村田雅志のKlugView グローバル投資のポイント

とりあえず目先を意識して変化する家計が保有する金融資産

日本銀行は、3月24日、2008年10-12月期の資金循環統計を発表しました。資金循環統計は、知名度が高い統計とはいえませんが、金融機関、法人、家計といった各部門が保有する金融資産・負債が金融商品ごとに記録されておりますので、日本全体のお金の流れや使い方を把握するのに有用な統計です。

この資金循環統計によると、家計が保有する金融資産残高は、昨年12月時点で、前年比5.7%減の1433兆5167億円となっています。昨年秋から始まった世界的な金融危機をきっかけに、株価が大きく下落したことで、家計が保有する株式や投資信託などの評価額が大きく目減りしたことが響いています。

ただ、日経平均株価は、昨年12月末時点で、前年比4割以上も下落していますので、(家計に限らず)株式や投資信託の評価額が目減りするのは不思議なことではありません。株価が下がったから、家計の金融資産残高が減少した、という事実に、さほど有用性があるとは思えません。

とはいえ、資金循環統計を細かくみると、それなりに興味深い事実をみつけることもできます。たとえば、昨年10-12月期に、家計はクレジットカードや消費者金融からの借り入れ(消費者信用)残高を4844億円も増やしています。家計は、2000年1-3月期から昨年4-6月期まで10四半期連続で、消費者信用の残高を減らし続けていただけに、残高が増えたことは注目に値します。

家計が保有する金融資産についても、興味深い事実が示されています。昨年10-12月期に、家計は現預金を12.8兆円も増やしています。一方、私的年金の積み立て(年金準備)残高の伸びは、わずか730億円にとどまっています。昨年1-3月期まで、年金準備残高は、2.7兆円も増えていましたので、昨年10-12月期の減速がいかに大きいかがわかります。

こうした事実は、あくまで昨年10-12月期だけの現象であり、今後、再び修正される可能性は否定できません。しかし、少子高齢化の進展という構造的な問題だけでなく、日本景気の悪化という短期的な要因まで考慮すると、家計が、先行きの備えよりも、とりあえず目先のことに注意を払い、金融資産の中身を変えつつある可能性も否定できないと思われます。日本に住む人々のお金に対する価値観も変わりつつあるのかもしれません。


村田雅志(むらた・まさし)


●●●●●●●●●●今日のクイズ●●●●●●●●●●

昨年(2008年)12月末時点での家計が保有する
金融資産残高はどれくらい?

●●●●●●●●●●クイズの答え●●●●●●●●●●

1433兆5167億円


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村田雅志(むらた・まさし)

FXCMジャパン チーフエコノミスト 兼 営業部長
三和総合研究所、三和銀行にて産業機械アナリスト、UFJ総合研究所にてエコノミストとして活動後、
2004年にGCIアセットマネジメント入社。05年9月にGCIキャピタル・チーフエコノミスト。
09年4月より専修大学客員教授。09年6月より現職。
東京工業大学生命理工学研究科修士課程修了、Columbia University Master of International Affairs修了、政策研究大学院大学博士課程単位取得退学。
著書に「景気予測から始める株式投資入門」、「絶対リターンを目指すオルタナティブ投資」、「一冊まるごと投資商品超入門」、「実質ハイパーインフレが日本を襲う」など

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