予想外の需給報告を受け修正を迫られる穀物市場の見通し
現地12日に発表された米国農務省(以下、USDA)による需給報告において、米国のコーン生産量は前月12月に発表された129億2,100万ブッシェルを約1.7%上回るだけでなく、過去最大となる131億5,100万ブッシェルと発表されました。
生産量が引き上げられると同時に、飼料用需要も前月予測の54億ブッシェルから55億5,000万ブッシェルに上方修正されています。この修正には景気の回復は食肉の消費量を引き上げるとの見方が反映されている、と考えられますが、それでも生産量の大幅な引き上げを相殺するだけの量ではありません。そのため、09~10年度の米国内のコーン期末在庫率は、前月発表の13%から13.5%と僅かとはいえ上昇したものとなっています。
この13.5%という期末在庫率は、USDAが適正とする水準です。また、前回の予測に比べてもわずか0.5%の修正に過ぎないため、市場の反応も限られたものとなるケースが多いのですが、今回に関しては、12日のシカゴ市場、そしてこれに続く13日の東京市場においてコーン価格はストップ安をつけるなど、急反落場面を演じています。
なお、この日は中国が預金準備率を1月18日から0.5%引き上げると発表するなど、金融引き締めの姿勢を明らかにしたことで、同国の商品需要が減退するのではないか、との観測が強まったことも価格を押し下げる要因になっています。
しかしながら、中国はコーンに関しては基本的に100%自給の政策を採っているため、米国の中国向けコーン輸出は0.1%前後で、中国向け輸出はほとんど行われていない状況です。そのため、中国の金融引き締めによりコーンの需要が減少したとしても、米国のコーン輸出に与える影響はごく限られたものになると推測されるため、12日のシカゴ市場と13日の東京市場における急落の主因は、やはり弱気のサプライズとなった需給報告にあると考えられます。
今回、この需給報告が弱気なサプライズとして受け止められたのは、米国のコーン産地が12月に寒波に見舞われたことで、その時点で収穫されていなかったコーンのイールドが低下する、もしくは収穫が放棄されるのではないか、との観測が広まり、この観測を手掛かりにしてコーン価格が上昇していた、ことが背景となっています。
実際、コーンの収穫率は11月末時点にはほぼ100%に達するため、USDA自体が11月末時点でコーンの収穫進捗率の発表を終了します。そのため、12月に入ってもコーンの収穫率が90%前後に留まっていたこと自体が異例のことなのです。そこに例年以上に厳しい寒波が広がったため、収穫が放棄されないまでもイールドが低下するのではないか、という見方が高まったのは、当然のことと言えるでしょう。
それにもかかわらず、今回の報告で米国のコーン生産量が上方修正された理由としては、例年以上の長雨に見舞われていた10月の状況からUSDAはコーンの収穫面積が大きく減少すると予想していた可能性が挙げられます。今回の需給報告において、コーンの収穫面積は前月予測の7,930万エーカーから7,960万エーカーに引き上げられています。
寒波により収穫が放棄されたどころか、それとは逆に収穫面積が引き上げられていることが大きなサプライズの一つでしたが、これが、10月の長雨による影響を、USDAが過分に見ていた可能性があることを示唆しているように思われます。
さらに、驚かされるのがエーカー当たりのイールドが過去最大の165.2ブッシェルとされている点です。10月の長雨、12月の寒波、という異例の悪条件にもかかわらず、過去最大のイールドを示現するとUSDAが予測している理由は、遺伝子組換種の技術発展や導入率の上昇、そして米国の生産量に大きな影響を与えるほど長雨や寒波に見舞われた地域におけるコーンの生産割合が高くなった可能性、などが挙げられます。
USDAは、世界のコーン生産に関してもアルゼンチンの生産量を上方修正しています。米国の需給引き締まりや南米の減産という、これまで市場で広がっていた強気な需給見通しが今回の報告によって覆された形となっています。その一方で、米国を始めとする世界の景気は一進一退の状況が続いており、需要面が市場を牽引するという展開も、すぐには期待が出来ません。そのため、今春の米国における作付動向を始めとする今後の穀物市場の見通しには、若干の修正が必要と思われます。
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