下振れリスクへの注意が高まるコーヒー市場
6月11日以降に上げ足を強めたNYのアラビカコーヒー先物市場は、6月24日には175セントと1998年2月以来の高値まで値を伸ばしました。その後は上値警戒感が強まりながらも、160セント台での推移が続いています。
NY市場のコーヒー先物価格は、08年9月のリーマンショック発生以降、今年6月上旬を迎えるまでおおむね、140セントを上値抵抗にした動きが続いていました。そのため、現在の160セント台という水準は、過去と比較しても比較的高い水準と言えます。
コーヒー価格がこのように大きく上昇した原因として挙げられる理由として、まず、6月はブラジルの真冬に当たるため、霜が降りれば未収穫のコーヒーの実の品質が低下し、結果として収穫量が減少する、との懸念が挙げられます。
実際には、ブラジルのコーヒー産地は毎年発生する降霜被害を避けるために、徐々に北上しているため、霜害にあうリスクも低下していると考えられます。しかしながら、6月時点ではコーヒーの収穫はそれほど進行しておらず収穫量の見通しに不透明感が強いことから、生産量の減少を促しかねない降霜に対しては、毎年、敏感な反応が見られています。
また、この降霜懸念に加えて、世界的なコーヒーの足元の需給逼迫に対する警戒感が強まっていることも、今回の急神を促す主因となっています。
米国農務省の発表によると、09~10年度(2009年10月1日~2010年9月30日間)の世界のアラビカ生産量は前年度の8,338万7,000袋から7,515万9,000袋への減少が見込まれています。
これは、世界最大の生産国で年間生産量が世界生産量の約40%を占めるブラジルの09~10年度の生産量が、生産サイクルの影響で前年度の4,050万袋から3,300万袋へと、約19%もの減産が見込まれていることが背景になっています。
なお、このような大幅な減産にもかかわらず、ブラジルのコーヒー輸出量は08~09年度の2,839万6,000袋をおよそ8.5%下回るに過ぎない2,600万袋に達しています。これは、米国農務省の報告が示すように、ブラジル国内の在庫を取り崩すことによって、輸出分を確保したことが背景になっていると考えられます。
米国農務省によれば、09~10年度のブラジルのコーヒー期末在庫量は、前年度の657万6,000袋に対し354万6,000袋にまで落ち込む見通しとなっています。この在庫減少を受けて、ブラジル国内のコーヒー期末在庫率は前年度の14.09%から7.9%へと急激に引き締まることが見込まれているのです。
さらに、強まるファンダメンタル面を手掛かりにして投機資金が大量に流入したことも重要な要因です。CFTC報告によれば、5月25日時点には9,081枚だった大口投機家の買い越し数は、6月22日時点では3万4,879枚へと増加しています。
このように、需給という基本的なファンダメンタルズに季節要因を背景にした減産懸念の強まりが加わるなか、これを手掛かりして投機資金が流入する、という流れの中で価格が急伸し、高値で推移しているのが現状となっています。
しかしながら、価格の上昇は生産意欲を高めるうえ、10~11年度は生産サイクルから見ると豊作期に当たることから、ブラジルの生産量は大幅に回復することが見込まれます。実際、米国農務省によると、10~11年度のアラビカ生産量は4,180万袋と過去最大に達する見通しとなっています。
この増産により、ブラジル国内のコーヒー在庫量は、同国の需給がひっ迫しているかどうかを判断する際に基準となる500万袋を上回る734万6,000袋に回復するほか、期末在庫率も15%を超えてくることが予想されています。
このように、ブラジルの需給が改善に向かうことは、当然のことながら市場では弱気な要因となります。なお、コーヒーの取組高は16万枚前後で、市場規模は金市場の約4分の1、原油市場の約8分の1に過ぎません。そのため警戒されるのが、ファンダメンタル面での見通しが弱まれば、流入した投機資金が一気に流出し、これが価格の急落を促す可能性がある、という点です。
現在は、ブラジルの収穫がまだ終了していないため、実際の10~11年度の需給が現在予想されているほど改善に向かうかどうか、という点には不透明感があります。しかしながら、天候次第という側面が強いながらも、ファンダメンタル面から見る限り、日を追うごとに下振れリスクが高まっているように思われます。
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