上値追いに転じるも勢い持続性には疑問が残る大豆市場
シカゴ市場では、2月5日に900セントと、昨年10月上旬以来の安値まで下落した大豆価格が上値追いに転じ、現地16日の取引では965.5セントに達しています。
年初は1,060セント近辺で推移していた大豆価格が2月上旬にかけて約15%の下落を記録した理由のうち、大豆独自の需給要因としてまず挙げられるのは、米国農務省が発表している需給報告でも示されたように、アルゼンチン、ブラジルを中心とする南米諸国での大増産が見込まれていることです。そしてこれに伴って米国の大豆輸出が圧迫されるだけでなく世界的な需給は緩和に向かうという観測が広がったことが弱気材料となっています。
また、ギリシアの財政赤字問題を受けて欧州経済の見通し不透明感が強まるなかリスク回避のための動きが広がったこと、同時にユーロ安ドル高の動きが進行したことが商品市場からの資金流出を促し、上述の要因と相乗して大豆価格を下押していました。
それが、2月中旬を迎えてから大豆価格が上昇に転じているのはなぜでしょうか。これは、米国での寒波が原因で、産地から輸出港への輸送が難航していることが、足元の現物ひっ迫感を強めていることが一つの理由となっています。
なお今大豆年度(09年9月1日~10年8月31日)は、昨夏は干ばつに見舞われた影響で、国内大豆生産が落ち込んだ中国が、米国産大豆に強い需要を見せており、2月12日時点の米国の大豆輸出成約量は3,525万8,800トンと、前年同時期の2,549万9,600トンを大幅に上回るなど好調な状況が続いています。
とはいえ、この好調な輸出は、大豆年度初頭から見られたものであるため、市場には既に織り込み感があったものの、寒波による流通麻痺という事態が発生したことで、改めて輸出需要の強さに対する意識が高まったと思われます。
しかしながら、このような大豆の強い足取りに持続性があるか、という点に関しては疑問を持たざるを得ません。というのは、まず足元の現物需給のひっ迫というのは、寒波によってもたらされたものである以上"天候が回復すればひっ迫感が和らぐ"という一時的な要因に過ぎないからです。
また、中国の旺盛な需要に関しても、ブラジルの大豆輸出が本格化する3月になれば、米国産に比べて廉価であるうえ、大増産を受けて潤沢な供給が見込まれるブラジル産へと需要がシフトすることが予想されます。特に、ギリシアの財政赤字が影響し、安全な資産としてドルが買われている状況が、ドル建ての大豆価格に対する割高感を強める可能性がある点には注意が必要でしょう。
さらに、2010年~11年度の見通しとして米国農務省が発表したベースライン・プロジェクションズにおいて、やや弱気な需給予測が発表されたことも、ファンダメンタル面での重石となってきそうです。
今回の報告において10~11年度の米国内大豆需給は、作付面積が7,650万エーカーと前年度より100万エーカー縮小するうえ、イールドは前年度の43.3ブッシェルに対し42.8ブッシェルに落ち込むと予想される結果、生産量は前年度比‐8,900万ブッシェルの32億3,000万ブッシェルとされています。ただ、一方の需要が前年度の31億9,600万ブッシェルから31億5,100万ブッシェルに減少するほか、期初在庫が引き上げられているため、最終的な在庫は、前年度を8,400万ブッシェル上回る3億5,400万ブッシェルとされているのです。
なお大豆の場合、バイオ・ディーゼル油としての利用は見られるものの、価格が割高であることが原因となって、コーンにおけるエタノールなどのように食用以外の新しい需要が定着していません。そのため、コーンの場合は今後の景気や原油価格の動向次第で、需要が大きく伸びる可能性がある一方、大豆の場合、景気が回復しても需要の増加幅は限定される可能性が高い、つまり、コーンに比べると需要面が重石となる可能性があると思われるのです。
さらに、これまで大豆価格上昇の牽引役となり、最も多い時には180万ブッシェルを越える量を記録していた中国の米国産大豆の週間成約量が年明け以降、急速な落ち込みを見せている点も気になるところです。特に、価格に敏感な中国の業者は通常ならば、価格が下落したところで大規模な買い付けを実施する傾向があるにもかかわらず、米国産の需要が後退しているのは、大方の予想通り、ブラジルを中心とする南米産大豆へと同国の需要がシフトしている可能性があることを示唆していると思われます。
900セントを割り込むことなく切り返したことで、大豆価格は底を打ったとの見方が強いとはいえ、需給面は積極的に強気と見る状況にはないことから、現在の大豆市場の強気な足取りが、今後も継続するのかどうか、という点には疑問が残るところです。
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