商品市場の重石となる中国、米国の2大国の金融政策
1月20日の取引を境にして、商品市場は全体的に弱気の様相が強まっています。例えば、昨年末には1,096.20ドルまで値を落としながらも1月11日には1,163ドルまで値を伸ばし、その後、19日までは約1,130~1,140ドルのレンジで推移していたNYの金価格(いずれも通常取引)は、20日に値を崩した後の22日には1,081.90ドルまで値を落としたほか、26日時点の終値は1,098.30ドルと1,100ドルを下回る水準での推移が続いています。
また、商品市場において最大の取引規模を誇る原油の価格は、年初以降の下落傾向も1月半ばには落ち着きを見せ、78ドルを下値サポートにしての往来が続いていたものの、21日以降は地合いを崩し、26日時点の終値は74.71ドルとなっています。
このように1月下旬を迎えるに伴って商品市場が全体的に頭重い動きとなっている理由としては、需給の規模の大きさから商品市場に最も影響を与えやすい中国、そして米国の2大国において新たに実施された金融政策が挙げられます。
まず、中国における金融政策というのは、中国人民銀行による預金準備率の0.5%引き上げです。同行が預金準備率を引き上げたのは1月18日ですが、今回の引き上げは、同行が初めて引き上げを実施した2008年6月以来、19ヶ月ぶりのことになります。
今回の預金準備率が引き上げに関し、人民銀行側は金融引き締め政策への方針転換を否定しています。しかしながら、リーマンショック後、中国でも世界的な金融危機への対応策として2008年~2010年の間に4兆元(約57兆円)の公共投資、とする景気刺激策が講じられました。
また、この政府の景気刺激策に伴って、国内の大手銀行が積極的に新規の貸付を実施した結果、2009年上半期だけでも新規貸付額は前年同時期の2.5兆元の約2.96倍となる7.4兆元に達しています。このように景気刺激策を通して大量の資産が市中に出回ったことにより、現在、中国内ではインフレの進行だけでなく、資産バブルが危惧される状況にあります。
このような過剰流動性の高まりを商品市場から見れば、活発な消費が期待できるだけでなく、インフレ進行による物価高が見込まれることになります。そのため、過剰流動性(カネ余り現象)を引き締める効果をもたらす今回の預金準備率の引き上げは、今後の中国の商品需要、そして商品価格の停滞、という2つのマイナス要因をもたらすことになります。
その影響は、商品市場のなかでも民間部門での消費が中心となる商品、例えば昨年秋以降、中国の旺盛な需要が価格上昇の主因となっていた大豆市場など、において今後も根強く尾を引くことになりそうです。
一方の米国の金融政策とは、オバマ大統領が21日に発表した金融規制改革の一環としての新たな取引規制強化案です。今回発表された金融規制強化案には、商業銀行と投資銀行の業務分離などが含まれていますが、なかでも注目されるのが、自社の利益創出のために実施する自己取引の禁止、です。というのも、これは金融機関が商品市場などで果たしている、流動性の受け皿、という役割が停止する恐れがあるからです。
市場では、注文が実施されてもその注文の受け手が乏しい場合には、売買の注文がすぐに実施されないばかりか、価格の高下が激しさを増すことが懸念されます。特に、株式、債券、為替市場と比べると、市場規模が小さい商品市場の場合は、投機資金が流入すれば価格が乱高下する可能性が高いのが実情です。そのため、リターンを得るために自らリスクを取るだけでなく、売買注文がスムーズな実行を促すだけの流動性を提供する、大手銀行の自己取引は無くてはならない存在と言えるでしょう。
今回、市場が新たな金融規制案に対し、ネガティブな反応を見せているのは、このような大手銀行の自己取引に対する規制強化による、流動性の縮小、そして価格が乱高下するリスクが高まったことを嫌った動きと言えます。
中国、米国ともにこれからどのような金融政策が実施されていくのか、見通しは不透明ではありますが、商品市場にとっては需給という側面だけでなく、市場の流動性においても大きな影響力を持つ両国での金融引き締め、そして金融規制強化案が相次いで発表されたことにより、商品市場は当面の間、頭重い動きを余儀なくされそうです。
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