村田雅志のKlugView グローバル投資のポイント

いずれ新しい資産バブルを招く先進各国の利下げ競争

明日(1月15日)、欧州中央銀行(ECB)は、定例理事会を開催する予定です。市場関係者の多くは、今回の理事会で、ECBが政策金利を現行の2.50%から0.50%引き下げ、2.00%にすると見込んでいます。2.00%という水準は、ECBが決める政策金利の史上最低水準です。

ユーロ圏の景気は、他先進国と同様に良くありません。たとえば昨年12月のユーロ圏の景況感指数は、統計開始(1985年)以来、最低水準まで落ち込んでいます。また12月の失業率は、7.8%と2年ぶりの高水準に上昇しています。

ECBが懸念するインフレ圧力も後退しています。12月のユーロ圏の消費者物価指数は、前年同月比1.6%まで低下し、ECBが目標とする2%を大きく下回っています。景気が悪く、物価の伸びも弱まっている以上、ECBが利下げに躊躇する理由はない、と考えるのが自然でしょう。

同じような状況は、ユーロ圏の隣国といえる英国でも同じです。英国の中央銀行であるイングランド銀行(BOE)は、1月8日に利下げを実施し、政策金利を1.5%としています。英国の政策金利が1%台となるのは、1694年のBOE創設以来、初めてのことです。英国の政策金利が、史上初の水準まで低下した背景には、他の国と同様、過去にないペースで景気が悪化し、物価の伸びが低下しているためです。実際、国際通貨基金(IMF)は、今年の英国の実質経済成長率が1.3%のマイナスになると見通しており、BOEは、今年の物価上昇率が1%を下回る可能性があると予測しています。

英国経済がこうした状況ということもあり、市場関係者の中には、BOEが米国と同様に、事実上のゼロ金利政策を採用するだろう、と考える方が増えています。英国経済は、金融業に依存する割合が高く、いわゆるサブプライムローン問題による被害が、他国に比べて大きくなっています。金融機関の多くは、依然として厳しい状況で、金融機関のリスク回避姿勢が信用収縮を招き、英国経済を下押ししています。中央銀行(BOE)としても、景気を浮揚させるだけでなく、金融機関を助けるためにも、ゼロ金利政策の採用を近い将来の選択肢として考えているはずです。

米国や英国がゼロ金利政策を採用し、日本の政策金利もゼロに近く、そしてユーロ圏の政策金利の水準は史上最低となれば、いわゆる先進各国の短期金利は、(程度の差こそあれ)すべて最低水準に張り付くことになります。こうした状況は、「100年に1度の難局」には必要なのかもしれません。しかし、過去の歴史が示すように、異常なまでの低金利の後には、必ず(形こそ違えど)資産バブルが発生します。我々が、過去に例を見ない低金利政策で難局を乗り切ったとしても、その後、新たな資産バブルが発生するということも、我々は忘れないようにしたほうが良いのでしょう。


村田雅志(むらた・まさし)

●●●●●●●●●●今日のクイズ●●●●●●●●●●

イギリスの中央銀行であるイングランド銀行(BOE)は
何年に創設された?

●●●●●●●●●●クイズの答え●●●●●●●●●●

1694年


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村田雅志(むらた・まさし)

FXCMジャパン チーフエコノミスト 兼 営業部長
三和総合研究所、三和銀行にて産業機械アナリスト、UFJ総合研究所にてエコノミストとして活動後、
2004年にGCIアセットマネジメント入社。05年9月にGCIキャピタル・チーフエコノミスト。
09年4月より専修大学客員教授。09年6月より現職。
東京工業大学生命理工学研究科修士課程修了、Columbia University Master of International Affairs修了、政策研究大学院大学博士課程単位取得退学。
著書に「景気予測から始める株式投資入門」、「絶対リターンを目指すオルタナティブ投資」、「一冊まるごと投資商品超入門」、「実質ハイパーインフレが日本を襲う」など

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