村田雅志のKlugView グローバル投資のポイント

景気対策の大規模化も考えられる中国経済の現状

中国の中央銀行である中国人民銀行が16日に実施した1年物と3カ月物証券のオペは、利回りが今年最高水準となりました。中国人民銀行が発表した資料によると、1年物証券、3カ月物証券ともに、利回りが1週間前から0.1程度上昇しています。

中国人民銀行のオペで利回りが上昇していることから、市場関係者の間では、中国当局が金融引き締めに動きつつあるのでは?との見方が強まっています。中国の銀行による新規融資額(6月)は、1兆5300億元(約20.8兆円)と、前年同月のほぼ5倍に達しています。各種報道によると、中国当局は、急拡大している融資の多くは、不動産や株式といった資産に流入しており、資産価格の上昇(いわゆるバブル)を招いていると懸念しているようです。

そもそも中国の銀行が融資を拡大させているのは、昨年11月に中国政府が4兆元の景気対策を打ち出した際に、銀行融資を拡大させる方針を示したためといわれています。銀行としては、政府の方針に従ったまでと言いたいでしょうし、政府としては、まさかここまで急ピッチに拡大するとは思わなかった、といったところでしょうか。

今年4-6月期の中国の実質GDP成長率は、前年同期比7.9%増と、前期(1-3月期)の成長率(6.1%増)を大きく上回りました。中国の成長率が前期を上回ったのは2007年4-6月期以来、2年ぶりのことです。成長率も、ようやく上向き始めたことも考えると、中国当局が、様子をみながらも、金融政策を引き締め方向に舵を変える可能性は高まったといえなくはありません。

ただ、6月の中国の消費者物価指数は、前年同月比1.7%の下落と、5カ月連続のマイナスとなり、下落率は、1999年6月(同2.1%)以来、10年ぶりの大きさとなっています。また、6月の工業品出荷価格(卸売物価に相当)も、同比7.8%の下落と、7カ月連続のマイナスとなり、下落率は統計データをさかのぼることができる1990年代半ば以降で最大です。

一般に物価が下がることは、需要が供給に比べて弱いことを示します。中国の成長率は、以前に比べれば高まったのでしょうが、物価がここまで下がっている以上、景気が力強く拡大しているといえません。むしろ、中国政府が大規模な景気対策をしているにもかかわらず、物価が下がっているわけですから、中国景気は成長率で示されるほど良い状態といえません。

今後、中国当局は、2つの選択肢があります。一つは、市場関係者が考えるように、成長率の様子を見ながらも、金融引き締め策を徐々に強めることです。物価が下がるくらい需要が弱いわけですから、このまま金融緩和策を続けても、拡大したマネーは実体経済に流入せず、不動産などの資産に流れるだけです。資産バブルをこれ以上進めないためにも、緩やかながらも金融を引き締めるのは自然といえます。

ただ、中国当局には、もう一つの選択肢があります。それは、物価が下がるくらい需要が弱いのなら、景気対策の規模をさらに大型化し、金融緩和策も続けることです。中国政府は、すでに4兆元の景気対策を発表しているため、景気対策の規模をさらに大きくすることを疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、中国には2兆ドルを超える外貨準備があります。中国にとって、ここまで拡大した外貨準備を保有し続けることは、ドル下落リスクを抱え続けることになります。このリスクを低下させるためにも、外貨準備を使って景気対策を強化することは、金融引き締めを検討するのと同じくらい自然なことのように思えます。


村田雅志(むらた・まさし)


●●●●●●●●●●今日のクイズ●●●●●●●●●●

09年6月の中国の消費者物価はどれくらい下落した?

●●●●●●●●●●クイズの答え●●●●●●●●●●

前年同月比1.7%の下落
(1999年6月(同2.1%)以来、10年ぶりの大きさ)

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村田雅志(むらた・まさし)

FXCMジャパン チーフエコノミスト 兼 営業部長
三和総合研究所、三和銀行にて産業機械アナリスト、UFJ総合研究所にてエコノミストとして活動後、
2004年にGCIアセットマネジメント入社。05年9月にGCIキャピタル・チーフエコノミスト。
09年4月より専修大学客員教授。09年6月より現職。
東京工業大学生命理工学研究科修士課程修了、Columbia University Master of International Affairs修了、政策研究大学院大学博士課程単位取得退学。
著書に「景気予測から始める株式投資入門」、「絶対リターンを目指すオルタナティブ投資」、「一冊まるごと投資商品超入門」、「実質ハイパーインフレが日本を襲う」など

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