拡大するエタノール産業に支えられるか、米国のコーン市場
米国農務省(以下、USDA)は最新の需給報告において10~11年度の米国内エタノール需要は、年間で47億ブッシェルに達するとの見通しを示しました。原油価格が急伸したことで米国のエタノール需要増加に対する期待が高まったのが、2005年でした。
この年には、35ドル~55ドルと次第に値位置を切り上げていた原油価格の上昇指向がより強まり、8月には年初の45ドルという水準に対して70ドルを超える動きが見られたうえ、この原油価格の上昇を受けてガソリン価格が当時としての過去最高水準に達していました。さらに、米国では環境問題に対する意識が高まり、ガソリンの添加物であるMTBEの廃止が決定されたことで、ガソリンの代替としてのエタノール需要に対する期待が高まったのです。
さらに、その後も08年にかけて原油価格の上昇が続いたため、米国ではエタノール産業の成長が続き、全米のエタノール生産能力(年間)は2005年1月時点の36億4,370万ガロンに対し、2010年1月時点では130億2,840万ガロンへと約3.5倍に達しています(Renewable Fuel Associationの発表による)。
また、これに伴って「エタノール生産用としてのコーン消費量も増加しています。USDAの発表から見ると、05~06年度が16億ブッシェルだったのに対し、10~11年度にはその約2.9倍に達する47億ブッシェルの見通しとなっています。
注目されるのは、エタノール生産用として消費されるコーンの量だけではありません。エタノール生産用需要の大幅な成長を受け、米国内のコーン消費に占めるエタノール生産用需要は、05~06年度の14.25%から10~11年度には35%へと上昇しているのです。
なお、従来のコーンの使用用途であった食用としての年間需要は13億~15億ブッシェルというレンジで定着しています。すでに成熟した状況にあるため、年度により多少の差異は生じるものの、エタノール需要が見せているような右肩上がりの成長は人口の増加などの要因がない限り、食用需要が大きく変化することはないと予想されます。
このように2005年以降、急速にコーン市場においてその存在感を強めているエタノール産業だけに、エタノール産業の今後がコーン市場の行方に与える影響も日増しに高まっています。
そのエタノール産業の現状ですが、現在、米国の主要エタノール産地である中西部におけるエタノールの工場卸価格はガロンあたり1.5ドル前後となっています。今年3月以降、エタノールの工場卸価格は1.4~1.5ドル前後で安定して推移しています。コーン価格も3.5ドル前後での推移が続いています。
ここで米国農務省による、1ガロン当たりのエタノールを生産するためには平均して2.8ブッシェルのコーンが消費される、との見方を採用すれば、今年に入ってからのガロン当たりのエタノール生産マージンは40~50セントで安定して推移していることが推測されることになります。
これは、過去には1ドルを超える生産マージンを記録することがたびたび見られたことからも窺われるように、生産マージンとしては高い水準というわけではありません。しかしながら、エタノール生産工場を兼業するコーン農家にとっては、加工することなくコーンを売却するよりも、エタノールを生産して売却した方が利潤が高まることを意味します。
特に、米国におけるエタノール消費がエタノール・ブームを経て次第に定着し、5年間で需要が3倍以上の成長を見せている状況が、一時期は疑問視されたエタノール産業の今後の安定成長を裏付ける一因になっていると思われます。
なおエタノール産業には、生産地である米国中西部とその周辺地域での需要が旺盛ながらも、西海岸やメキシコ湾など、産地から離れるにつれて需要が停滞するという問題が残されています。米国エネルギー省の発表によるエタノール在庫状況においても、PADD1,PADD2の在庫量が全体の7割~8割を占めるといった偏りが見られています。
これは、パイプラインでの輸送が困難なエタノール輸送のインフラ整備が生産量や需要の成長に比べると遅れた状況にあることが背景になっていると考えられます。ただ、逆に見れば今後、この偏向性が是正されるようであれば、米国のエタノール需要はさらに増加する可能性を十分に残している、と考えることもできるでしょう。
米港農務省によるエタノール需要はその年度の景気やコーン価格の状況によって多少の修正が行われることがあります。そのため、実際に47億ブッシェルという需要が示現できるかどうか、という見通しには不透明な点が残りますが、成長ののりしろを残したエタノール産業が今後も米国のコーン市場を支えていくことになりそうです。
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