明るい兆しが見え始めた金市場
2日のNY金市場は、前日より19.1ドル高と大幅に値位置を引き上げ、1,137.4ドルで取引を終えました。終値がこの水準まで上昇したのは、1月20日以来のこととなります。
この日、金市場がこのように上昇した要因として、財政赤字に苦しむギリシャに対し、ギリシャ政府自身が3日にも追加措置を発表する意向であることを明らかにしたうえ、EUが包括的にギリシャ救済に乗り出す、との観測が強まったことが広がったことが挙げられます。
更に、マスコミの報道にあるように、今後は財政不安を抱える英国の通貨、ポンドが投機筋の売りのターゲットになるのではないか、との見方も浮上しています。このような観測を受けて、今後はユーロの圧迫感が弱まる、つまり、金価格の圧迫要因となっていたユーロ安・ドル高の動きに変化が生じる、との観測が強まったことが、この数日間における金価格上昇の背景となっていました。
実際には、投機資金がポンド売りというポジションを採るようであれば、ユーロの売り圧力が高まった時に経験したように、ポンド安・ドル高という流れが生まれ、これが金価格を圧迫する要因になりかねません。
また、ユーロ圏で財政赤字不安が次々と強まる状況は、ようやく高まったリスク許容度が再び低下し、マーケットから資金を引き上げる動きが活発化するリスクが高まる可能性もあります。
それにもかかわらず、金価格が上昇指向を強めたのは、次のような原因が考えられます。まず挙げられるのが、これまでの価格下落を受けて金の下げ過ぎに対する警戒感が強まっていたことでしょう。
特に、昨年10月にインド準備銀行がIMFから200トンもの金を買い受けた価格水準である1,045ドル付近まで金価格が下落したことは、以前から噂されていた中国やロシアといった新興国の金購入意欲が高まる、との見方をより一層強めることになりました。
真偽のほどは分からないにしても、金価格の低迷感が強まった2月下旬に中国がIMFより金を買い受けるとの報が流れたこと自体が、中国の金購入に対する市場の根強い警戒感を表していると言えるでしょう。というのも、中国は、価格下落時に金準備高を積み上げる可能性が高い、というそれまでの観測のスキをつくように、昨年、投資用としての金需要が増加し、金価格がそれまでの高値水準であった1,000ドルを目指すという上昇場面を演じた時期に、金準備高の400トン引き上げを発表したことがあるからです。
また、金保有高は1,045トンと、日本の765.2トンだけでなく金保有率が30%以上に達する欧米の一部諸国を大きく上回るにもかかわらず、2009年6月末には2兆ドルを突破するなど、世界最大の外貨準備高を保有しているため、中国の金保有率は1.5%に過ぎません(WGCの2009年12月発表による)。
特に、外貨準備の約7割をドル建てで保有していることが、資産価値の低下を防ぐために中国が金準備高の引き上げを実施する可能性が常にあることを示しています。特に、現時点のユーロ安・ドル高という流れに変化が生じる、もしくは米国の景気回復に対する期待感が薄れるような場面が見られるようであれば、中国の金購入観測は再び強まり、これが金価格をサポートすることになりそうです。
その一方で、金市場にとって別の支援材料として挙げられるのが、金ETF残高の増加傾向です。2日時点の金ETF残高は1,296.89トンと微増とはいえ、ジリジリと1,300トン台に迫る動きを見せています。特に、1日で残高が4.57トンもの増加を記録したのは、金価格が1,100ドル台を割り込んだ2月中旬の3トン増以来の動きで、金への投資用需要がジワジワと高まっていることを示唆するものと考えられます。
このような要因が金価格を後押しする要因となっていますが、それでもドル高に金の上値を抑制される、というこれまでの流れ自体が変化するか、という点については不透明感が強い、というのが実情です。
これまで金価格の上値を抑制する要因となっていたユーロ安・ドル高に変化が生じるようであれば、金市場の地合いが更に強まることが予想されます。それだけに、ギリシャがどのような追加措置を発表するのか、そしてEUによる包括的かつ効果的な救済策が実施されるのかどうか、という点が注目されるところです。
【ご注意】
本ブログに掲載されている情報の著作権は株式会社日本先物情報ネットワークに帰属し、本ブログに記載されている情報を株式会社日本先物情報ネットワークの許可無しに転用、複製、複写することはできません。
PR / Ad Space
- コーン市場にどう影響?需給報告のポイントとは(09:24)
- 米国の超低金利政策の長期化に支えられる金(02/02)
- タイ政府の支援策で騰勢強めるゴム相場の今後(01/26)
- NY金はさらに上を目指せるのか(01/12)
- 100ドル突破でも原油市場の中期見通しは楽観できず(12/29)
- 頭重い動きを見せている金市場のこれから(12/22)
- 需給報告はややサプライズながらもコーン市場へのインパクトは限定的(12/15)
- 中国の需要が示す大豆市場の下げ余地の乏しさ(12/08)
- JM社の需給報告が示す白金市場の上値の重さ(12/01)
- 100ドル達成でも勢いの持続は難しそうな原油市場(11/24)
- 金はこのまま上を目指すことが出来るのか(11/17)
- 自給率100%維持に黄信号?注意が必要な中国のコーン需給(11/10)
- タイ洪水でも伸び悩む砂糖の需給事情(11/03)
- 米国の需給引き締まりにもかかわらず大豆市場の上値が重いわけ(10/27)
- 需給報告が示すコーンの上値の重さ(10/20)






