77ドルの突破は原油市場の基調転換を示すのか
NY市場、現地2日の取引においてWTI原油は、77.39ドルの高値を付けた後、前日より2.8ドル高の77.23ドルで取引を終えました。WTI原油が77ドル以上で取引を終えたのは、1月20日以来のことになります。
この日、WTI原油が13日ぶりの高値まで値を切り上げた原因としてまずは、米国の景気を先行する指標として注目されるISM製造業景気指数が58.4と、事前予測の55.6を大きく上回ったばかりか、2004年8月以来の高水準に達したことが挙げられます。
さらに、この米国の発表に、インド、欧州などにおいて強気な製造業関連指数が発表されたことが、米国だけでなく世界的な景気回復に対する期待感を高めたことが、原油市場において強気な要因となっていました。
また、このような景気改善に対する期待感の強まりは、株式市場の動きにも現われており、この日のダウ平均は前日より111.32ドル高の1万296.85ドルで取引を終えています。一方の為替市場では、ギリシャの財政赤字に対する懸念が強まるなか、ユーロに対する安全な投資先の一つとして買われていたドルが売られる動きが見られていますが、これは、市場ではリスク選好度が高まっていることを示唆していると言えるでしょう。
これに加え、昨年11月以来、広範囲に渡る地域で寒波に見舞われたうえ、1月には北京が40年ぶりの寒波に見舞われるなど、厳冬を迎えている中国では天然ガスの需要が大幅に増加した結果、現時点の需給が逼迫しています。
中国と同様に米国においても、12月後半以降に寒波が襲来した結果、暖房油の需要が増加し、これが価格を押し上げる効果をもたらしていることもあって、寒波を原因とする中国の天然ガスの供給不足は、NY原油市場においても支援材料となっています。
特に、国内の一部地域において供給制限が設けられるほど中国の天然ガス需給は逼迫していると伝えられていること、そして、国内の増産では追いつかない分の供給に関しては輸入によって補うとして、6,000万元を投じて現物を確保するなどの動きが見られていることが、世界的なエネルギー需要の増加期待を高めているのです。
このような強気な需要、景気改善に対する期待感とこれを受けた投機資金の流入によって、WTI原油は終値ベースで77ドルを突破したと考えられますが、この強気な足取りに持続性があるかどうか、という点は依然として不透明感が強い状況にあります。
というのは、まず、暖房油はガソリンのように年間を通して消費されるわけではないため、夏と冬では需要の格差が激しいうえ、寒波の襲来によるエネルギー需要の増加、というのは突発事項による一時的な動きであり、石油需要を安定的に底上げする動きではないからです。
また、前述の中国の場合、北半球に位置する同国では、よほどの天候不良に見舞われない限り、春に向かうにつれ暖房用としてのエネルギー需要は先細ることが予想されるため、これまで伝えられている以上の天然ガス確保の動きが見れない限り、今後の原油市場に大きなプラス要因となる可能性は低いと思われます。
一方の米国の動向に関しても、ISM製造業景気指数は強気な発表だったものの、米国エネルギー省の発表によれば、肝心の米国内の製油所稼働率は依然として70%台での推移が続いています。製造業の活動が活発化するのであれば、石油需要が必然的に増加し、これに伴って製油所稼働率が上昇することが見込まれます。そのため、仮に製油所稼働率に改善が見られないようであれば、今回膨らんだ景気改善に対する期待感も再び弱まり、これが投機資金の流出につながりかねません。
つまり、中国、米国の寒波による需要の増加は一時的な現象に過ぎず、安定的な価格の上昇をもたらす要因ではないこと、そして景気回復の裏づけが現物需要の増加を端的に示している製油所稼働率の上昇、という形に結びつかない限り、投機資金が再び流出する恐れが高い、というのが現状と見られます。WTI原油の終値が77ドルを突破したとはいえ、原油市場の基調転換、というには、時期尚早と言えるのではないでしょうか。
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