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人民元弾力化が金に与える影響を考える

 6月19日に中国の中央銀行である中国人民銀行がこれまで実質的にドルに固定されていた人民元に関し、"相場の弾力性を強化することを決定した"、との声明を発表しました。

 中国は国内では賃金問題の発生やインフレに対する警戒感が強いほか、人民元の切り上げは輸出価格の上昇を促すため輸出が減少するリスクがあるなど、様々な問題を抱えているため、人民元が一気に引き上げられる可能性は低いほか、中国人民銀行側も人民元の急伸を抑制する動きを取ると予想されます。

 しかしながら他方では、中国経済の規模や輸出量の拡大や世界の工場としての地位確立、といった状況にもかかわらず、ドルに対して固定されていた人民元レートの弾力化が決定されたことをきっかけにして、世界の経済バランスが改善に向かうことも期待されるのです。

 それでは、この人民元の弾力化が金市場にはどのような影響を与えることになるのでしょうか?まず考えられるのが、インフレヘッジとしての金の役割が上昇する可能性が高い、ということです。

 中国はエネルギー、食糧を始めとする輸入大国であり、特にエネルギーに関しては昨年から今年にかけて、輸入量が大幅に増加しています。例えば、電力供給の多くを火力発電に依存しているため石炭を大量に消費している同国は、石炭の主要な生産国にもかかわらず、2009年の石炭輸入量は1億400トンに達し、初めての石炭純輸入国に転じました。なお、一方の2009年度の年間輸出量は2,240万トンを記録しています。

 特に2009年度には、国際価格が国内価格に比べて割安だったことが、同国の石炭輸入量が大幅に増加した一因となっていました。現在、中国国内では経済成長に伴う物価の上昇を背景にして、賃金引上げを求める動きが活発化しています。

 人民元の切り上げは輸入価格の下落を促すため、人民元が切り上げられるなかで賃金の引き上げが実施されれば、中国産の石炭価格が国際価格を上回る、という状況が再び発生する可能性を高まることになります。その結果、国内外で石炭の価格差が生じ、これを受けた輸入量の増加、という2009年度と同様の状況が起こり得ると考えられます。

 また、一方の原油に関しても、今年1月~3月の1日当たりの平均輸入量は、前年同時期に比べて約40%増加した460万バレルに達するなど、大きな伸びを見せているうえ、大豆を始めとする食糧輸入も活発化しています。

 先にも触れましたが、人民元高が進行すれば国際市場ではドル建てで取引されているエネルギー、食糧の輸入価格が下落することになります。輸入価格が下落すれば同国の輸入量が増加する可能性が高まり、その結果として世界的な需給が引き締まり、インフレの可能性が高まることが予想され、これを受けてインフレヘッジとしての金の役割が高まる、と考えられるのです。

 次に考えられるのは、安全な投資先としての金需要の拡大です。ただ、これは個人におけるケースではなく、中国政府においての需要の増加です。

 人民元の急上昇は、輸出価格の上昇→中国の輸出規模の縮小→国内の景気や労働問題の悪化、を引き起こしかねません。しかしながら、人民元の弾力化を発表したことで活発化する投機家による人民元買いに対抗して人民元を抑制するために、中国政府としては"ドル買い・人民元売り"という手法を採ることが見込まれます。

 人民元弾力化の発表後、人民元の中間値は、21日は18日の発表と同値の1ドル=6.8275ドルだったものの、22日には急伸し2005年7月に実施された人民元切り上げ以来の最高値となる6.7980元に設定されたものの、22日の終値は6.8133元まで下落しています。この動きは、一部で聞かれるように、中国当局による介入があったとも考えられるのです。

 このような形でドルの買い付けが実施されればされるほど、同国の外貨準備は膨らむことになります。とはいえ、通貨に対する信用が低下している現状では、通貨から他の安全な資産へと転換が進められる可能性がある点には注意が必要でしょう。

 中国政府当局の姿勢や同国が抱える国内の労働、そして経済の問題から見ると、人民元は一気にではなく、ジワジワと上昇することが予想されますが、この人民元の動きは金市場にとってもゆったりしたペースとはいえ、価格上昇を促す要因になってくることになりそうです。

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平山順(ひらやま・じゅん)氏

中央大学法学部卒、英国留学後
(株)日本先物情報ネットワークに入社。現在主任研究員。
商品全般に通じ特に穀物市場を得意とし、テクニカル分析には定評がある。
1999年にシリーズ3(米国先物オプション外務員資格)に合格。

株式会社日本先物情報ネットワーク

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02月04日更新

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