再び注目される米国内の原油在庫状況
NY原油はギリシャ・ショックを境にして急激に地合いを弱め、5月20日には64.24ドルまで値を落としました。その後は、若干基調が回復し、70ドル台を維持しての高下が続いているとはいえ、メモリアルデーの連休明けとなった6月最初の取引では続落するなど、依然として脆さの見られる足取りが続いています。
特に、すでに市場では予測されていたこととはいえ先週末にフィッチ・レーティング社によってギリシャの格下げが発表されたことで、欧州経済に対する懸念は一段と強まっています。
勿論のことながら、この欧州経済の停滞観測は、原油市場においても今後の需要を圧迫する要因として弱気に作用しています。さらに、これに加えて米国の石油需要の雲行きが怪しくなってきたことに注意が必要となってきました。
米国の原油需要の大まかな動向を、在庫及び原油処理量がどのように推移しているか、製油所稼働率はどのような状態にあるか、という需要サイドの要因と、生産量、そして輸入量はどうか、という供給側の要因から見ていきたいと思います。
まず在庫状況に関しては、米国の原油在庫量は4月上旬以降、一貫して増え続けています。その結果、5月21日時点の在庫量は3億6,510万バレルと、5月第3週の水準としては1990年以来の高水準に達しています。
一般的に原油在庫量が増加する最大の原因として考えられるのは消費量の減少です。しかしながら、原油消費を示す指標である製油所による原油処理量の推移を見ると、今年に入ってからの米国の原油処理量は、3月半ばに低迷した後は増加し続けています。
特に5月21日時点における1日当たりの処理量は、原油価格が130ドルを超えて推移していたコモディティ・バブルとされる2008年5月とほぼ同量の1,508万5,000バレルに達しているのです。
しかしながら、原油需要を別の視点から見た製油所稼働率で見た場合、若干、様相が異なってきます。例えば、5月21日時点の稼働率は87.8%で2008年5月下旬と同程度に達しているものの、4月30日に89.6%を記録して90%台に迫りながらも、その後は低下傾向が続くなど、夏場の需要期を直前に控えているにもかかわらず、90%台という大台に達することが出来ない状況が続いているのです。
さらに、供給サイドの要因、特に輸入量がここに来て大きく膨らんでいることも、原油在庫拡大の原因となっています。同じく米国エネルギー省エネルギー局の発表によれば、5月21日時点の1日当たりの輸入量は992万8,000バレルでした。
米国の原油輸入量は3月19日の週以降、ほぼ900万バレル台での推移となっています。つまり、輸入量が増加傾向を強めているにもかかわらず、国内の需要の拡大ペースがこれを下回っているため在庫が増加し続けている、というのが現状となっているのです。
3月下旬以降、米国の原油輸入量が増加したのは夏場の需要シーズンを迎える前の在庫確保、米国の景気回復とこれに伴う需要の増加を見込んだ動き、そして先物市場が順ザヤ傾向(コンタンゴ)となっていることが先高見通しを強めているため現時点での在庫確保の動きを活発化させている、などの理由が考えられます。なかでも特に注意したいのが、コンタンゴを背景にした原油輸入活発化の動きは今後も続く可能性がある、という点です。
欧州経済の停滞により、米国の景気回復ペースにもブレーキがかかるとの見方が強まっています。夏場にかけて米国の需要がどの程度膨らむか、という点が重要なポイントで、今後の見通しが強気に変化する可能性は残されています。
しかしながら、将来の需要見通しが軟化した現状において、900万バレル台後半という高水準での原油輸入が続けられる一方で、製油所稼働率が90%を前にして伸び悩む状況が続くようであれば、今後も米国の原油在庫は増加傾向を強め、再び価格を圧迫する要因として注目されることになりそうです。
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