需給の弱さに頭を抑えられかねない原油市場
2月5日には69.50ドルまで落ち込んだWTI原油は、2月9日に上昇に転じ、22日には1月14日以来となる80ドル台に達しています。この原油価格上昇の背景には、22日の上伸の主因となったフィラデルフィア連銀指数を始め、強気な経済指標が発表されたことで米国の景気回復に対する期待感が高まっていることがあります。
WTI原油価格が、景気回復期待を背景にして上昇していることは、同様に今後の景気動向に対する期待を手掛かりにして上昇している株式市場との連動性が高まっていることからも窺うことが出来ます。ちなみに、NY株式市場とWTI原油の2009年1月2日以来の相関関係は0.863と高く、ほぼ連動しているに等しい状況となっていますが、今年に入ってからの相関関係は0.877に上昇しており、更に連動性が高まっています。
そしてこのような景気回復に対する期待感が強まるに伴って、投機筋の資金が流入しています。CFTC報告によれば、16日現在の大口投機家の買い越し数は6万8,436枚となっています。
2月9日時点の買い越し数が、4万2,060枚と2009年9月8日時点以来の低水準まで落ち込んだ後で増加に転じています。これに連動するようにWTI価格が上昇へと基調を変化させていることは、80ドルに達するまでの上昇は投機資金の流入がその主な背景となっていたことを示唆していると言えるでしょう。
しかしながら、この原油価格の上昇基調が今後も継続するかどうか、という点に関しては、疑問が残るというのが実情です。というのは、80ドルに達したことで上値確認感が強まった、というテクニカル要因以外にまず挙げられるのが、強気な経済指標が発表されているにもかかわらず、米国の石油需要に大きな伸びが見られていない点です。
例えば、2月12日時点の在庫量は、末期とはいえ需要期である中間留分が、前週に比べると約290万バレルの減少となりましたが、これは需要が増加したことが背景ではありません。というのも、同時点の米国内の中間留分需要は前年同時期の435万9,000バレルを大幅に下回る378万7,000バレルに過ぎないからです。
一方、この時点の中間留分生産量は、前年同時期の414万7,000バレルに対し、343万3,000バレルに留まっています。つまり、米国の石油需給は、景気回復期待が高まりながらも、これまでと同様に需要が停滞しているため、生産量を抑制することで在庫の縮小に取り組んでいるのが実情となっているのです。
なお、この需給の悪さを示唆するように24日の天然ガス市場は大幅な下落を演じています。天然ガスは、寒波に見舞われた米国各地で暖房用として使用されていたため、この天然ガス価格の下落は、暖房用としてのエネルギー需要の後退に対する警戒が強まったことを示唆していると考えられます。
さらに、今後の石油需要後退観測を強めているのが、中国の動向です。米国と同様に厳冬となった中国では、寒波の影響で暖房用エネルギー需要が大幅に増加し、価格が廉価なことも手伝って一部地域で天然ガス不足が発生するほど、需給が逼迫していました。しかしながら、大きく伸びていた天然ガスの需要が3月を迎えることで今後は後退する可能性があります。
この冬、中国の一部地域で供給が不足するほどに天然ガス需要が増加したのは、石油との価格差から廉価な天然ガスに需要が殺到したことも一因となっています。それだけに、今後、暖房用エネルギー需要が減少するようであれば、割高な暖房油需要が天然ガスに先立って減少することになるでしょう。
また、中国のエネルギー価格に影響を与えるのは実需だけではありません。同国では、準備預金率を2ヶ月連続で引き締めるという、金融引き締めとも見られる政策が実施されていますが、これが追い討ちになって、商品価格の重石になると予想されるのです。
米国、中国といった世界の主要エネルギー消費国での需要低迷、もしくは今後の需要後退が見込まれる、という弱気な需要面に対する市場の反応は、強気な流れが続いている間は薄いかもしれません。
しかしながら、ファンダメンタルズを伴わない価格の上昇は、上値達成感が強まるにつれ投機資金の流出を招きやすい、という傾向があります。そのため、現在のWTI原油市場には、需給の弱さをきっかけにして原油市場の地合いが軟化する可能性が常に含まれていることを考慮しておいた方いいように思われます。
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