過剰在庫に圧迫される石油市場
11月半ばまでは80ドルを前後する動きを見せていた原油市場は、11月下旬以降に下方への方向性を強め、8日のNY通常取引では72.62ドルで引けました。この日、原油市場が下落した原因とされているのが、ドルが対ユーロにおいて11月初旬以来の水準まで上昇したこと、そして欧米の株式市場が軟調に推移していたこと、が上げられています。
ドルの上昇が原油価格の下落を促す原因は、国際市場では原油がドル建てで取引されるため、ドル価格の上昇は米国以外の国々にとって割高となることを意味し、その結果として割安感が薄れ、足元の引き合いが弱まるとの見方が強まることにあります。
また、当然のことながら、世界経済の動向が原油需要の状況に大きく影響を与えています。そのため、欧米諸国の株式市場の軟調は景気回復感を薄め、結果として原油の需要を減退させる、という連想が働くことが、原油市場においてのネガティブな材料となっています。
欧米諸国の景気は緩やかながら持ち直しを見せているとはいえ、発表される経済指標は依然として強弱が混在しています。さらに、11月25日にはドバイ・ショックという、新たな危機が発生したことで、ドバイに大規模な投資を実施している欧州系金融機関に与える悪影響に対する懸念が強まっているだけに、先行きの原油需要に対し強気を見込むのが困難になっているのが現状と言えるでしょう。
さらに、石油の在庫状況がこの状態を後押しすることになりそうです。というのは、米国では現在需要期を迎えているにもかかわらず、暖房油を含む中間留分在庫量は、依然として記録的な高水準で推移し続けているからです。
米国エネルギー省情報局の発表によると、11月27日時点の中間留分在庫量は1億6,569万8,000バレルとなっていますが、11月最終週の在庫水準としては、1982年以来の高水準となります。
米国では、景気低迷の影響から石油需要が落ち込んでいるため、生産業者側が生産量を引き締めることで需要の減少に対応する措置をとっています。実際、2007年には製油所稼働率が95%を超えても需要に生産が追いつかない状況が見られ、製油能力不足が指摘されていました。
しかしながら、今年に入ってからの製油所稼働率は79.4%~87.2%となっているうえ、冬場の中間留分需要期を迎えているにもかかわらず、11月27日時点の稼働率は79.7%と前週の80.3%、そして前年同時期の84.3%を下回っているのです。
また、この製油所稼働率の低下も手伝って、中間留分生産量は前週の397万9,000バレルから390万4,000バレルに落ち込んでいるものの、需要はさらにこれを下回る357万9,000ドルに留まっているのです。つまり、現在の米国の暖房油需給は、最大の需要期にもかかわらず生産を引き締める以上に需要が停滞しており、厳しい冷え込みや景気回復などが見込まれない限り、改善が見込み難い状況にある、と言えるでしょう。
このような弱い需給状況にもかかわらず、米国エネルギー市場では大口投機家の買い越し数が膨らみ原油の場合は76,393枚、暖房油の場合は31,849枚となっています。共に記録的な高水準にあるわけではありません。しかしながら、12月にかけての中期に渡る上昇場面の起点となった7月21日時点の買い越し数が原油は2,218枚、暖房油は22,734枚だったことを振り返ると、石油価格を押し上げたのは投機資金が流入したことにあることが分かります。
しかしながら、需給を伴わない価格の上昇は足場がもろいという実情、そしてドバイ・ショックにより強まった需給停滞に対する懸念を見ると、投機資金が市場にさらに流入する可能性は低いように思われます。景気回復見通しが強まる、またはそれを連想させる株式市場の堅調が無い限り、過剰な在庫状況は、引き続き石油市場の重石になるのではないでしょうか。
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