村田雅志のKlugView グローバル投資のポイント

楽観的とすら言える日本政府の成長率見通し

4月27日、政府は、今年度(2009年度)の国内総生産(GDP)成長率見通しを実質マイナス3.3%としました。昨年12月に発表された成長率見通しは、実質ゼロでしたので、大きく下方修正されたことになります。また昨年度の成長率見通しも、実質マイナス0.8%から同3.1%に下方修正されています。仮に政府見通しの通りとなれば、経済成長率が二年連続マイナスとなり、しかも二年とも成長率が戦後最悪水準のマイナスとなります。

政府は、政府見通しを発表した同じ日に追加経済対策を裏付ける09年度補正予算案を国会に提出しています。補正予算の歳出規模は、過去最大の13.9兆円となり、補正予算案と当初予算を合わせた09年度の一般会計総額は102.5兆円にもなります。これだけ巨額の財政支出を計画するにもかかわらず、昨年度だけでなく今年度(09年度)も成長率が3%以上のマイナスになることに違和感をもたれる方も多いかもしれません。

ただ、昨年度のGDPの推移を見ると、今年度の成長率見通しは、それほど不自然なものとはいえません。やや細かいことですが、昨年度の経済成長率が、年度後半に急速に悪化したために、今年度の経済成長率は、マイナスの「ゲタ」を履いており、これが今年度の経済成長率を引き下げているからです。

ゲタとは、ある一定期間の平均値に対する一定期間の最後の水準の伸び率です。たとえば、昨年度の平均値が100で、昨年度末の値が70の場合、ゲタはマイナス30%(=70%-100%)となります。ただ、こうした考え方はわかりにくいので、新聞などでは、ゲタのことを「発射台」と表現したり、「当初から水準が変わらなかった場合の伸び率」などと表現することもあります。簡単に書けば、ゲタがマイナスのときは、その後の伸び率は低めになりやすい、ということです。

報道によると、今年度の成長率のゲタは、マイナス4%台を見込んでいるそうです。5月20日に発表される今年1-3月期の実質GDP成長率によりますが、エコノミストの予想などを見る限り、ゲタに関して政府の見通しに大きな狂いは起きないでしょう。

ゲタがマイナスの4%台ということは、仮に今年度の実質GDPがずっと横ばいで推移すると、今年度の成長率はマイナス4%台となります。言い換えれば、政府の今年度の見通しがマイナス3.3%ということは、今年度の実質GDPは、3月末より増える、つまり政府は、表面的な成長率はマイナスだが、実質的な意味ではプラス成長する見通しを示したといえます。

ただ、この見通しにはカラクリもあります。政府の見通しでは、前提として、追加経済対策が実施され、その効果で成長率は1.9%押し上げられることになっています。言い換えれば、追加経済対策がなければ、今年度の成長率は5%以上のマイナスとなり、ゲタの効果(マイナス4%台)を考慮しても、日本は、実質的な意味でマイナス成長になってしまうことを暗に示しているのです。

政府見通しが二年連続のマイナスであることから、日本経済の先行きが暗い、という悲観的な論調が出ているようです。ただ、政府の見通しは、追加経済対策の実施という条件付きとはいえ、経済が回復軌道に戻ることを示しています。つまり、政府見通しは、悲観的な内容ではなく、むしろ楽観的なものと言えるのです。


村田雅志(むらた・まさし)

●●●●●●●●●●今日のクイズ●●●●●●●●●●

成長率の「ゲタ」ってどういう意味?

●●●●●●●●●●クイズの答え●●●●●●●●●●

ある一定期間の平均値に対する一定期間の最後の水準の伸び率。
新聞などでは、ゲタのことを「発射台」と表現したり、
「当初から水準が変わらなかった場合の伸び率」などと表現することもある。


社会起業家に関するトピック、事例を豊富に紹介するメルマガが登場!
『ソシアレ』~社会起業家的な新しい働き方のスタイル

謎に包まれた政府系ファンド。またの名をSWF。
政府系ファンドの実態を徹底的に解説した良書がいよいよ登場!
政府系ファンド 巨大マネーの真実(日本経済新聞出版)

KlugView PodCast

本コンテンツ「グローバル投資のポイント」をポッドキャストでもご利用いただけます

サイトで聴く(要Windows Media Player

プレイボタンを押すとPC上にてコンテンツを聴くことができます。

iTunesで聴く

iTunesで聴く

このバナーをクリックするとiTunesが立ち上がります。
登録することで新しいコンテンツが自動的に届きます。

Podcast対応ソフトで聴く

Podcast対応ソフトで聴く

このバナーをPodcast対応ソフトにドラッグ&ドロップすることで
新しいコンテンツが自動的に届きます。

オススメ情報

クルクるアンケート

03月19日更新

ギリシャ問題はこれで終わるのか





みんなの回答を見る

村田雅志(むらた・まさし)

FXCMジャパン チーフエコノミスト 兼 営業部長
三和総合研究所、三和銀行にて産業機械アナリスト、UFJ総合研究所にてエコノミストとして活動後、
2004年にGCIアセットマネジメント入社。05年9月にGCIキャピタル・チーフエコノミスト。
09年4月より専修大学客員教授。09年6月より現職。
東京工業大学生命理工学研究科修士課程修了、Columbia University Master of International Affairs修了、政策研究大学院大学博士課程単位取得退学。
著書に「景気予測から始める株式投資入門」、「絶対リターンを目指すオルタナティブ投資」、「一冊まるごと投資商品超入門」、「実質ハイパーインフレが日本を襲う」など

ページトップへ戻る