コモディティレポート RSS

金価格はなぜ低迷しているのか

 NYの金市場は今年に入ってから冴えない動きが続いています。1月上旬に1,150ドルを試した後は弱気な足取りを描いていますが、2月に入ってもこの弱気な流れを断ち切ることが出来ていません。

 現地5日の取引(通常)では、昨年11月2日以来の安値となる1044.50ドルまで値を落しています。1,200ドルを超える強い足取りを見せていた昨年12月上旬の勢いとは全く異なる様相です。

 このように1月に金価格が下落した理由はいくつか考えられますが、その中でも大きな影響を与えていると考えられているのが米国の景気回復期待、FRBの早期利上げ観測、そしてこれらの期待や観測を背景にしたドル高でした。

 特に、年初から強気な経済指標の発表が行われたことが米国の景気回復に対する期待感を強め、これが投資家のリスク回帰の動きを高める結果、安全な資産として買われていた金市場から資金が流出するとの観測が広まりました。

 これに加え、景気回復期待が米連邦準備銀行(FRB)による早期利上げ観測を強めたことが、金価格を下押す要因となっていました。金利の引き上げが金価格の下落を促す理由は、一般的に金は保有しても利子が付かないため、利上げが実施された場合には金と同じように安全な投資先としての役割を持つと同時に利子が付く債券市場へと資金が流出すると考えられることにあります。

 しかしながら、その後、発表された米国の経済指標は強弱が入り混じるもので、なかなか景気回復に明確な見通しが経たないばかりか、FRBによる早期利上げ観測が後退しながらも、金価格は頭重い動きに留まっています。このように金価格が低迷している主な要因となっているのが、ドル高です。

 1月は米国の景気回復に対する期待感が強まるなかでのドル高進行という動きが見られましたが、2月に入ってからは、ギリシアの財政赤字に対する懸念が強まるなかで、ユーロが売られドルが買われるという、異なる要因を背景にして対ユーロでドル高が進行しています。

 ドル高によって金価格の上値が抑制されるのは、国際市場において金はドル建てで取引されているため、米国以外の国にとってドル高が進行すればそれに応じて金価格が割高となることを意味します。景気の好調な時期であれば従来からの金の主要用途である宝飾用需要の増加が見込まれることから、金価格が上昇する可能性はありますが、世界的な景気見通しに不透明感が強い状況においては、割高な金の価格は需要の減退という連想につながりやすいのが実情です。

 とはいえ、現在の金価格水準は、昨年10月にインド中央銀行がIMF金200トンを購入した価格水準まで落ち込んでおり、本来ならば、現物の需要が膨らむ可能性が高まり、これに先行するように金市場に参入資金が増加すると考えられる状況となっています。

 同時に、中国、ロシアといった金準備高保有率の低い新興国からの需要増加に対する観測が強まる水準でもあります。それにもかかわらず、金市場の上値が重いのはなぜでしょうか。

 恐らく、オバマ政権が1月21日に発表した金融規制案が原因と考えられます。というのは、以前にも取り上げたように、今回の金融規制案で規制の対象とされているなかに銀行の自己ディーリング部門が含まれているからです。

 自己ディーリング部門とは、敢えてリスクを取ることで市場に流動性を提供するほか、リスクをとる事でリターンを得ることを目的に市場に参加しています。このような部門に対する規制が強化される見通しとなっていることで、買い注文を入れたくてもこれに対応できる売り注文を提供している存在が不在になる、つまり、取引が成立しない状況が予想されるため、買いたくても買えないという心理が強まっているのが実情と考えられるのです。金価格の下落にもかかわらず、投資用金需要の動向を示す金ETFの残高に大きな伸びが見られないのも、これが背景になっていると思われます。

 このような状況に加え、金市場にとって重石となっているドル高・ユーロ安の主因となっているギリシアの財政赤字問題が長期化するとの見方が強まっていることは、今後もドル高が金価格を圧迫する恐れが高いことを示唆しています。

 ロシアや中国の中央銀行による大量の買い付け、金ETFや現物需要の大幅な増加、といった、大規模な金需要の増加が見られない限り、金市場への投資資金の積極的な参入を見込むのは難しく、それだけに、当面、金価格は上値の重い展開が続くのではないでしょうか。

平山順(ひらやま・じゅん)氏

中央大学法学部卒、英国留学後
(株)日本先物情報ネットワークに入社。現在主任研究員。
商品全般に通じ特に穀物市場を得意とし、テクニカル分析には定評がある。
1999年にシリーズ3(米国先物オプション外務員資格)に合格。

株式会社日本先物情報ネットワーク

PR / Ad Space

PR / Ad Space

クルクるアンケート

02月04日更新

自動売買って興味あります?






みんなの回答を見る

ページトップへ戻る