温暖化ガス排出目標の議論で露呈した日本の産業界の考え方
先週末(4月17日)、麻生太郎首相が直轄する「地球温暖化問題に関する懇談会」は、首相官邸で会合を開き、2020年時点の温暖化ガス排出削減の中期目標案を提示しました。目標案では、1990年のガス排出量と比べ、(1)4%増(2)1%増~5%減(3)7%減(4)8~17%減(5)15%減(6)25%減、の6種類が示されています。この6つの目標案については、首相官邸のホームページを通じて、国民からの意見(パブリックコメント)も募集されています。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tikyuu/kaisai/dai07kankyo/tyuuki_iken_syousai.pdf
あまり知られていないことですが、今年12月には、デンマークのコペンハーゲンで国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP(コップ)15)が開催されます。COP15では、京都議定書に続く、2013年以降の地球温暖化対策に関する新たな枠組みを世界全体で決めることになっています。このCOP15に先立ち、7月の主要8カ国(G8)サミットでは、中国やインドなども交えた主要経済国フォーラムが開催され、首脳レベルで気候変動問題を話し合うことが予定されています。
こうした国際会議が予定されていることもあり、日本も、遅くとも6月には、日本の温暖化ガス削減目標案を決定する必要があります。おそらく、先ほどご紹介した6つの目標案の中から、日本の削減目標案が決められると思われます。
興味深いのは、6つの目標案の中に、ガス排出量を1990年と比べ4%「増加」させる案が含まれていることです。環境に先進的といわれるEUが20%の「減少」を目標としているだけに、あえて「増加」を検討案の一つに加えることは、それなりに意図があるといえそうです。
あくまで推察でしかありませんが、あえて「増加」の案を温暖化ガス排出の目標案の中に加えたのは、温暖化ガス排出量削減に強く反対している産業界の意向を考慮したためと思われます。たとえば、新日本製鉄の三村明夫会長と東京電力の勝俣恒久会長は、「地球温暖化問題に関する懇談会」において、4%の「増加」以外の目標は、削減コストの面で他国との公平性を失うと主張しています。たしかに温暖化ガスの排出量を削減するためには、新たな設備投資が必要となり、企業のコスト負担が高まることになります。また、企業だけでなく、政府も、家電製品を省エネルギー型に買い換えるよう財政支出を拡大させる必要が出てくるでしょう。
地球環境保全を重視するか、それとも経済成長を重視するか、といった議論は、古くからあるもので、今回の議論も、それに類するものと考えることもできます。ただ、これまでと違う点は、資本主義諸国においても地球環境保全を重視する国が多くなってきたことと、地球環境をないがしろにして経済成長を続けることが、以前に比べ難しくなってきたところにあります。
こうなると、現在の地球環境保全に関する議論は、経済成長を妨げるものというよりも、経済成長を続けるためにクリアしなければならない課題、と位置づけることもできます。それは、日本の経済成長を語る上で、少子高齢化の進展を無視することができず、将来の社会保障の枠組みをどのように構築すべきかを議論する図式と似ているともいえます。
新日本製鉄や東京電力に勤務される方々が、どのような考えのもと、温暖化ガス排出量の目標として、1990年比4%の「増加」を掲げたのかはわかりません。しかし、そのような目標を掲げたことで、我々は、日本の産業界の考え方が、既存の枠組みのままであり、EUなどの地球環境保全を重視する国の視線を軽く見ていることを理解できたのは、幸いなことなのかもしれません。
村田雅志(むらた・まさし)
●●●●●●●●●●今日のクイズ●●●●●●●●●●
今年12月にデンマークのコペンハーゲンで開催される
略称「COP15」の正式名称は?
●●●●●●●●●●クイズの答え●●●●●●●●●●
国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議
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