村田雅志のKlugView グローバル投資のポイント

ネット証券の手数料引き下げ競争が終焉を迎える時とは

7月22日付のフジサンケイ・ビジネスアイは、インターネット専業のSBI証券と楽天証券が、激しい競争をしていると報じています。7月13日から21日までの約1週間、両社は計6回も手数料の引き下げをしています。

手数料の引き下げを始めたのは、楽天証券でした。同社は7月13日に、1回の約定代金が10万円までの現物株取引の手数料を、SBI証券よりも2円安い198円にすると発表しました。すると、SBI証券は、同じ日の夕方、すべての取引金額で値下げを発表します。

月15日、楽天証券は、値下げ幅を見直し、SBI証券と同額にします。しかし、翌日(16日)、SBI証券は、再値下げを発表します。楽天証券が値下げを発表すると、SBI証券が必ず追随する図式です。

その翌日(17日)、楽天証券は、再度、値下げ幅を見直し、再びSBI証券と同額にします。しかしSBI証券は、連休明けの21日に、10万円以下の取引の手数料を147円にするなど、正規手数料を最大26.5%引き下げ、すべての取引で楽天よりも安い手数料を提示します。

SBI証券が、ここまで執拗に楽天証券よりも安い手数料を提示するのは、「手数料・最安値」というブランドを手放すと、ネット証券でのトップの地位を失うと判断したと思われます。ネット証券は、既存証券と比べ、ネットゆえに手数料が安いことをPRし、個人投資家層の支持を集めてきました。投資家からの支持の源泉が「手数料・最安値」である以上、SBI証券は、なにがなんでも、「手数料・最安値」というブランドを守る必要があるわけです。

しかし、いくらブランドが必要とはいえ、採算性を無視してまでブランドを維持しようとすると、いずれ企業は存続が難しくなります。SBI証券と楽天証券が、相互に対抗して、手数料を何度でも値下げするう事態になれば、いずれは両社とも採算性が悪化し、共倒れの危険性も高まります。

どんな業界であれ、収益を減らしてまでシェアを取りに行く戦略は、市場規模が拡大することが前提となります。日本の場合、家計が保有する金融資産のうち、現預金が占める割合が高いですが、少子高齢化が進んでいる以上、積み上げた現預金は、投資にシフトされるだけでなく、消費に回る可能性もあります。つまり、ネット証券業界の市場規模は、以前ほどのペースで拡大しない可能性があります。

あくまで個人的な邪推でしかありませんが、ネット証券による手数料値下げ競争が行き着くところまで達すると、ネット証券業界では、M&A競争が激しくなるような気がしています。手数料引き下げ競争で収益性を低下させるくらいなら、他社を自社の傘下に入れ、競争相手の数を減らすほうが合理的に思えるからです。

ネット証券の場合、オーナー色が強い企業が多く、経済合理性だけで物事が進むわけではないでしょうが、オーナー同士が経済合理性に目覚めれば、物事が進むスピード速くなる可能性が高まります。我々が、ネット証券でのM&A競争を目にしたとき、ネット証券の手数料がさらに引き下げられることは、少なくなると考えたほうが良い気がします。


村田雅志(むらた・まさし)

●●●●●●●●●●今日のクイズ●●●●●●●●●●

楽天証券が手数料の引き下げを始めたのはいつ?

●●●●●●●●●●クイズの答え●●●●●●●●●●

7月13日

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村田雅志(むらた・まさし)

FXCMジャパン チーフエコノミスト 兼 営業部長
三和総合研究所、三和銀行にて産業機械アナリスト、UFJ総合研究所にてエコノミストとして活動後、
2004年にGCIアセットマネジメント入社。05年9月にGCIキャピタル・チーフエコノミスト。
09年4月より専修大学客員教授。09年6月より現職。
東京工業大学生命理工学研究科修士課程修了、Columbia University Master of International Affairs修了、政策研究大学院大学博士課程単位取得退学。
著書に「景気予測から始める株式投資入門」、「絶対リターンを目指すオルタナティブ投資」、「一冊まるごと投資商品超入門」、「実質ハイパーインフレが日本を襲う」など

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