資のポイント

インフレを示唆しない金価格の上昇

10月6日のNY商品取引所では、金先物価格が、一時、1オンス1,045ドルと、1年7ヶ月ぶりに史上最高値を更新しました。オーストラリアの予想外の利上げや、中東産油国のドル離れ検討報道がドル安を進め、金価格を押し上げたようです。

金価格は、インフレ指標の代表例とされていることもあり、今後、世界経済もインフレに向かう、という見方があるようです。米国や日本、ユーロなど先進各国が金融緩和策を続けていることも、こうした見方に説得力を与えているようです。

インフレが進むのであれば、近いうちに先進各国の金融緩和策が終了する、いわゆる出口戦略が議論される、という指摘もあります。現在の金融緩和策は、過去に例のない異例の内容となっており、貨幣の信認が揺らぎつつある、という危機感も市場関係者の間で共有されつつあるからでしょう。

ただ、こうした見方は、合理的なように見える一方で、現実は、インフレとは逆の状況に思えます。たとえば米国の場合、金融緩和策で流動性の高いM1の伸びは加速しているものの、リスクマネーも対象に含まれるM2の伸びは、むしろ鈍化しています。米10年債利回りも、一時は4%近くまで上昇しましたが、その後、低下傾向で推移しており、足元では3.2%台と、5月20日以来の水準まで低下しています。

非常にラフな議論ではありますが、インフレとは、貨幣供給が財・サービスの供給に比べ過大となった時に生じます。ただ、気をつけなければいけないことは、インフレを議論する際に用いられる「貨幣供給」とは、中央銀行が発行する貨幣の量ではなく、市中に流通する貨幣の量を意味します。

米国のM2の伸びが鈍化し、10年債利回りが低下するのは、米国経済全体が、所有する資産を貯蓄する傾向を強めている結果といえます。貯蓄が増えれば、市中に流通する貨幣の量は減ります。

米国の貯蓄率の上昇は、経常赤字の縮小を通じ、日本やドイツ、中国の輸出拡大を阻み、結果として景気を下押しします。このような展開となれば、世界経済でインフレが進む、というよりも、むしろ逆にデフレ気味になる、と考えたほうが自然に思えます。

金価格の上昇は、将来のインフレを示唆したもの、というよりも、ドルという貨幣の価値低下を示しているものと考えたほうが良い気がしています。


村田雅志(むらた・まさし)

●●●●●●●●●●今日のクイズ●●●●●●●●●●

米10年債利回りが3.2%台に。
これっていつ以来のこと?

●●●●●●●●●●クイズの答え●●●●●●●●●●

5月20日以来

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村田雅志(むらた・まさし)

FXCMジャパン チーフエコノミスト 兼 営業部長
三和総合研究所、三和銀行にて産業機械アナリスト、UFJ総合研究所にてエコノミストとして活動後、
2004年にGCIアセットマネジメント入社。05年9月にGCIキャピタル・チーフエコノミスト。
09年4月より専修大学客員教授。09年6月より現職。
東京工業大学生命理工学研究科修士課程修了、Columbia University Master of International Affairs修了、政策研究大学院大学博士課程単位取得退学。
著書に「景気予測から始める株式投資入門」、「絶対リターンを目指すオルタナティブ投資」、「一冊まるごと投資商品超入門」、「実質ハイパーインフレが日本を襲う」など

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