急落でも中長期的には強い足取りが見込まれる金市場
6月21日には1,266.50ドルの高値を付け、その後も1,240ドルを前後する動きが続いていたNYの金市場は、新四半期を迎えた7月1日に急落場面を演じました。この日の金(中心限月)は、6月4日以来、初めて1,200ドルを割り込み1,196ドルを付けた後、前日より39.2ドル安の1206.70ドルで取引を終えています。
その後も価格が回復することはなく、現地6日の終値は1,195.10ドルとなっています。終値が1,200ドルを割り込むのは、5月24日以来のことになります。 金価格がこのように急落した理由としてまず考えられるのは、他の安全な投資先に比べて金が割高と考えられる水準まで上昇していたことです。
たとえば米国債の場合、30年債はギリシャの財政問題に対する懸念が強まった5月初旬以降、金市場と同様に上昇しているとはいえ、6月に数度にわたって史上最高値を更新した金に比べて上げ幅は限定されていました。
シカゴ先物取引所(CBOT)で取引されている30年債先物の場合、6月30日時点の終値は127.5でした。これは、リーマンショック後に安全な投資先へと資金が流出した2008年12月22日に記録した141.2を大きく下回ります。
これに対し、同日の金の終値は871.20ドルでした。債券市場では、価格が上昇すれば金利が低下するため、イールドが低下すればこれを嫌って資金が流出する、という動きが見られる傾向があります。
とはいえ、この価格上昇に伴うイールド低下とこれを背景にした資金流出、という動きを考慮したとしても、金価格はリーマンショック以降、中期にわたって強い足取りを維持し、急落する直前の6月30日の金価格(終値)には1,245.90ドルを記録していたことを見ると、債券市場に比して金市場に資金が流入していた状況が窺われます。
金市場にいかに資金が流入していたか、はCFTC報告で確認することができます。最新の発表によると、6月29日時点の金市場における大口投機家の買い越し数は24万4,725枚に達しています。しかしながら注目されるのは、大口投機家の買い越し数と同様に拡大傾向が続いていた取組高が、6月29日時点ではわずかとはいえ、1,273枚の減少が報告されている点です。
というのは、取組高は市場の人気のバロメーターとされているため、増加傾向が続けばそれだけ市場の人気が高まっているとされる一方、減少に転じることは市場から資金が流出していることを示しているからです。つまり、6月29日時点では金価格は依然として高値圏での往来が続いていたとはいえ、すでに資金が市場から流出する動きが見られていたことになります。
資金の流出を促した原因としては、買われ過ぎに対する警戒感が強まっていたのはもちろんのこと、それと同時に米国の経済指標は依然として強弱が混合した状況にあり、インフレ観測が遠のいたことでインフレヘッジとしての役割も持つ金への投資魅力が薄れたこと、欧州経済の目先の弱材料に織り込み感が強まったことが考えられます。
しかしながら、だからといって金市場がこのまま弱気なトレンドを継続するとは一概に言えないのが現状です。というのも、金価格が急落した後に発表された米国の雇用統計では失業率が前月の9.7%から9.51%に低下したとはいえ、非農業部門の雇用者数は今年初めての前月比マイナスを記録するなど、米国の雇用状況は依然として低迷した状況にあるからです。
また、欧州の財政問題に関しても、ギリシャの財政問題は織り込み感が強いとはいえ、他のPIGS諸国の財政問題が引き続き警戒される状況にあります。特に、2009年度のGDPに対する財政赤字はギリシャが13.5%だったのに対し、アイルランドは14.3%、スペインが11.2%、ポルトガルが9.4%とギリシャと同様に高い水準となっていることは、欧州の財政問題が根深いことを示しています。
さらに、価格が下落したところではこれまで控えられていた新興国を中心とした国々からの需要が膨らむ可能性が高いことも、金価格をサポートする要因になりそうです。特に、人民元の弾力化を実施した中国に対する警戒感が金市場にとっての買い支援材料になりそうです。というのも、人民元の上昇を抑制するために人民元売りのドル買いを実施すればするほどドルの保有高が膨らむことになるため、膨大なドル保有のリスクを分散の一手段として同国が金を購入する、との思惑が高まる可能性が高いからです。
金ETF残高の減少は、長期投資を主とする機関投資家の投資手法の変化を示す可能性がある、との声も聞かれており、その動向には十分の注意が必要でしょう。とはいえ、米国の景気回復見通しに依然として透明感が強いこと、欧州の財政問題の根深さ、そして新興国の需要、という状況からは、目先は急伸後の修正が続いたとしても、金市場はいずれは強い足取りを取り戻すことになると思われます。
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