上値が期待しづらくなったコーン市場
現地10日に、米国農務省は市場関係者の注目が集まる需給報告を発表しました。大豆、コーン、小麦など、主要農産物の世界そして米国の需給予測が示されるこの発表は、これからの穀物市場の動向を左右するとして毎回、その発表内容に注目が集まります。
今回の発表で個人的に注目していたのは09~10年度(09年9月1日~10年8月31日)における米国のコーン生産量です。というのは、米国のコーン生産量に何らかの修正が行われる可能性がある、と考えていたからです。
米国のコーン生産量が修正される可能性がある、と考えた理由の一つとして、米国最大のコーン生産地である中西部では、収穫期である昨年10月に大雨に見舞われた影響で、収穫ペースが平年に比べて著しく遅延していたことがあったからです。
例えば、米国農務省の発表によると、10月25日時点における全米18州の平均コーン収穫進捗率は、過去5年間平均が58%となっているのに対し、09~10年度の場合は20%に留まりました。その後も収穫ペースが大きく改善されることはなく、従来ならば発表が終了する(=収穫作業がほぼ終了する)11月末時点においても、進捗率は79%にとどまっていました。
79%という収穫進捗率は高水準に感じられるかもしれませんが、10月時点で予測されていた130億1,800万ブッシェルという米国のコーン生産量を基に考えると、残り21%の収穫のうち、約半分の10%が未収穫になったとすれば、生産量は117億1,620万ブッシェルまで落込むことになります。
08~09年度の生産量が約120億9,200万ブッシェルだったため、117億ブッシェル前後の生産量でも需給に大きな問題はないように思われますが、09~10年度に関しては景気回復見通しを前提としたうえで、米国農務省は国内のエタノール生産用コーン需要、そして輸出用需要はそれぞれ前年度を上回る量を想定しています。そのため、コーン生産量が08~09年度をわずかに下回る水準に落込んだだけでも、09~10年度の期末在庫率は2.7%前後まで低下する見通しとなってしまうのです。
10月の雨によるコーンの収穫遅延はこのような需給の引き締まりを招きかねない要因と捉えられていましたが、この状況に更に追い討ちをかけたのが12月に入ってからの寒波でした。
通常、コーンの収穫は12月には終了しているもので、10月の大雨による異例の収穫遅延、そして寒波に見舞われる、というこれまでには予想もされなかった事態が発生したことで、米国のコーン生産量がどの程度、下方修正されるのか、という点が今年に入ってから絶えず注目されてきたのです。
しかしながら、米国農務省の需給報告にはこの異例の天候不良による影響はほとんど見受けられないばかりか、最新の報告では131億3,100万ブッシェルと過去最大級の生産量が予測されるなど、かえって需給は緩和に向かうとの見方が示されています。
この原因は、年々高まる遺伝子組換種の導入率にあると考えられます。同じく米国農務省の発表によると、09年における遺伝子組換種の導入率は、前年度の80%を上回る85%となっていました。
遺伝子組換種の導入にはプレミアムが発生しコストが上昇する、という点があるものの、その一方では、農薬散布や害虫駆除などの手間が省けることになります。米国農務省の調査によって、手間が省略できるため空いた時間を他の仕事に割り当てることが出来る、いわゆる兼業が可能ということが遺伝子組換種を導入する最大の理由、となっていることが明らかとなっていました。
特に、コーン農家の場合、コーン生産とエタノール生産を行うケースが最も多い、と考えられています。エタノールを生産するのであれば、食用の場合には敬遠されがちな遺伝子組換種の導入にも問題は無いと考えられるうえ、コーンにプレミアムを付加して売り出すことになるエタノール生産はコーン農家の利潤性を上げるには適した方法と考えられるため、今後も米国では遺伝子組換種の導入が進められていくことになるでしょう。
現在、米国中西部ではこの冬の寒波が影響し、コーンの作付が遅延するのではないか、との声も聞かれています。しかしながら、昨年10月の雨、12月の寒波を経験してなお、過去最大の生産量が予測され、更に、農家の利潤追求の姿勢は遺伝子組換種の導入率上昇を促す、という観測から見る限り、たとえ作付が遅延したとしても実際の生産量には大きな影響は無いと予想されます。遺伝子組換種の導入に伴って、天候相場の様相も次第に変化しつつあるとは言え、景気回復という需要増加期待を高める要因が無ければ、コーン市場の上値は期待しづらい状況が続くことになりそうです。
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