村田雅志のKlugView グローバル投資のポイント

物価は下落しても回避できそうなデフレスパイラル

総務省が発表した1月の消費者物価指数は、前年と同じ水準となり、2007年10月から続いていた物価の上昇が止まる結果となりました。原油価格が下落したことでガソリンや灯油の価格が急低下したほか、販売競争の激化を背景に薄型テレビの価格も大きく下落したことが、物価指数全体を押し下げました。

原油価格の下落や、販売競争の激化は、日本景気の悪化と直接的に関係ないといえなくもありませんが、1月の消費者物価の内訳を見ると、ガソリンや薄型テレビのほかに、洋服やノートパソコンの価格も下落していることが気がかりです。洋服やノートパソコンの価格は、個人消費と逆の連動性が強いことで知られています。つまり、個人消費が弱くなったので、洋服などは値下げしないと売れなくなったということです。

4月になれば、政府が買い付けて製粉会社に売り渡す輸入小麦価格が値下げされることから、食料品価格も下落に転ずることになるでしょう。こうしたことを考えると、おそらく日本の消費者物価の伸びは、早ければ2月、遅くとも4月くらいにはマイナスになる可能性が高いと言えます。

消費者物価の伸びがマイナスになりそうだ、ということで、日本でデフレが再燃することを懸念する声が出ています。デフレになれば、企業のリストラ圧力は高まり、日本経済全体で信用収縮が起こることで、さらに物価が下がるという、いわゆるデフレスパイラル(悪循環)に陥ってしまう、という懸念です。

ただ、デフレスパイラルが指摘されていた2003年頃と比べると、日本企業の財務体質は、だいぶ改善していると思われます。たとえば、日本企業全体の自己資本比率は、2003年頃は25%程度でしたが、今は35%程度まで上昇しています。物価が下落することで、実質的な債務負担が拡大し、企業が財務リストラに迫られることは、2003年当時と比べれば、少なくなった気がします。言い換えれば、企業の財務リストラを契機に、日本経済がデフレスパイラルに陥ることは、少ないといえます。

しかし、日本企業は、財務リストラをしなくても、人的リストラをさらに進める可能性はあります。今のところ、雇用者数は数万人程度の減少にとどまっていますが、今後は雇用者数が大きく減少することになるでしょう。また、一人あたり賃金も、定昇を廃止するといった実質的な賃下げによって低下する可能性が高いと思われます。

家計所得が減少すれば、本来であれば個人消費も同じ程度減少するはずです。ただ、個人消費は、惰性が強いもので、所得が減ったからといって、すぐさま消費水準も減らせるものではありません。おそらく、所得は減少しても、個人消費はそれなりに持ちこたえる展開になるだろうと予想しています。つまり、2003年当時にいわれていたようなデフレスパイラルは、(なんとか)回避すると思われます。

皮肉なもので、こうしたときこそ、デフレによって消費の負担感が、少しでも軽くなるのも事実です。ただ、所得が減少するのに、個人消費が持ちこたえる結果、日本の貯蓄率は低下することになります。日本経済はデフレスパイラルから回避できたとしても、人々の景況感は、大きく悪化するのでしょう。


村田雅志(むらた・まさし)

●●●●●●●●●●今日のクイズ●●●●●●●●●●

日本企業全体の自己資本比率はどれくらい?

●●●●●●●●●●クイズの答え●●●●●●●●●●

35%くらい


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03月12日更新

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村田雅志(むらた・まさし)

FXCMジャパン チーフエコノミスト 兼 営業部長
三和総合研究所、三和銀行にて産業機械アナリスト、UFJ総合研究所にてエコノミストとして活動後、
2004年にGCIアセットマネジメント入社。05年9月にGCIキャピタル・チーフエコノミスト。
09年4月より専修大学客員教授。09年6月より現職。
東京工業大学生命理工学研究科修士課程修了、Columbia University Master of International Affairs修了、政策研究大学院大学博士課程単位取得退学。
著書に「景気予測から始める株式投資入門」、「絶対リターンを目指すオルタナティブ投資」、「一冊まるごと投資商品超入門」、「実質ハイパーインフレが日本を襲う」など

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