村田雅志のKlugView グローバル投資のポイント

夏場以降も続くと思えない日本の増産ペース

昨日(5月29日)発表された4月の鉱工業生産の結果から、景気の先行きに対して前向きな見方が出ているようです。4月の鉱工業生産指数は、前月比5.2%の上昇と、2ヶ月連続の上昇となったほか、1953年3月の7.9%に次ぐ、過去2番目に大きな上昇率を示しました。また同時に発表された製造工業生産予測調査によると、5月が前月比8.8%の上昇、6月は同2.7%の上昇が見込まれています。

鉱工業生産指数を発表する経済産業省は、4月の結果をもとに、鉱工業生産の基調判断を「総じてみれば、生産は持ち直しの動きが見られる」とし、先月までの「停滞している」という判断から上昇修正しています。

鉱工業生産は景気との連動性が強いことから、鉱工業生産の改善は、景気の改善を意味すると考えられています。このことから、本日(5月30日)の新聞報道の中には、日本景気の先行き期待を高めるかのような論調の記事が掲載されています。

4月の鉱工業生産が非常に高い上昇率を示したほか、5月、6月の生産予測調査も、堅調な結果となったことから、おそらく4-6月期の鉱工業生産は、前期(1-3月期)と比べ大きく上昇する結果になるのでしょう。また、これにより、1-3月期に前期比(年率)15.2%もの落ち込みを示した実質GDPも、4-6月期には大きく拡大する結果になると思われます。

ただ、だからといって、このまま日本の景気が、夏(7月)以降も拡大を続け、いわゆるV字回復を遂げるとは思えません。4月の鉱工業生産の好結果は、昨年10月から始まった急激な在庫調整の反動によるものと思われるほか、日本の輸出先である欧米の最終需要が7月以降も増加を続けるとは考えにくいからです。

4月の鉱工業生産を業種別にみると、大きく上昇したのが、電子部品・デバイス工業(前月比15.7%増)でした。電子部品業界では、昨年10月以降の世界的な景気後退を背景に、過去に類を見ないペースで在庫調整が進められました。しかし、今年3月から、ノートPCやネットブック、携帯端末の需要が少しずつ戻ったことから、セットメーカーを中心に電子部品の在庫不足が鮮明となり、セットメーカーは、あわてて電子部品の確保に走りました。これが日本の電子部品・デバイス工業の生産増につながりました。

しかし、米国では失業率が4月に8.9%を記録し、今後も上昇することが見込まれるなど、雇用環境は非常に厳しい状況です。住宅価格の下げ止まりの兆しもみられないことから、米国の個人消費が、今年中に大きく増加に転じることは考えにくい状況です。

世界最大の消費地である米国にて消費が拡大しない以上、PC等の需要の回復は、続いたとしても小幅と考えるほうが無難です。先ほどご紹介したように、セットメーカーが春先に電子部品の確保の動きを強めたとはいえ、製品需要の拡大が(せいぜい)小幅であるならば、部品の在庫確保がある程度進んだ後は、仕入れを強めることはないしょう。この結果、日本の電子部品・デバイス工業の生産増も止まることになります。

この考えが外れるとすれば、欧米景気のもたつきを上回るほど、新興国需要、とくに中国の需要が拡大する場合でしょう。実際、4月の鉱工業生産指数をみると、石油化学では、家電に使われる樹脂の原料となるエチレンの生産が拡大しています。こうした家電需要の多くは中国向けといわれています。

しかし、中国経済が高成長を続けてきた背景には、先進国にて中国製品が普及拡大を続けてきた点にあります。先進国の消費が弱い以上、たとえ安価であっても中国製品の普及が、これまでと同じペースで進むとは考えにくい気がします。中国がいずれ大きな消費市場になるとは思われるものの、現時点で、中国国内の消費が、先進国への輸出減を補うほど拡大すると考えるのは、やや楽観的なものと思われます。

村田雅志(むらた・まさし)


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03月12日更新

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村田雅志(むらた・まさし)

FXCMジャパン チーフエコノミスト 兼 営業部長
三和総合研究所、三和銀行にて産業機械アナリスト、UFJ総合研究所にてエコノミストとして活動後、
2004年にGCIアセットマネジメント入社。05年9月にGCIキャピタル・チーフエコノミスト。
09年4月より専修大学客員教授。09年6月より現職。
東京工業大学生命理工学研究科修士課程修了、Columbia University Master of International Affairs修了、政策研究大学院大学博士課程単位取得退学。
著書に「景気予測から始める株式投資入門」、「絶対リターンを目指すオルタナティブ投資」、「一冊まるごと投資商品超入門」、「実質ハイパーインフレが日本を襲う」など

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