村田雅志のKlugView グローバル投資のポイント

反対が多いものの合理性があるFXレバレッジの上限規制

4月24日付の日本経済新聞は、金融庁が外国為替証拠金取引(FX)において、証拠金倍率(レバレッジ)を規制する方針を固めたと報じました。報道によれば、金融庁は、証拠金倍率(レバレッジ)の上限を20倍から30倍前後とする方向で調整するそうです。

証拠金倍率(レバレッジ)とは、FXをする投資家がFX会社や証券会社に預ける証拠金(保証金)と取引額の割合を意味します。たとえば、証拠金倍率(レバレッジ)が20倍であれば、FX投資家は預けた証拠金の20倍の規模で為替取引をすることを意味します。

日本経済新聞の報道のあとに、各種マスメディアも今回の規制について報道を(後追いで)しています。報道を見ると、その多くが、規制の理由として「投資家保護」をあげています。証拠金倍率(レバレッジ)が高ければ高いほど、FX投資家は、僅かな相場変動で大きな損失を被る可能性があります。最近では、FX会社の中には、証拠金倍率(レバレッジ)を600倍とすることも可能とする取引サービスを提供するところもあります。このまま証拠金倍率(レバレッジ)に規制をかけずに、FX会社などの自由にさせれば、いずれ証拠金倍率(レバレッジ)を1,000倍、1万倍とする会社も出現する可能性もあり、それだけFX投資家に大きな損失を被る可能性が高まることも考えられなくはありません。

しかし、証拠金倍率(レバレッジ)は、FX会社などがFX投資家に対して強制的に適用されるものではなく、FX投資家が自由に設定できるものです。600倍もの証拠金倍率(レバレッジ)を設定するFX投資家層が、一定規模存在するのは事実かもしれませんが、多くの投資家は、リスクを認識して、証拠金倍率(レバレッジ)を低めに設定するのが現実です。そもそも、投資は自己責任原則が前提となる分野ですから、リスクが高いからといって行政当局(金融庁)が、頭ごなしに証拠金倍率(レバレッジ)の上限を設定する(規制する)ことは、ロジカルな考え方とは思えません。

こうした点を指摘し、FX会社の中には、証拠金倍率(レバレッジ)の上限を規制する動きに対して、反対の意見を表明するところもあるようです。FX会社の中には、高い証拠金倍率(レバレッジ)を提供することで業績を拡大させている企業が少なからず存在しますので、理屈などはともかく、証拠金倍率(レバレッジ)の上限を規制されるのは避けたいところなのでしょう。

ただ、金融庁が証拠金倍率(レバレッジ)の上限を規制する理由は、各種メディアが報じるように、高い証拠金倍率(レバレッジ)によって多額の損失を被る可能性があるからではありません。FXならではのロスカットルールが何らかの理由で正確に機能せず、高い証拠金倍率(レバレッジ)を容認したことで、想定以上の損失をFX投資家に与える危険性があるほか、その結果、FXを提供するFX会社の破綻リスクが高まるからです。

ロスカットルールとは、FXならではのルールで、FX投資家が預けた証拠金に対して損失が一定割合以上となった場合、自動的に反対取引によって取引を終了(決済)させ、損失を資金の範囲内に抑える機能のことです。ロスカットルールが機能しないと、FX投資家は不測の損失を被るほか、FX会社の財務体質を悪化させ、最悪の場合にはFX会社が破綻し、顧客全体に損害を与える可能性もあります。

本来であれば、ロスカットルールは、取引を監視するコンピュータによって正確に機能するはずですが、証拠金倍率(レバレッジ)が高すぎると、たとえロスカットルールが作動したとしても、きちんと機能しない可能性があります。なぜなら証拠金倍率(レバレッジ)高いと、取引額が大きくなり、取引を終了(決済)させようとしても、為替市場が注文を受けきれず、ロスカットルールの通りに決済できない可能性が高まるからです。

先ほどもご紹介したように、ロスカットルールが機能しないと、FX投資家は不測の損失を被るほか、FX会社の財務体質を悪化させ、最悪の場合にはFX会社が破綻し、顧客全体に損害を与える可能性もあります。投資は自己責任原則を前提するとはいえ、高い証拠金倍率(レバレッジ)を容認したために、高い証拠金倍率(レバレッジ)選んだFX投資家だけでなく、高い証拠金倍率(レバレッジ)を提供するFX会社を利用している他投資家にまで迷惑がかかる可能性があるなら、行政当局(金融庁)として、規制をかけるのは、それなりに合理性があるといえます。

こうした点は、証券取引等監視委員会も指摘していることであり、証券取引等監視委員会は、金融庁に対して証拠金倍率(レバレッジ)の上限規制を含めた規制強化のための制度改正を要望しています。FX会社やFX投資家においては、証拠金倍率(レバレッジ)の上限規制に対して強い反対意見を示しているところもあるようですが、おそらく、このまま証拠金倍率(レバレッジ)の上限規制は実施されることになるでしょう。FX会社もFX投資家も、これからは証拠金倍率(レバレッジ)の上限規制を前提に自らの動きを変えていく必要があるわけです。


村田雅志(むらた・まさし)


●●●●●●●●●●今日のクイズ●●●●●●●●●●

ロスカットルールって何?

●●●●●●●●●●クイズの答え●●●●●●●●●●

FX投資家が預けた証拠金に対して損失が一定割合以上となった場合、
自動的に反対取引によって取引を終了(決済)させるルールのこと。、
これによりFX投資家は、損失を資金の範囲内に抑えることが可能となる。


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村田雅志(むらた・まさし)

FXCMジャパン チーフエコノミスト 兼 営業部長
三和総合研究所、三和銀行にて産業機械アナリスト、UFJ総合研究所にてエコノミストとして活動後、
2004年にGCIアセットマネジメント入社。05年9月にGCIキャピタル・チーフエコノミスト。
09年4月より専修大学客員教授。09年6月より現職。
東京工業大学生命理工学研究科修士課程修了、Columbia University Master of International Affairs修了、政策研究大学院大学博士課程単位取得退学。
著書に「景気予測から始める株式投資入門」、「絶対リターンを目指すオルタナティブ投資」、「一冊まるごと投資商品超入門」、「実質ハイパーインフレが日本を襲う」など

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