秋相場突入で強気見通しが強まる金市場
NY金市場では、短期的な調整を繰り返しながらも、7月28日以降は概ね強い足取りを呈し、現地7日の取引では1261.60ドルと6月21日に付けた高値1266.50ドル(共に通常取引)に迫る足取りを見せています。
このように金価格が上昇している背景として、米国の主要な経済指標が弱気となったことで、米国経済減退に対する警戒感が強まった結果、安全な投資先とされる金市場へと資金がシフトしていることが挙げられます。
例えば、貿易収支の場合、今年1月時点では351億ドルの赤字だったものの、6月時点では499億ドルの赤字に膨らんでいます。また、今年第1四半期には3.7%だったGDPは第2四半期には1.6%に低下するなど、経済成長の鈍化も明らかとなりました。
さらに、経済が回復するには重要とされる内需の回復の鍵を握る雇用情勢に関しても、非農業者部門の雇用者数は、政府による雇用政策の終了に伴い6月以降はマイナスの状況が続く、つまり雇用者数の減少が続いているほか、失業率は9.6%で高止まりした状態にあります。
このような経済成長や雇用情勢を受けて、消費者信頼感指数が今年1月時点に比べて低下しています(コンファレンス・ボードの場合は1月が56.5、8月が53.5、ミシガンの場合は1月が72.8、8月が69.6)。
米国の場合、GDPの70%前後が個人消費で占められています。それだけに、雇用情勢の停滞や、これを受けた消費者信頼感指数の低下は、米国経済見通しに対する不透明感を強めるものであり、その結果として安全な資産とされる金へと資金が流れる動きが形成されていると考えられるのです。
また、このような減退感の強い米国経済に対処するために、FRB が超低金利政策を持続する姿勢を見せていますが、これは金市場と同様に安全な投資先とされる債券市場へ投資する魅力が減退することを意味します。それだけに、金利を生まないとされる金にとっては好材料になります。
このような経済環境を背景にして金市場は、今年6月に付けた高値の水準まで価格が上昇しているわけですが、6月の上昇時とは状況が異なっています。それは、その当時に比べると、秋相場に突入するなかで金価格がさらに上昇する可能性が高い、という点です。
まず、安全な投資先としての金需要についてですが、前述のように米国経済には減退感が強いため、これを受けて今後も金市場には投資用需要が見られる可能性が高いと思われます。
それでは、長期運用を目的とした投資用金需要を示す指標として注目される金ETF残高の動向を見てみましょう。金ETFの中でも最も残高が多いNY市場のSPDRの場合、金価格が史上最高値付近で推移していた6月下旬に1,320.44トンまで膨らんでいました。
その後、金価格が下落するに伴って縮小し、8月上旬に1281.83トンに達した後は回復に転じています。しかしながら、それでも9月7日時点の残高は1294.44トンと6月下旬時点の残高を下回っているため、金ETF市場には大口投機家にとってまだ参入の余地があると考えられます。
また、秋相場を迎えることで期待されるのが、世界最大級の金消費国であるインドで、金需要が最も膨らむ婚礼期を迎えることによる実需の拡大です。現在の金価格は、史上最高値付近にあるため、世界的な景気減退に対する懸念が強い状況下では実需がすぐに膨らむと考え難いのが実情です。
しかしながら、昨年の金価格上昇のきっかけとなったのは、そのインドによるIMF売却金の大量の買い受けで、しかも買い受け価格が当時としては高値の1,100ドルでした。このことは、インドの金需要の根強さを示唆するだけでなく、高値での金価格の推移が長引くに連れ、需要サイドが高値に慣れて価格水準そのものが切り上がる可能性があることを示していると考えられます。
さらに、毎年、クリスマスを迎えて金需要が膨らむほか、ファンドの決算期に絡んだ金買いの動きが膨らむため12月にかけて金価格が上昇するという傾向があることも金価格を後押しする一因になりそうです。
CFTC報告によれば、8月31日時点の大口投機家の買い越し数は23万8,077枚に達するなど、買われ過ぎが警戒される水準に達しています。そのため、短期的には金市場が修正場面を演じて価格が下落する可能性があります。しかしながら、経済情勢とこれを背景にした安全な投資先としての根強い需要、季節要因を背景とした実需、投資需要の高まりを考慮すると、金市場は依然として中期的には強い足取りを維持するのではないか、と考えられます。
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