コーヒー市場で新興国の需要が注目される理由
世界最大の生産国であるブラジルが減産期を迎えた2009~10年度のコーヒー市場では世界的なコーヒー生産量の減少に伴う需給のひっ迫に対する懸念が強まり、これを受けてNY市場のコーヒー価格は8月23日に186.75セントまで上昇しました。
この時期における他の市場の価格動向を見ると、NY株式市場ではダウ平均が1万ドル割れに向けた下落途上となっているほか、NY原油市場も70ドルに向かっての軟調な足取りとなっています。そのため、この時のコーヒー価格の上昇は他市場の堅調な足取りに追随した動きではなく、独自のファンダメンタルズ、つまり需給ひっ迫懸念を背景にしたものである可能性が高いことが分かります。
なお、この年度の世界のコーヒー需給に関して米国農務省は、調査対象国を追加した03~04年度以降において、07~08年度に次いで需給がひっ迫する年度、との見方を示しています。
さて今回、コーヒー価格を押し上げる主因となったのは、前述のようにブラジルの減産にありますが、同時に注目されるのが拡大する新興国のコーヒー需要です。とは言っても、新興国の需要が注目されるのは、今期が初めてのことではありません。
実際は、BRICs諸国の経済成長に対する注目が高まった頃から新興国の需要増加に関心が寄せられているため、今期になって新たに浮上した買い支援材料というわけではないのです。
しかしながら、経済発展が注目される新興国のなかには世界最大のアラビカ種生産国であるブラジル、そしてロブスタ種の世界最大の生産国であるベトナム、更には世界第1位、第2位の人口を抱えながらもコーヒーを飲む習慣が普及しておらず、それが故に今後の伸びしろが大きいと期待される中国、インドが含まれているのです。
それでは、新興国の経済成長に対する期待が浮上した03~04年度から今年10月1日から開始する10~11年度間におけるこれら4カ国の需要の推移を見てみましょう。米国農務省の発表によると、03~04年度におけるこれら4カ国のコーヒー需要は総計で1,614万袋となっていました。これに対し、コーヒー市場が成熟している先進国(EU-27、日本、米国)の需要は7,271万1,000袋に達しています。
ただ、10~11年度を見ると、新興国4カ国の需要が2,294万5,000袋と、03~04年度に比べて実に42%もの成長が予測されているのに対し、先進国側の需要は7,663万5,000袋と僅か5%の成長にとどまると見られているに過ぎません。
さらに国際連合発表の人口推計(2009年時点)と米国農務省による需給報告を元に計算した場合、10~11年度における一人当たりのコーヒー豆消費量は、欧州が約15g、米国が12g、日本が8.9gとなっています。レギュラーコーヒー一杯あたりのコーヒー豆消費量は標準で10gですので、欧州、米国、日本では1日に一杯弱~1.5杯程度のレギュラーコーヒーが飲まれていることになります。
これに対し、ブラジル、インド、中国、ベトナムの場合はどうでしょうか。さすがに世界最大の生産国であるブラジルの1日あたりのコーヒー消費量は16gと欧州を上回る水準に達していますが、残り3カ国の場合、ベトナムが2.2g、インドが0.25g、中国が0.05gとなっています。つまり、これら3カ国のレギュラーコーヒーの飲料回数はベトナムが5日に一杯、インドが40日に一杯となるほか、中国の場合は約半年に一杯、と先進国を大幅に下回る状況にあるのです。
実際には、インスタントコーヒーも消費されているため、これら新興国におけるコーヒー飲料回数は上記の数値を上回ることが推測されます。しかしながら、インスタントコーヒーよりも高級で経済が成長するに伴い需要が増加すると期待されるコーヒー豆に関しては、消費量が先進国に比べて極端に少なく、それだけに今後の成長の可能性を秘めているものと考えられるのです。
一方の在庫に関しても顕著な変化が見られています。特に、世界最大の生産国であるブラジルの場合、09~10年度の国内消費量は03~04年度の1,440万袋から1,950万袋に増加しましたが、この需要増加の影響で期末在庫量は03~04年度の1,181万9,000袋から09~10年度には354万6,000袋へと大幅に縮小しています。
なお、10~11年度には豊作期を迎えるため、期末在庫量は734万6,000袋へと回復することが見込まれています。しかしながら、コーヒーの木は減産期と豊作期を交互に迎えるため、11~12年度には再び減産期となり、これに伴い在庫量も再び減少することが予想されます。
コーヒーの消費量は経済成長の影響を受けやすいと考えられています。そのため、世界経済減退に対する危機感が強い状況では大幅な需要の増加は見込み難いが実情です。それでも、需要増加の伸びしろや抱える人口規模という観点からコーヒー市場では新興国に対する視線が熱く、その関心は今後さらに強まることになりそうです。
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