1,200ドル到達でも基調の崩れが予想し難い金市場
現地1日のNY金市場(通常取引)では、金価格がとうとう1,200ドルというこれまでの高値目標を突破し、前日より17.9ドル高の1200.2ドルで取引を終えました。この日、金価格が上昇したのは、先物市場だけではありません。現物市場でも、1,200ドルを突破して1201.4ドルを付けるなど、金現物価格としての史上最高値を更新しています。
このように金価格が上昇している原因として考えられているのが、先週末に発生したドバイ・ショックです。中東の物流のハブとしての地位を固め、オイルマネーが集中している同国は、ブルジ・ドバイを初め様々な施設が建設されるなど、経済的に急成長を見せていました。
このようなこれまでの急成長、そして、政府系で投資先としては安全と判断されていたにもかかわらず、投資持ち株会社ドバイ・ワールド」、そして、その不動産子会社「ナヒール」の債務返済が一時凍結されたことで、同国の主要企業に対する不信感が一気に高まったのです。
特に今回のショックで警戒されているのが、ドバイには欧州からの資本が集中して投下されているため、このドバイ・ショックが、ようやく経済が緩やかな持ち直しを見せている欧州の企業に再び悪影響を与えるのではないか、という点です。このようなドバイ→欧州、といったショックの波及に対する懸念が、1日の市場において金価格を押し上げる役割を果たしたと言えるでしょう。
なお、このような金融・経済に対する懸念から金価格が上昇する場合、投資用としての金需要が増加するのが一般的ですが、ドバイに投資を行っていた欧州では今年に入ってから、投資用の金需要が大幅に増加しています。
WGCの報告によれば、今年第1~第3四半期間の欧州の投資用金需要は253.3トン。これは前年同時期の90.4トンの約2.6倍に当たります。このように投資用として金需要が膨らんだのは、リーマン・ショックとこれに伴う金融危機の影響で、安全な投資先としての金の地位が著しく高まったことにあります。それだけに、今回のドバイ・ショックにより、今後も欧州では安全な投資先としての金需要が根強く見られることになる可能性が高まっている、と思われるのです。
また、このドバイ・ショックに続き、大手産金業者であるバーリック・ゴールド社が、これまでの予定である2010年9月をかなり前倒ししたうえで、今年9月に発表した金のヘッジ契約の全解消を完了した、と発表したことも注目されます。
今回、バーリック・ゴールド社は、現物の受け渡しを伴う固定価格契約分の93.30トン、そして受け渡しを行わない変動価格契約202.15トンのほとんどを解消しました。また、このヘッジ売り解消時の価格はオンス当たり平均1,070ドルと伝えられています。
以前にも取り上げたことがありますが、産金業者は将来に渡って安定した価格で金を売却するため、これから生産する量に相当する分を予め先物市場で売るという、価格防衛手段をとります。
また、産金業者も利益を追求する業者であることを考慮すれば、将来売却する価格を予め設定するだけでなく、買い戻した時には利益が生じるよう、高値をできるだけ探ってヘッジを行うと考えられます。
そのため、今回のバーリック・ゴールド社による売りヘッジの全解消は、現在は産金業者が予想していた以上の水準まで価格が上昇するほど金の需要が膨らんでいることが窺われる点、そして産金業者にとって1,070ドルという価格は売りヘッジを行うには低い水準、と同社は9月時点で既に考えていたと思われる点、から注目されるのです。
CFTC報告によれば、11月24日時点の大口投機家の買い越し数は、前週の23万5,697枚から過去最大となる26万2,331枚に膨らんでいます。この動きから現在の金価格の上昇の背景には投機資金の流入があることが分かります。その一方では市場の人気を示す指標とされる取組は減少するなど、金市場から資金が流出する動きも見られ始めました。つまり、1,200ドルという価格水準に達したことで上値に対する警戒感が強まり、投機資金が流出する可能性も高まっていると言えるでしょう。
しかしながら、ドバイ・ショックは落ち着きを取り戻して振り返ってみると、金の安全な投資先としての役割に対する意識を更に強める結果をもたらした、と思われます。さらに、産金業者が金市場の強気を見込んだ動きを見せています。その一方で、膨らんだ投機資金が流出すれば金価格が急反落する下振れリスクも高まっています。しかしながら、安全な投資先としての金の需要が一段と強まりを見せているだけに、史上最高値に達しているとはいえ、金市場の構造的な地合いの軟化を見込むのは、ますます困難になっていると思われます。
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