ラ・ニーニャ現象がコモディティ市場に与える影響を考える
8月10日に気象庁はラ・ニーニャ現象の発生を発表しました。ラ・二―ニャ現象が発生するのは、2008年春に終息して以来、約2年ぶりのことになります。一方、気象庁に先立ってラ・ニーニャ現象の発生について触れていた米国のNOAA(米国海洋大気庁)は、今回のラ・ニーニャ現象は7月に発生しているほか、ほぼ全ての予測モデルが来年初頭まで継続すると予測している、と発表しています。
ラ・ニーニャ現象がもたらす影響は発生した時期によって異なりますが、今回の場合、8月~11月と成熟~収穫期を迎える世界最大のコーン及び大豆生産国である米国では、南部地域を中心に高温少雨になる可能性が高い、とされています。
今のところ、米国のコーン及び大豆生産の中心地である中西部では順調に生育が進んでいますが、すでに受粉・結実期を終えて成熟期に向かいつつあるコーンと異なり、大豆はサヤが着き始めたばかりであり、今から大豆生産にとって最も天候不良に対する懸念が高まる結実期を迎えます。
現地8月9日付の米国農務省発表(以下、USDA)によると、現在大豆の作柄は良~優の状態が66%を占める良好な状態となっています。また、米国内の大豆需給はというと、09~10年度には期末在庫率が5.2%と危機的水準まで低下しながらも、10~11年度には生産量が前年度の33億5,900万ブッシェルから33億4,500万ブッシェルへと僅かに減少する一方、圧砕量、輸出量が減少することで11.4%まで回復する、とUSDAは予測しています。
しかしながら、仮に熱波が広がって大豆生産が現在予測されている以上の減産となった場合、米国内の大豆需給は2年連続してひっ迫する可能性が高まることになります。ちなみに、最新の需給報告をもとにして計算すると、生産量が4,300万ブッシェル以上の下方修正が行われれば期末在庫率は一桁台に低下することになります。
現時点での米国の生産量予測は、過去最大の作付面積、そしてエーカーあたり42.9ブッシェルという過去第3位となる高水準のイールドを基にして算出されていますが、注意したいのは、作付面積が過去最大とされている点です。というのも、これはイールドが僅かに低下するだけで生産量が大きく減少する可能性が高いことを意味しているからです。
実際、イールドが40.5ブッシェル以下に低下すれば、期末在庫率が一桁台に低下することになりますが、2008年度には39.7ブッシェルまでイールドが落ち込んでいるだけに、ラ・ニーニャ現象の影響で熱波と干ばつが8月から広がるようであれば、米国の大豆需給が2年連続してひっ迫する可能性は十分にあると考えられます。
また、同じ農産物という点から見ると、10月~11月にかけて作付期を迎えるブラジル、アルゼンチンへの影響にも注意が必要でしょう。というのは、この時期のラ・ニーニャ現象は、この両国に熱波をもたらす可能性があるからです。
特に、ブラジル、アルゼンチンは米国に並ぶ大豆大国で、2010~11年度の場合、この3カ国の大豆輸出量は世界輸出の約88.5%を占めることが予測されています。実際には10月~11月時点でこの両国にラ・ニーニャ現象の影響がどの程度見られるか、という点にかかってくるとはいえ、この3大産地で熱波が広がる可能性は市場心理に大きく影響することになりそうです。
なお、ラ・ニーニャ現象で懸念されるのは穀倉地帯での熱波だけではありません。NOAAは、カリブ海では垂直に吹く風である鉛直風が弱まって大西洋からの横風が強まる結果、ハリケーンの発生率が高まる、との見方を示しています。また、8月5日に発表された最新のハリケーン予測では、今夏のハリケーン発生個数は例年の6個に対し、8~12個と予想されています。さらに、大型ハリケーンに発達する個数は例年の2個に対し4~6個が見込まれています。
米国エネルギー省によれば、2009年7月現在の米国の製油所数は143ヶ所で、製油能力(日)は1,767万1,550バレルとなっています。しかしながら、そのうちの44%に当たる773万9,302バレルの製油能力はテキサス州、ルイジアナ州とメキシコ湾岸地域に集中しているほか、原油在庫の約50%はPADD3に集中するなど、依然として米国の石油産業はメキシコ湾岸地域に集中しています。
NOAAはラ・ニーニャ現象は今後、冬にかけてさらに強まる、つまり天候不良が発生する可能性が高まるとの見方を示しています。天候不良になれば農産物やエネルギーの需給に与える影響が大きい時期を迎えるだけに、熱波やハリケーンに対する警戒感がよりいっそう強まることになりそうです。
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