暗雲立ち込める米国の石油業界
8月上旬にかけて82ドル台まで値を伸ばしていたNY原油価格は、目先の高値となる82.97ドルを付けた8月4日を境にして下落に転じ、現在も頭重い動きが続いています。特にFOMC後となる8月11日以降は下方への圧力が強まり、現地19日の取引からNY原油の終値は75ドル以下の水準で推移し続けているほか、24日の取引では71.45ドルと7月7日以来の水準まで下落しています。
今年に入ってからのNY原油の推移を振り返ると、5月には87ドル台に達し、その直後に64.24ドルと今年の最安値を付けています。しかしながら、年初から8月下旬までを通して見た場合の取引レンジは、概ね70~80ドルとなっています。つまり、今年に入ってからのNY原油の値動きの幅は、原油市場にしては狭い10ドルというレンジ内にほぼ留まっているのです。
実は、このように中期に渡って狭いレンジ内での往来にとどまる、というNY原油の動きは近年にはあまり見られなかった現象です。というのも、石油製品の生産状況が影響することから、原油にも需要期、不需要期があり、そのシーズンに合わせて価格が高下する、と通常は考えられているからです。
例えば、米国の石油需要量が最も増加するドライブシーズン(5月最終月曜日のメモリアルデーから9月第一月曜日のレイバーデーまでの期間)には、年間でガソリン消費が最も膨らむ時期と想定されています。
実際、米国エネルギー省が発表している週間報告で過去10年間での推移を見てみると、米国のドライブシーズンに当たる6月~8月間にはガソリン消費量が、前四半期の3月~5月期に比べて2~4%前後の拡大が見られるなど、季節によって需要に増減があることがわかります。また、当然のことながらこの需要の増加は価格にも影響し、ドライブシーズン期間にはガソリン、原油の価格は上昇する傾向が強まる、というのが通例でした。
しかしながら、今年はその需要期を迎えながらも価格が上昇する兆しが見えないばかりか、8月上旬には早々と高値を記録するという、原油価格の上昇期待が最も高まる時期でありながらも冴えない足取りとなっているのです。
その原因は何よりもまず、米国の石油需要が盛り上がりに欠ける状況が続いていることが挙げられます。米国エネルギー省の報告によれば、8月13日時点の米国内の原油、ガソリン、中間留分の在庫はいずれも過去5年間において最大量の状態が続いています。
なかでもガソリン在庫量は最需要期を迎えているにもかかわらず、週を追うごとに増加しています。ドライブシーズンを迎えてから、製油所の稼働率は90%前後に上昇しており、これも在庫拡大の一因と思われます。
ただそれでも、需要が旺盛な時期には稼働能力不足が指摘されていた、という過去の動向を振り返って見ると、稼働率が上昇する余地を残しながらの在庫の拡大は、依然として弱い米国の需要状況を端的に示していると言えるでしょう。
また、このような弱い需要状況はクラックスプレッドの縮小、という事態も引き起こしています。NY市場の先物価格を基にして割り出したクラックスプレッドは、8月24日時点で約21.75となっています。このクラックスプレッドはガソリンと灯油の価格から原油の価格を差し引くことで割り出すため、需要が膨らんで石油製品価格が上昇していれば数値が大きくなる、つまり石油製品を生産することによって得られる利益が拡大する、ことになります。
通常、この時期のクラックスプレッドは30を越える水準で推移していることを考慮すると、現在の水準がいかに低いか、つまり、現在石油製品を生産して得られる利益がいかに小さいか、ということがわかります。
一般的には、このようにスプレッドが縮小している場合、石油製品の生産を抑えて供給を引き締めることで石油製品の価格上昇を促し、その結果、スプレッドが拡大に向かう、という動きが見られます。しかしながら、現在の米国の石油需要の弱さを考慮すると、生産を引き締めたからといって、スプレッドがセオリー通りに拡大することは難しいでしょう。
現在、米国の景気には減退感が強いため、原油を始めとするエネルギー需要の回復は期待しづらい状況にあります。ドライブシーズンが終了すれば、市場の関心は冬場の暖房油需要に向かいますが、高い在庫水準、見通しに不透明感の強い景気状況、クラックスプレッドの縮小、という弱気なファンダメンタル面を見ている限り、米国の石油業界に明るさが見られるのもまだ先のことになりそうです。
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